yn
2023-06-16 23:54:21
13001文字
Public 拳コユ
 

【よよ恋2展示作品】day by days (わやわや学パロ拳コユ)

今年の1月に頒布し完売済の再録集に収録していたわやわや学パロ拳コユのweb再録に書き下ろし追加したものです。自分でも設定はよくわかってないので、一ページ目のなんとなくの設定をお読みいただき、あとはフィーリングでお願いします。※公式で出た学パロとは全く別物です一切踏襲してません※気が向くと増える



2.


 花壇の植え替え作業中、覚悟を決めて聞いてみた。
「コユキちゃんって好きな人とかいるの?」
〝え〟
 隣でスコップを持ってきょとんとしてるコユキちゃんは、赤い芋ジャージでもわかるくらいおっぱいがでかくて、かわいくて、おっぱいがそりゃもうでっかくて、いい子だ。垢ぬけた感じじゃないけど小動物みたいな黒目がちの目も手伝って、男子の間では結構人気上位の女の子。
 俺はもうちょいハキハキとした感じの子が好みだけど、別クラスの友達はコユキちゃん大本命。たまたまくじ引きで同じ委員会になった俺に、好きな子いるか聞いてきて! と頼み込まれたので、昼飯三日間おごりで手を打ってやった。
 めんどくさいことこの上ない花壇の植え替え作業、聞くなら今だと口火を切ったのだが。
「あ、ごめん変な意味じゃなく! 世間話のつもりです!」
 念のためにと補足すると、コユキちゃんは口を半開きにして暫く呆けた後、ほんのちょっとだけほっぺを赤くしてうつむいた。あ、こりゃカワイイな。モテるわ。
「その、言いたくなかったら全然いいんだけど」
……いえ、前からずっと悩んでたので、聞いてもらえるなら嬉しいです〟
「えっそうなん⁉」
 思わず持っていた苗を落としてしまった。慌てて拾い上げると、葉っぱが一枚折れてしまっていた。バレないようにそっと千切って後ろに放る。コユキちゃんは土を弄っていて気が付いていないようだ。
 目印の位置にスコップで穴を掘りながら、なるべく平静を装って聞く。
「お、俺でよければ……ってマナの方がいいかもだけど、でもなんか力になれるかもしれないし」
 恋愛といえばマナだが、あいつは最近三年のでかい先輩に懐いてべったりだ。今日も確か、先輩とスイパラ行ってくる~って言ってた気がする。
 まあ俺もお付き合いの経験がないわけじゃない。今はたまたまいないだけだし。ちょっとくらいは助言ができるかも。
 俺の本命でも何でもないのに、なんか妙にドキドキした。コユキちゃんは白いパンジーの苗を持った手をむにむに動かしながら、ジャージの立てた襟に顎を埋めて呟いた。
〝その……わたし…………ぃが……
「え?」
 ただでさえ小さい声は呟きとなるとさらに聞き取りにくい。耳を寄せて、ごめんもう一回、と頼む。コユキちゃんはほっぺたを真っ赤にして、今度は俺にも聞き取れる声で言った。

〝その、わたし、現国の拳先生のこと、すき、で……
……えっ」

 拳先生。拳先生って。あの?
 拳先生と言えば、思い浮かぶのはただ一人。
 スキンヘッドにでっかいガタイとヤクザみたいな面構え。柔道部の副顧問で、現国担当、あだ名はケンちゃん。
 ——そんでもって実は俺の、兄貴でもある。

〝へ、変ですよね……
……いや、まあ……恋愛は、自由だし…………? へ、変ではない、と思う」
〝本当ですか⁉〟
 ばっ、とコユキちゃんの顔が上がった。真ん中で綺麗に分かれた前髪がピンで止められてるから、大きな丸い目が潤みをたたえて真っすぐに俺を貫いている。遮るものなんて何もない。
 なんだか気圧され、ちょっとだけ身体を引いた。しかしコユキちゃんはずい、とこちらに詰め寄ってくる。何、この子こんなにぐいぐい行けるタイプ⁉
〝見込みあると思いますか⁉〟
「あ、あの、えっと」
 フンフン、鼻息荒く両目を輝かせるコユキちゃんから目を背ける。
 見込みある、って言ってやりたいけど。ぶっちゃけ可能性はゼロより低い。
 アイツは確かに黒髪で若くてかわいいボインの女がタイプだって言ってたけど、それに生徒は絶対に含まれない。いつもふざけてへらへらしているけど、公私のラインはきっちり過ぎるほど引いている。
 しかもアイツ今年で四十歳。俺等は十七歳。先生と生徒じゃなくたって、完全に犯罪だ。
 俺は兄貴が淫行で捕まるところなんて見たくないし、ミカ兄はもっとだろう。

 ——って、正直に全部言えたら、良いんだけど。

……が、がんばり、しだい、じゃない?」
 栗色の瞳から溢れる輝きに圧倒されて、心にもないことを言ってしまった。コユキちゃんはぱあ、と破顔して、がんばります! って拳を握る。
 俺は心の中で友人に土下座しながら、乾いた笑いを返すことしかできなかった。