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あけみ
2018-10-06 00:40:26
24544文字
Public
MCU(小説)
【MCU】君がいない世界で僕はあの日の答えを探し続ける【バナトニ】
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ストレンジが拠点としているニューヨークのサンクタムに集結したバナーとトニー、ストレンジ、ウォンはかつてない地球の危機に直面し土壇場にチームを組むことになる。だが、バナーはサノスの危険性と最悪な状況下にあることの説明をし終えると久々に地球に戻れた安心感とトニーとの再会にホッと息をついた。
出会い頭に感極まって抱きしめた時、鼻を撫でる匂いに心底安心したのだ。いつもの香水だ、そう感じ入った瞬間と同時にトニーの体を強く抱きしめる。
二年間ハルクだったバナーはその間、意識はなくウルトロンのこともソコヴィアでの戦闘も昨日のことのように思い出せるのに、本当に長い間トニーと離れていた感覚すらある。息を吸い、セントラルパークの緑葉の匂いに浸る。地球に戻れたと確信し、知っている匂いにホッと身体が緩んだ。
――
サノスが来る。という最悪な状況なのは変わりないのに、遠く宇宙にいた頃に比べれば自身が驚くほど落ち着いているのが分かる。トニーの方は戸惑い眉をひそめるも、肩を撫でる手は優しかった。
ストレンジの屋敷へと光の輪が空間を開け放つ。ストレンジは入口を繋げ、ついて来るようにと有無を言わせず促した。バナーとトニーは迎え入れられ足を踏み入れた途端、互いに顔を見合わせる。屋敷の中がニューヨークを拠点にしているとは思えない空間だったからだ。外観から想像する敷地内の面積が合致しないのも魔術だろうか。古めかしい内部は高価そうなアンティーク雑貨や不可思議な魔術品が飾られている。
この屋敷に落とされたバナーは屋根に大きな穴を開けたが、壊した箇所も全て修復されていた。見上げた天上にバナーは息を吐く。
「傲慢な態度は変わらないのだな」
「君の態度の方が威圧的だぞ」
聞こえてきた言い争いに思考が引き戻される。
自然と目で追うのはトニーの姿だ。ストレンジの言い分に突っかかるような口調で睨み上げる横顔には見覚えがある。相変わらず初対面の相手には虚勢を張るんだなとか、憎まれ口を叩くその瞳の奥で何を考えているのだろうとか、また一人で傷ついていないだろうか。トニーの目元には、くっきりと隈があるのもバナーは見逃さなかった。夜通しスーツの改良をしていたあの頃も今と同じ顔をしていた。
そうして、ジッと彼の瞳を見つめるうちに浮かんでくることといえば、やっぱり睫毛長いなぁとか、瞳の奥は星の瞬きのようだとか。思い出したように今度は足元を見やれば、今日も底上げ靴を履いているなぁ。とか、バナーの個人的な趣向は止められなかった。
視線はトニーに釘付けだ。いや、正確にはトニーの身体のラインを腰からヒップにかけて、綺麗なS字を描いた曲線を上から撫でるように視線を向けていた。
これは久しぶりに会った友人を見つめる視線ではない。冷静な判断を下す自身の警告にハッとし慌てて顔を背ける。
今、どんな感情でトニーを見つめていたのかを自覚してバナーは密かに顔を赤らませた。
二年ぶり会ったトニーは少し痩せていて、胸には再びリアクターが埋め込まれていた。最初は再会で胸を高鳴らせ思わず抱きしめてしまったので気付かなかったが、ナノテクだと言ったそのリアクターは瞬時にアーマーを装着できるという。粒子が身体を這うように覆うと聞いた。
(だから、体のラインがはっきり出るアンダースーツを着ているのか)
妙なところで納得して、また視線を這わせるバナーはトニーと目が合った。「あ、」と思ったが遅く、トニーが少し困ったように笑うのが見えた。
「あー
……
ブルース? いくら私でもそんなふうに見られたら気まずい」
「あ! いや! そんな、つもりで見ていたわけじゃ」
典型的な言い訳を放ったバナーはますます慌てて誤魔化せば誤魔化すほど言い逃れができなくなる。動揺を隠しきれないバナーにトニーの言葉が再び鼓動を高鳴らせる。
「後でいくらでも弄らせてやるから」
「え!?」
君の身体を!?
と、口走らなくて良かったと心底思った。
「ナノテク。興味あるだろ?」
「え? あ! ナノテク!? うん、そうそう、もちろん!」
乾いた笑いを上げると背後に佇んでいたストレンジとウォンの視線が刺さる。今のバナーの態度に何かを察したようだ。これ以上、トニーに向ける感情が表面化するのを阻止したいが、口を開けば何を口走るか分からない。口を閉ざそうとバナーが視線を外すが、トニーは続けてバナーの動揺を誘う。
「出会った当初もリアクターに興味津々だったからな。以前も散々、私のことを弄りまわしただろ」
語弊があるトニーの言い方にバナーが慌てた。
「弄りまわしてない!」
「リアクターの縁を指で撫でまわした」
「あー、もう! トニー、少し黙ってくれ」
頭を抱える。
「君たちはどういう関係だ?」
咳払いするストレンジはバナーとトニーを交互に見つめた。
改めて訊ねられると「友人」とだけ答えるにはあまりにも多くのことを体験している。そういえば、他人から見た僕たちはどう映るのだろう。バナーはトニーとの関係を表す単語を見つけられない。「親友?」「バディ?」「チーム?」首を振りどちらも正しくはないと眉根を寄せる。友人よりももっと距離が近い関係だ。「恋人とか?」脳裏に浮かんでから人知れず照れてから返答しないバナーに対してトニーが口を開く。
「友人だ」
簡単に言ってのけるそれにバナーは視線を伏せた。いや、それはそうだろう。順当に考えれば「友人」以外言い表す言葉はないはずなのに、なぜ「恋人」まで飛躍させたのか。ひとり思考が空回りしていたことが急に恥ずかしくなり、わけもなく顔が熱くなるのを止められない。宇宙で少し冒険をしてまだ浮ついているらしい。「僕はトニー・スタークだ」と言っていた頃の湧き出ていた自信はなんだったのか。今、思い返すと途方もない羞恥心に揺さぶられる。きちんと地に足が付いていない感覚がした。トニーの服を着て高揚とした情を持て余していたようだ。
「バナー? どうした?」
顔が赤いぞ。と指摘するトニーは顔を覗きこむ。間近に迫ると否応にも意識してしまい、バナーはますます顔を向けられない。
「ああ、なるほど。充分理解した」
ストレンジは白々しくそう言って「本題だが、」と最悪の状況を懸念する話へと移しバナーとトニーの戯れ合いを終わらせた。
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