クリスマスプレゼントを渡しに回って、気がついたら夜になっていた。
廊下もライトアップして、普段の照明とは違って綺麗だった。
食堂では多くの職員さんやサーヴァントたちが談笑してはご馳走を口にしていた。そんな私はマシュからもらったのど飴を舐めて、ガラガラする喉を潤していた。体調は昼間と比べれば落ち着いてきたものの、意識は少し朦朧としている。熱が悪化しているのだろう。
(この日を超えるまでの辛抱だ。ダ・ヴィンチちゃんもマシュも休んでいいと許可はもらっている)
しばらくはレイシフトの予定もないので、ちょっとした冬休みみたいなものが訪れる。その時に体調を整えれば問題ない。
私は食堂で談笑しているギルガメッシュ王に声をかけた。
「王様」
「雑種
――」
「1時間後に、あの場所に来てもらえますか? その時にプレゼントを渡します」
「おい、雑種!」
王様が何かを言いかけたようだが、私は踵を返して食堂を出た。
アルトリアサンタも予定通りに事を運んでいる。彼女の方もプレゼントを配り終えたようだ。
あとは、1時間後に二人を合わせれば、それでいい。
約束の場所は外だ。ポケットからマシュにもらったカイロを張る。徐々に暖かくなっていく。
「
……よし」
最高のプレゼントを、貴方に。
* * * * * *
1時間後。
私は約束の場所から少し離れた場所で待機していた。約束の場所
――それは中庭だ。
彼を召還して間もない頃、今ほど仲良くなかった頃だった。いつも彼から叱られつつ魔術の勉強やら教えてもらったり、何気ない会話をしたりした、すべての始まりがこの場所だった。
(あの頃は、ただ王様が怖くてただひたすら緊張ばっかりしてたっけ)
怒られてばっかりだったけど、いつの間にか彼と一緒にいるのが楽しくなって、徐々に彼が気になって
――好きになったのも、この場所だった。
その関係を、私が壊そうとしている。思い出を、これまで築いてきた絆を自ら壊そうとしている。
今更ながら、怖くなってきた。
白い息を吐く。
腕時計を見る。もうすぐ、約束の時間だ。
「あっ」
約束の場所に、ギルガメッシュ王が歩いてきた。彼らしく時間ジャストだ。
思わず行きたくなるが、ぐっと押し黙った。
私を探しているのか、周りを見渡している。私は見つからないように壁に隠れる。
しばらくすると、足音が聞こえてきた。
彼も、遠くから離れた私も、足音の主を見る。
アルトリアオルタ
――いや、アルトリアサンタがいた。
「待たせたな、ギルガメッシュ君」
「黒いサンタではないか。いつぞやの約束を果たしに来たか!」
「そうだな」
アルトリアサンタとギルガメッシュ王が楽しく話している。約束、とやらは分からないがあの様子だと私がこれを計画したことを彼には気づかなかったようだ。
こっそり、壁から覗き込む。
二人が、笑顔で話している。その姿に胸が痛む。そして、泣きたくなる。
泣きたくなる衝動を、小さく咳き込むことで落ち着かせた。
(おかしいな、マシュからもらったのど飴舐めたのにな、ぶり返してきた?)
このまま二人を見守りたい気持ちもあったが、こんな状態ではいつか咳で気づかれてしまう。それだけは避けたい。
普段話をしない二人がこうやって対面したのだ、それが私からのギルガメッシュ王へのプレゼントだ。
彼の顔をもう一度見る。
とても楽しそうだ。
私は、その彼の顔を胸に刻み込み、その場を離れた。
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