知っているとは思うが、一応アルテラサンタと共に事態を収束したこと、あと見舞いがてらだ。
部屋に着いて一言いうと、ドアの向こうから入れ、と彼の声を聞いた。久々の愛しい声に胸が暖かくなってくる。
中に入ると彼はベッドに入って、読書をしていたようだった。一応、養生しているようだ。
「王様、久しぶりです」
「フン。来るのが遅いわ、戯けめ」
いつもの喝に私は苦笑する。ここ数日、彼を見ていなかったし、この喝も久々で普段なら頭が痛くなるが、今では不思議と嫌じゃなかった。
あれから意識は取り戻した。しかし、体が本調子ではないようで、部屋で休息をしていたようだ。私も見舞いに訪れたかったのだが、アルテラサンタとの準備やら他の手伝いやらで中々顔を出せなかったのだ。
茶を入れよ、と言われたので、逆じゃないかと思いつつお茶を二人分入れて一服入れる。
しばらく無言でいたが、ギルガメッシュ王が沈黙を破った。
「どうやら、今回も救ったようだな雑種」
「あ、そうです。もう知ってると思いますがあの後無事、問題解決しました。あの時、レイシフトしてくれなかったらあのままカルデア壊滅になってたと思います。ありがとうございました」
「フン、いい働きであった。ま、あの程度できなければ我はこの地を去っていただろうがな」
「そ、それは困ります!」
慌てて座っていた椅子から立ち上がった。気がついたら椅子が後ろに倒れてしまった。それにギルガメッシュ王は目を細めた。
「あっ、ごめんなさい」
「
……まぁ、よい。冥界でのことを話せ。暇つぶしに聞いてやろう」
まるでこっちが話したくて仕方ないと無理やり設定を押し付けるような感じで私は少し笑う。
この賢王、ものすごく素直じゃない。
つまり、単純に知りたいのだ。バビロニアのときもそうだった。多分、彼なりの王としてのプライドが邪魔をしているんだろう。
「えーっと、じゃあ
――」
私はギルガメッシュ王に冥界での出来事を順を追って話した。
全て話し終わると、気がつけば時間は夜になっていた。
ギルガメッシュ王も満足したのか、満足そうな笑みを浮かべている。
(密かに私が来て冥界での出来事をずっと聞きたくて仕方なかったのかな)
多分、話を聞くくらいならばダ・ヴィンチちゃんやマシュたちから事情を聞くことはできたはず。しかし、彼は私からの話を聞くことを決めた。それがちょっとだけ、嬉しい。いや、すごく嬉しい。彼の前ではそんなことは言えないけど。
「それじゃ、そろそろ私は出ますね。また様子を見に来ます」
「ああ
――雑種」
「そうだ、クリスマスのプレゼント、何が欲しいですか?」
そうそう、目的を忘れるところだった。一応欲しい物を聞いておきたい。彼にとっていらないものを渡したくない。
(多分、アルトリアサンタからのプレゼントがほしいんだろうなぁ)
なんて可愛くないことを思ってしまう。
ギルガメッシュ王は腕を組んで考える。そしてジッと紅い目が私を見る。
そして、彼の口が開いた。
「
――――」
それを聞いた私はまた、心が傷んだ。
「
……分かった。楽しみに待っててね」
「ああ。期待はせぬが、楽しみに待ってやろう。せいぜい我の期待を裏切るなよ? 雑種」
その言葉を聞いたのが最後に、私は廊下に出てドアを閉じた。
私は無我夢中でマイルームへ向かい、中に入るとベッドに寝転んだ。
彼を喜ばせたい。でも、そのためには私では喜ばすことはできない。とても悲しいけど、それで彼が喜ぶのであれば。
「
……そうだ。耐えればいいんだ。私が耐えれば」
ぎゅっと手を握り、胸元に手を添えた。まるで溢れてくる感情が出てくるなと手で制すように。
みんなが笑顔なら、みんなが幸せなら、それでいい。
私は目を瞑り、心を落ち着かせる。でも、私の心はずっと、痛くて苦しいままだった。
そして、クリスマス当日を迎えた。
「Happy Merry Christmas」前編 END
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