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みたむら
2023-12-06 17:50:28
17370文字
Public
FGO(鯖ぐだ)
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Happy Merry Christmas
FGO:術ギルぐだ小話。
2017年クリスマスイベント後の術ギルぐだ子。シリアス→ハッピーエンド。
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クリスマス当日。
朝、目を覚ましたのはマシュが起こしに来てくれたからだった。
「おはようございます、先輩」
「お、はよう
……
ごめん、起こさせちゃって」
「いいえ! それより、この大量の袋は?」
マシュはベッドの隅に置いてある大量の袋
――
みんなへのクリスマスプレゼントを指さして尋ねる。
しまった。今日まで自力で起きれたら終わりなのに、最後の最後に甘く見ていた。マシュに見られてしまったら正直に話すしかない。
「うーん、ばれちゃったら仕方ないよね
……
えっと、マシュの、マシュの
……
あった。はい、これ」
「これは?」
「いつも助けてもらってばっかりだし、友達というか先輩としてというか、私からのクリスマスプレゼントです」
質素なものしかないけどよかったらもらって、と照れ隠ししながら言うと、マシュはぎゅっとプレゼントを抱きしめて「ありがとうございます、先輩!」と喜んでくれた。
「あ、でも
……
」
「あ、心配しないで。サンタとしてのプレゼントもあるから。それは藤丸立香からのプレゼントとしてもらって」
「い、いいんですか?」
「うん、みんなの分も用意してるから」
そう言うと、マシュはごそごそとパーカーのポケットを漁っている。
私の手に出されたのは、カイロだった。
「今、用意できるのはこれしかありませんが、サンタとしていろんなところに行くと思います。最近の先輩は忙しそうなので、少しでも温かい格好でサンタさんとして回っていただければ、と。あっ、これも!」
そう言って今度はのど飴だ。
最近ちょっと咳が出てきているなと思ったので、とたまたま今日渡そうと持参していたらしい。とても気の利く後輩である。
私は嬉しくなり、カイロとのど飴を受け取った。
「ありがとう。サンタとして頑張ってくるね」
「はい。無理はしないで頑張ってくださいね!」
こうして、カルデアのクリスマスがはじまったのだった。
「メリークリスマス!」
「フォッフォッフォ。サンタクロースがやってきたぞ」
「わぁ! 今回のサンタさんはアルテラさんなんだ! プレゼントちょうだい!」
「うむ。受け取るがいい」
朝食を済ませると、私は主役であるアルテラサンタと共にサンタクロースの格好をしてカルデア内を歩いていた。
たまたま廊下で出会ったのはいつも一緒にいるジャック・ザ・リッパーやナーサリー・ライムなど子どもサーヴァントたちだ。子どもたちはこの日を待っていたのか、目をきらきら輝かせてこちらを見ている。
プレゼントを渡すと、彼女たちは大変喜んでくれた。二人で知恵を振り絞って考えたものがよかったようだ。
冥界でのクリスマスでは、アルテラサンタもとある礼装だったり彼女たちの希望通りのものが渡せなかった。この間、サンタをやっていいのかとアルテラが言っていたのはそういうことだった。しかし、喜ぶ顔を見てアルテラサンタも自分のことのように笑っている。
(セイバーのアルテラも笑ってくれればいいのに)
本来の彼女はセイバークラスのアルテラだ。常に真面目で、無表情で、時々私でも何を考えているかわからないときがあるほどだ。そんな彼女でも実は現代モノには大変興味があったり、かわいいものには少し反応してしまったり、という女性らしいところもあるサーヴァントだ。もともと美人なのだからセイバークラスのときも笑ったらいいのに、と心の中にしまっておいた。
「この調子でたくさんの人にプレゼントを渡していこう」
「了解!」
アルテラサンタの言葉に私はこくりと頷き、ジャックちゃんたちに手を振って廊下を歩いた。
職員さんたちにも顔を合わし、プレゼントを渡すと男性女性問わず喜んでくれた。大人の人とはいえ、もらえるものは嬉しいものだ。大人の人たちはどんなものが欲しいのだろうと悩んだがよかった。
「かわいいサンタさん、来年もよろしくね」
「無理しないで頑張れよー。これ大事にするからな!」
「フォッフォッフォ。お気遣い有難いのじゃ」
「頑張ります」
そう言って彼らに手を振って次の”子どもたち”を捜そうとしていたところを、ある英霊が現界した。
その英霊はまるで最初からそこにいたかのように、壁に背を預け、腕組みをして私の前に現れた。
キャスタークラスのギルガメッシュだ。
彼はふてくされたように、険しい顔を見せていた。
「雑種」
「お、王様
……
」
まさかギルガメッシュ王自ら声をかけてくるとは思わなかった。意外だという思いと同時に、嬉しかった。しかし、それも半分。もう半分は胸がまた痛んだ。
「ずいぶんとサンタクロースとやらの役割を果たしているようだな?」
「う、うん」
久しぶりの会話なのに、喉がつっかえたように相槌を打つことで精一杯だった。
あれから、私は彼を避けていた。クリスマスの準備で忙しい、アルテラサンタとの準備で忙しい、鍛錬で忙しい、素材集めで忙しい、と。これまでも何度かギルガメッシュ王から声をかけてくれていたけれど、最小限の会話だけで済ましていた。だからなのかもしれない、彼の顔が怖くて見られないのは。
「我のプレゼントも、用意しているんだろうな?」
「
……
うん。夜になったら渡すよ」
「
……
」
彼の鋭い紅い目に見つめられ、居たたまれなくなる。まるで私の心の中を覗いているように見えて未だに慣れない。実際問題、彼には千里眼がある。未来を見据えることができる。だから、これから何が起こるのか、そういった事象を彼の目には手にとるように分かるのだ。
だからこそ、”彼へのプレゼント”を悟られないように避けていた。
(約束は夜。だから何としてでも今はごまかさないと)
「マスター、そろそろ行く
――
」
「じゃ、じゃあアルテラサンタが待ってるからそろそろ行くね。いいクリスマスを」
アルテラサンタの声に、私は助け舟だと思いこの場を逃げるようにアルテラサンタと廊下を歩いていく。
アルテラサンタは私に引っ張られつつ、未だに立ち止まっているであろうギルガメッシュ王を見ていた。
「いいのか? まだ時間ある。何だったら私一人でプレゼントを歩き回ってもいいのだぞ?」
「ううん、ここまで一緒にやってきたんだもの。最後までアルテラサンタとサンタクロースやりたいな」
「そ、そう言われると
……
何も言えなくなる」
アルテラサンタは顔を赤くして今度こそ前を向いた。
彼女の気遣いに甘いたくなった。けれど、自制した。彼にとって最高のクリスマスを過ごしてほしい。そのためなら、私は耐えればいいのだから。
げほっげほっ。
「マスター!」
私は突然咳き込み、アルテラサンタが私を支えてくれる。彼女が支えてくれたおかげで、その場で倒れることはなかった。
アルテラサンタが私の額に手を添えた。すると、目を見開いた。
「マスター! やはり熱がっ
……
!」
「大丈夫だから。今日乗り越えたら、ゆっくり休ませてもらうから」
「それならもう部屋で休んでくれ」
「大丈夫大丈夫。でも、ちょっとだけ休憩しようかな」
「
……
ああ」
そういうと私たちは食堂で小休憩をとることにした。
食堂で一服とろうとすると、ご馳走を作っている途中のエミヤやブーディカなど料理当番たちが顔を見せる。
プレゼントを渡しつつ、お茶をお願いした。
「マスター、君は無茶をしすぎだ」
エミヤが私のお茶を目の前に差し出して、呆れながら言った。
「すまない、私が一緒にいながら」
「いや、君は悪くない。マスター、無理は駄目だとこの間言ったばかりだと思うが?」
エミヤの厳しい視線に私はぐっと何も言えなくなった。
マシュからもらったカイロとのど飴があれば、今日くらい乗り切れると思ったのだが、体は限界を訴えていたようだ。
「
……
また、賢王のことか?」
エミヤにはまた心配をかけてしまったようで、穴があれば穴に潜りたい気持ちになった。
本当はギルガメッシュ王へのプレゼント計画を、隠すつもりでいたのだが何を思ったのかアルトリアオルタが言ってしまったらしい。誰にも他言しないことを分かって言ったのかも知れないが。
それからというもの、私が一人でいる時を狙って体調だったり気にかけてくれていた。
「
……
君たちは本当に」
何度目か分からないくらいのため息を彼がついた。申し訳ない。この現状に呆れて何もいえないんだろう。分かっている、私が勝手に起こしたことだ。でもきっかけは彼の言葉だ。
「君は、自分を追い込みすぎだ。賢王の言葉など、いつもの言葉遊びだ。普段一緒にいるから分かっているだろうに」
どうして今回の言葉を鵜呑みしたんだ、そう問いかけたかったのだろう。
そう、彼はアルトリアを理想の女性像としている。だからたまに彼女のことを口にすることもある。それでも私のそばにいることの方が多い。だから自信を持っていいと彼は言いたいのだろう。
だが、何度もほかの女性のことばかり言っていると、私はそばにいない方がいいんじゃないかと思ってしまうものだ。私なんかより、アルトリアと一緒にいたほうが楽しいんじゃないか。私と一緒にいるのは仕方なく、ではないだろうか。そんなことをふとしたときに負の感情が押し寄せてくるのだ。何度もそんなことはない、と否定するけれど、それも限界が来たのかもしれない。
シュメル熱で倒れる寸前で言っていた言葉が、最後の鍵を開けてしまったのかもしれない。
「そうだね。何をやってるんだろうって思う。馬鹿だって、我ながら呆れてる」
でもやってしまったら後には戻れない。誰だって素直になりたいのに素直になれなくて本音とは逆の行動をせざるを得なくなったことはあると思う。
「
……
君は、意地悪な性格をしているな」
好きな女から、別の女と過ごす権利をプレゼントなんて、誰がどう見ても男はこれ以上に辛いことくらい分かるだろうに。好きな女からのプレゼントを無碍にはできない。しかし、好きな女と過ごせないのはもっと辛い。
今回ばかりは、皮肉なものだが賢王に同情するよ。
そうエミヤから聞くと、私は何ともいえない笑みを零して最後のお茶を飲み干した。
(でも、そうだろうか。私は、ただのマスターで嫌々一緒にいるんじゃないだろうか)
そう思ったけど、これ以上は口には出さなかった。
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