みたむら
2023-12-06 17:50:28
17370文字
Public FGO(鯖ぐだ)
 

Happy Merry Christmas

FGO:術ギルぐだ小話。
2017年クリスマスイベント後の術ギルぐだ子。シリアス→ハッピーエンド。



(今日もたくさん働いたなぁ)

 カルデアの危機一髪だったが、今回もなんとかなってよかった。
 ずっと寒い空間にいたからか、普段はぬるいと感じるお湯も、熱く感じるようになっていた。
 汗を流し、体がぽかぽかになったところで風呂を後にすると、マシュがマイルームの椅子に腰を落として待ってくれていた。

「ごめんね、待たせてしまって」
「いえ! もういいのですか?」
「うん、十分温まった」
「冥界はどんな世界だったんですか?」
「冥界は……

 マシュがずっと聞きたがってたらしく、冥界での出来事を順を追って話した。
 みんなが倒れた原因がシュメル熱の高熱によるもの、最後まで意識を保っていたキャスタークラスのギルガメッシュの指示の下、冥界にレイシフトして、そこで冥界の女主人・エレシュキガルと出会ったこと、その他もろもろ。
 あの後、エレシュキガルは元気にしているだろうか。あちらでは確か1年前――2016年の冬だと言っていた。そして、いつかまた会えたら今度は協力したいと彼女が言っていた。

……エレシュキガルさんも来てくれるといいですね、先輩」
「うん」

 いつかきっとまた会えると思う。何となく、そんな気がするのだ。その時は、カルデアのことをたくさん教えよう。できたら私のサーヴァントとして協力してくれないか、改めてお願いしてみよう。多分、一部のサーヴァントだけ拒否されるだろうが、殆どの人は彼女の参戦を喜んでくれるだろう。
 あの時、キャスターのギルガメッシュがいてくれなかったら、原因も冥界に行くこともできず誰一人助けることができなかっただろう。

――はっ、マシュ! ギルガメッシュ王は?!」

 そういえば、私をレイシフトした後ギルガメッシュ王はどうなったのだろう。思わず血の気が引いた。

「ギルガメッシュ王も無事です。今は安静して部屋で休んでいますよ」
「はぁ……よかった」

 思わず安堵のため息をついた。あの時はみんなの危機だったから、彼の身体の心配まで頭が回らなかった。

「ちょっと行ってくる」
「え! ちょ、先輩?!」

 私は急いでギルガメッシュ王の部屋へと走って行った。彼の顔を見たい。見て安堵したい。
 部屋の前に着いた。少しだけ息が荒い。息が落ち着いてきてから、ドアの向こうにいるだろうギルガメッシュ王に声をかけた。しかし、彼の返事は聞こえない。きっと寝ているのだろう。時間を置いてから来ようか迷ったが、彼に申し訳ないと思いつつ中に入った。
 シュ、という機械音を聞きつつ中に入るとベッドに横になっているギルガメッシュ王がいた。マシュの言うとおり、安静して眠っているようだ。
 シュメル熱にかかり、そして普段からの過労でドッと疲れが来てしまったのだろうか、何度か起こしてみたが目を覚まさない。

(でも、無事で本当によかった)

 話しかけることはできなかったけど、安心した寝顔を見れただけでもよかった。それに、起きたらあれやこれやと怒られるんだろうなと苦笑する。

「ゆっくり、休んでください」

 そう言ってベッド脇から離れると、ふいに手を取られた。振り返ると眠っていただろうギルガメッシュ王が私の手を掴んでいた。
 しかし、無意識なのか寝ぼけているのか、目を開けない。

……て」
「?」

 何かを呟いている。少し近づいて耳をすませる。すると、聞こえてきた言葉に私は驚きを隠せなかった。

『待て、黒いサンタ……まだ、楽しみはこれからであろう――

 どうやら、私を黒いサンタ・・・・・と間違えているようだ。
 寝ぼけていることは分かっている。彼は夢の世界にいる。それでも、少しだけ胸が傷んだ。
 そういえばあの時、黒いサンタ――アルトリアサンタからプレゼントを貰うのを楽しみにしていたのを思い出す。倒れたときも、彼女からプレゼントを貰うのをワクワクしていた。

(どんなときもギルガメッシュ王はアルトリアのことを)

 アーチャーのギルガメッシュ王もキャスターのギルガメッシュ王も、アルトリアは彼にとって理想の女性像らしい。キャスターのギルガメッシュもアーチャーの時と比べれば落ち着いてきてはいるものの、好みは変わらない。そして、これまでもアルトリアのことを気にかけては当の彼女は彼を邪険にしていた。仲がいいのか悪いのかよくわからないが、おそらく顔見知りする程度の仲がいいんだろう。
 そんなアルトリアに対し、私相手だといつも怒っているばかりのような気がする。まぁ、私が未だに魔術師として、マスターとして未熟だということは私自身も知っている。だから仕方なく魔術を教えてくれたり、見てくれている。
 彼は基本的に人間には興味はない。だが私やカルデアの職員さんたち人間になんだかんだ助けている。それだけでもありがたく思うべきなんだろうが、それでもアルトリアとの接し方が違うのがちょっと悲しい。
 嫉妬、なんだろうか。おそらく、アルトリアに嫉妬しているんだろう。でも、アルトリアのことは好きだ。真面目で、何かがあったときに心配してくれるサーヴァントだ。マスターになってから間もない頃に来てくれて、今では前線で活躍している。

(それでも、やっぱり好きなんだろうなぁ私。だからこんなにもアルトリアが羨ましく思う)

 惚れた弱みというやつだろうか。どんなにアルトリアのことを思っていても、それでも私は彼の側にいたいと思っている。

(今は元気になってくださいね、王様)

 私は名残惜しく思いつつ、掴まれていた手を解いて部屋を後にした。
 廊下を歩いている中、私はぐるぐると考えていた。
 その時、誰かにぶつかった。相手は食事に出向いていたアルテラサンタだ。満腹で満足したのか、笑顔だった。

「マスター、すまない。大丈夫か? …………

 アルテラサンタが慌てて私の所に近づいて尋ねてくる。しかし、アルテラサンタは息を呑んだように真顔で私を見ている。

「マスター、大丈夫か? すごく痛かったか?」
「え?」
「すごく悲しい顔をしている。泣きそうだ。ぶつかったところすごく痛かったなら医務室に――
「だ、大丈夫! アルテラサンタも気をつけてね! それじゃ!」

 私は早口にそう言ってその場を去った。アルテラサンタはあっ、と小さく声を上げてそれ以上は何も言わなかった。
 私はずんずんと、前を向いて歩いた。アルテラサンタに指摘されて改めて涙が溢れそうになるのをこらえる。

(うっ、あんなことで泣きたくないのに)

 脳裏にギルガメッシュ王がアルトリアサンタのことを言っていたのを思い出す。次第に悲しくなってくる。
 私はこの時、気づいていなかった。
 私の背中が見えなくなるまでずっとアルトリアサンタが心配そうに見つめていたことを――