kr0mm333
2026-06-13 16:02:13
10521文字
Public バチ(腐)
 

六平先生は靡かない

こちらはチヒ柴webオンリー「最高の共犯者」展示作品です。
開催おめでとうございます!

年齢逆転チヒ柴の学パロです。
チヒ柴ですが、未満な感じかも。

六平先生→柴の高校の非常勤講師。担当教科は数学。職員室に机がないので準備室にいる。柴君の誘惑に靡かない大人。

柴くん→高校2年生の梅雨に六平先生と出会った。六平先生に日々ちょっかいをかけては軽くあしらわれている。顔よし頭よし、運動神経よし。モテる要素しかない。


  四


「(……あれ?)」
 日曜の午後。
 休日で賑わうスーパーの店先に、見知った背中を見た気がする。
 人の間を縫うように進み距離を縮めていくと、やはり知っている相手ーー数学教師の六平千鉱だった。
 学校では毎日のように数学準備室へ入り浸っている。それでも休日にまで会えるとは運がいい。
 学校での、黒ジャージにスラックスという姿しか見たことがなかったから、私服の想像がついていなかった。
 だが上下黒というだけで、私服なのにいつもと変わらないように見えた。
「休みの日まで黒づくめってどういうことやねん」
 学校でも全身黒だったが、休日まで変わらないとは思わなかった。
 コーディネートを考えるのが面倒なのか、それとも単純に黒が好きなのか。
 おかげで後ろ姿だけでも千鉱だとすぐにわかったのだから、文句は言えない。
「驚かしたろ」
 もう少し近づけば、声をかけるくらいはできる。そう思って慎重に近づいてーー思わず足を止めた。
 ほんの少しだけ先にいる千鉱の隣には、見知らぬ女。
 最初は同じ買い物客かと思った。だが、千鉱は女の手から荷物を受け取り、何かを話しかける。女が笑うと、千鉱もつられるように口元を緩めた。
 たった数メートル。呼びかければ届く距離で、こちらを向けば気づける距離なのに、千鉱がとても遠くにいるように見える。
 女と並ぶ姿も、自分には見せたことのない笑顔も見ていられず、柴はその場から離れた。
 早足でその場を離れながら思い出したのは、生徒たちの間で流れていた噂。
 『六平先生には、奥さんがいるらしい』
 『六平先生に似た人が、女の人と歩いていた』
 そんな内容で囁かれていた気がする。
 千鉱は自分のことを話さない。
 質問しても肯定も否定もされないため、皆興味を失い、噂も自然と消えていった。
「そうやんな」
 なのに、どうして今になって思い出してしまうのか。
……そら、俺なんて眼中にないわ」
 自嘲するように呟くと、柴は人混みへと紛れていった。