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kr0mm333
2026-06-13 16:02:13
10521文字
Public
バチ(腐)
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六平先生は靡かない
こちらはチヒ柴webオンリー「最高の共犯者」展示作品です。
開催おめでとうございます!
年齢逆転チヒ柴の学パロです。
チヒ柴ですが、未満な感じかも。
六平先生→柴の高校の非常勤講師。担当教科は数学。職員室に机がないので準備室にいる。柴君の誘惑に靡かない大人。
柴くん→高校2年生の梅雨に六平先生と出会った。六平先生に日々ちょっかいをかけては軽くあしらわれている。顔よし頭よし、運動神経よし。モテる要素しかない。
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一
六月某日。
入学して二度目の梅雨だった。
階段の向こうに見える空は灰色で、今にも雨が降り出しそうだ。
そんな天候の中で授業を受ける気にはならず、柴はいつものサボり場所である特別教室棟に来ていた。
生徒の教室がある棟とは向かい合っているものの、わざわざ職員室の前を通って来る生徒はほとんどいない。
一階は職員用の駐輪場があって見つかりやすいが、二階まで上がれば授業中は人の目につかない。そのため柴は空き部屋を格好のサボり場所にしていた。
「
……
あれ?」
サボり場所となっている空き部屋の隣。
数学準備室と書かれたプレートのある部屋に明かりがついていることに気づいた。
本来なら数学担当の教師が使う部屋だが、ここに人がいるのを見た記憶はほとんどない。授業が終われば教師たちは職員室へ戻ってしまうためだ。
そんな場所だからこそ、サボり常習犯の柴にとってはうってつけの場所だった。なのに、いつもは人がいない準備室に誰かがいる。
出入り口は引き戸で、曇りガラスが嵌っている。そのせいで、人がいることはわかっても、誰がいるかまでは見えない。
注意されたら適当に言って逃げようなどと考えながら音を立てないようにドアを開けると、奥の方から「誰だ?」と声をかけられた。
入る前からバレると思っていなかったので驚いたが、見つかってしまったものは仕方ないので「しつれいしまーす」と棒読みしながら室内に入る。
数歩進んで顔を上げると、そこには黒ずくめの男がいた。
黒いジャージに同色のスラックス。黒ずくめの服装の中で、赤い目と左のこめかみに走る白い傷跡が妙に目を引いた。
「アンタ、誰?」
「もう少し丁寧に話せないのか?」
「誰かわからんのに下手に出るわけないやん」
ここは教科担当の準備室だ。そんなところにいる人間が誰か、わからないはずがない。
「俺は六平千鉱。数学担当だ」
「え? 先生やったん!?」
大袈裟に驚いてみせると、男ーー六平千鉱は眉間に深い皺を刻む。
「イケメンやからどっかのモデルがお忍びで来て隠れてるんかと思ったわ〜!」
あまりにわざとらしい反応に、千鉱は呆れたように嘆息した。
「心にもないことをよくもベラベラ喋れるな」
「そんなワケないやん。先生、今まで会ってきた中でかなりイケメンな方やで」
素直に褒めたつもりなのに、「それはどうも」と素っ気ない答えが返ってくる。
千鉱が椅子に座ると、使い古された金具がギィと耳障りな音を立てた。
柴は大股で近寄り、隣の椅子を引く。背もたれも肘掛けもネジが劣化しているのか、触れるだけでガチャガチャと音を立てた。
「先生いつからいてるん? 一年の頃にはおらんかったやんな?」
少なくとも、真面目に授業を受けていた一年の頃に見た覚えはない。そうなると今年赴任してきたことになるはずだが、この顔なら女子が放っておかないだろう。
千鉱は答えることなく、鞄の中から教科書を取り出す。
「てかその傷跡、結構イカついけどどしたん? あ、話したくなかったらええから」
「俺は次の授業の段取りを確認する。休憩時間はとっくに終わってるんだから、教室に戻れ」
「で、先生は彼女とかおるん? こんな顔良くてクールな男、放っておくわけないやんなあ。なんやったら、俺が付き合って欲しいわ」
千鉱は教科書から視線を外さず、時々ペンで何かを書き込んでいる。
「なあ、センセー」
あまりの反応のなさにくい、と袖を摘んで引く。大抵はこれで怒るか注意するか、違う意味に取る。
だが、千鉱の反応は少しだけ柴の予想から外れていた。
「質問は授業中だけにしろ」
注意には違いない。だが、離せでも、邪魔をするなでもなかった。
「こんな質問、授業中にやってええの?」
「もう聞き飽きたよ」
柴より先に、女子から似たようなことを散々聞かれていたらしい。いや、男子も放っておかないはずだ。
「みんな先生のコト、気になっとるんよなあ。俺かて気になってるもん」
「なあ、次授業あるん? だからソレやっとんの?」
柴への返答はなく、千鉱は教科書をめくっては何かを考え込んでペンを走らせている。
「俺、結構サボってるけど成績はいい方やねんで。テストは毎回八十以上取ってるし。あ、でもカンニングとかはしてないで」
「なあ先生。俺、あと何回サボれると思う?」
千鉱が一瞬動きを止めたように見えた。
「出席日数はちゃんと計算してるから、全然余裕なんやけどな」
それとほぼ同時に柴が「なんてな」と口にすると、何事もなかったように教科書へ視線を落とし、再びペンを走らせる。
本当に授業以外のことを話す気はないらしい。
それでも柴が話しかけるのをやめずにいると、やがて授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「俺は授業がある。早く出ろ」
有無を言わせぬ口調でそう告げると、千鉱は柴を準備室から追い出した。
柴としてはもう少し話していたかったが、千鉱は教師だ。授業を優先するのは当然だろう。
ポケットから鍵を取り出すと、千鉱は横目で柴を見る。
「しっかり計算できているのはいいが、足元を掬われるようなことはするなよ。柴登吾」
「なんで、俺の名前
……
」
「自分の受け持つ生徒の名を覚えてなくてどうする」
それだけ言い残すと、千鉱は準備室のドアを施錠して柴に背を向けた。
その背中を見送りながら、柴はしばらく呆然と立ち尽くしていた。
やがて我に返ると、次の授業もサボるつもりだったことを思い出す。
だが、すぐに準備室の隣の空き部屋へ入るわけにはいかなかった。いくらこの辺りに人が来ないとはいえ、鍵の壊れた空き部屋へ出入りするところを見られれば都合が悪い。
そうでなくても、千鉱が職員室へ報告してドアを修理されてしまえば、もうここではサボれなくなる。
缶コーヒーを買って少し時間を潰し、空き部屋へ戻ると、当然そこに千鉱の姿はなかった。授業はとっくに始まっていて、周囲はしんと静まり返っていた。
パイプ椅子に腰を下ろし、準備室での一時間を思い出す。
会話らしい会話もなく、口煩く説教もしない教師など初めてだった。
「なんやねん、アイツ」
やけに記憶に残る赤い目を思い浮かべながら、柴は買ったばかりの缶コーヒーに口をつけた。
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