花筵シヂマ
2026-06-06 23:20:01
27374文字
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玲瓏の花籠(3から4話まで)

後転男体化なので前は女の子のミズキが出てきますが、転生しておとこになり、例の村で父と再会します

 ゲゲ郎の父は軽薄なおとこだ。
 自得になることしかしない。その冷淡なおとこが、ゲゲ郎との約束を初めて守ったと知ったのは数日後のことだった。
 夜更けに来客があった。
 紫色の御簾の下で手をついて首を垂れる緋色の着物姿のおんなは肩で髪をまとめている。この後行われる用途のために無駄な飾り付けはしていないのだ。
「早う入れ」
 そういえばおんなは、静々と音もなく入ってきた。
 翻る暖簾の向こうに、真夏の花のような笑みを浮かべるおんなはいない。
 ただ俯いた向日葵が咲き誇る庭があるだけだった。
 父は今まで反故にしてきた約束を果たすように、次々とおんなを送り込んできた。
 その度にミズキに出す暇が増えた。ゲゲ郎も意図的にミズキを避けてしまった。
 父に大嘘をついてしまった。
 ゲゲ郎にはミズキは抱けない。
 抱いてはならない、不可触のおんななのだ。
 そのくせ、ミズキがあの端正な顔を歪めて嫉妬する顔を見たくてたまらない。なんと矛盾しているのだろう。
 だが実際その顔を見てしまうと己が耐えられるかわからなくなったのだ。臆病でつまらないおとこなのだ。
 次いで、ミズキへ隠し事をする後ろめたさがゲゲ郎を襲った。ミズキへ重ねる言い訳もなかったからだ。
 その穴を埋めるように自分への言い訳だけはうまく作り上げられていった。
 ミズキもゲゲ郎のような面倒なおとこに会うような仕事がない方が良いだろう。ネコ女とその数多の娘たちと共にいる方が幸せなのだ。
 今のゲゲ郎はひどく汚れている。頭の先から爪先まで、肉欲にまみれている。幾ら見た目を幼子に変えても染みついた汚さは消えない。
 そんな姿をなるべくミズキに見せたくない。
 特におんなを抱いている姿など見せようものなら、さらに嫌悪されるだろう。
 ミズキを避ける方が言い訳を作るより簡単だった。
 元より部屋に閉じ籠るような生活だ。出さえしなければ、ミズキに会わなくても済んだ。ミズキの顔をひとたび見ると、決意が揺らぎそうだった。だからその方が良いのだ。


「朝餉をお持ちいたしました」
 朝早く、昨晩の相手は出ていってしまった。肉体にまとわりつくような布団を払い、乱れた白髪に指を通した。
 枕元に置かれた煙管を手に取り、木製の小箱から細かく刻まれた葉を取り出す。ほんの少し気分を高揚させる、そんなものだ。指の先で丸めながら雁首に押し込んだ。
「すまぬ、置いてくれんか」
 いつもなら蚊帳の下に、お膳が置かれるが今日は気配が遠ざかることはない。白い指先がお膳の縁を握りしめ離れないのだ。
……どうした?」
 手がやんわりと離れたかと思うと、急に御簾を捲り上げていくではないか。
 他のどの妖怪もそんな真似はしない。
 だが、二人ほどそれができるものがいる。
 ゲゲ郎を息子のように扱うネコ女。
 そして。
 吊り上がった眉は怒りを表し、爛々と光る濃紺の双眸はゲゲ郎を捉えて逃がさない。
「ミズキ」
 咥えていた煙管が派手な音をたてて転がっていく。ゲゲ郎の視界がどんどんと低くなり、縮んだとわかるやいなや、身の丈に合わない着流しを頭から被った。
 今の自分を見られたくない。
 おんなを抱いて汚れた肉体は、ミズキに触れさせるべきではない。浮かんだ言葉を全て飲み込み、ゲゲ郎は裁きの時を待っていた。
「どうして俺に相談してくれないんだ」
 頭上から降ってきたのは、絞り出すような悲痛な声だった。
「どうして自分で背負うんだ。……こんな辛い真似……したくもないことを……
 次第にその声は小さくなり、涙で濡れて掠れていく。ミズキが泣いていると気づくのに時間は要さなかった。
 着流しの隙間から覗き見すれば、ミズキは涙を流しながら憐れむようにゲゲ郎を見下ろしていた。
 ーーなぜ泣くのだ。
 焼きもちを焼いて怒るのではないのか。
 なぜ悲しむのだ?
 父の、数多いるおんなたちは常に父の妻の座を取り合って喧嘩をしている姿を何度も見てきた。美しいおんなたちが顔を憤怒に歪ませて罵り合い、つねり合う様は滑稽でさえあった。ミズキがそんな風に暴れるとは思わなかったが、ほんの少しでも怒りを口にしたら満たされると思っていた。
ところが、今、ミズキは涙を流している。
涙を流して俯き、そして膝をついて座ってしまった。
 酷いと泣いているのは、もしや同情しているのだろうか。
 ゲゲ郎は子供の姿のまま、ミズキに歩み寄り、その頬に触れた。柔らかな頬と濃紺の双眸に自分が映る。
「わ、儂とともにあれば、ミズキは傷つけられる。こうすれば父は手を出さぬから」
「ならば俺がお前と関わらないようにする。……だからこんな真似はしないでくれ」
 ミズキは離れることを厭わないというのか。
 不快感がゲゲ郎のなかにぶわりと広がっていく。
「ミズキ、聞き分けてくれ。こうするしかないのじゃ」
 ミズキは静かに首を振る。肩まで伸びたさ髪が揺れ動き、睫毛に縁取られた眸がゲゲ郎を射抜く。
……そうならば……ならば、ミズキが……
 浮き上がる言葉を飲み込んだ。
 これは提案すべきことではない。
 もしミズキに拒まれたら。そうすれば自分は何をするかわからない。
 異変を感じたのか、怪訝そうにミズキは眉を寄せている。
 知られるわけにはいかない、内側の一番汚れた自分を。
 震える手でミズキの肩を掴み、無理矢理笑みを作った。
「久しぶりに散歩にいかぬか。父から見られぬように、屋敷の外へ。この屋敷を出て遠くには行けぬが、この近くに湖があるのじゃ。そこで話をしよう」
 少し冷静になれば馬鹿な考えは霧散するかもしれない。
 そう期待して、ゲゲ郎は小さく喉を鳴らした。

 霧に覆われた屋敷の外に、ミズキは足を踏み出すのを躊躇っていた。手を引いて導けば、小さく握り返される。
 以前もこんなことがあった。
 初めてきた時はこの少年のような顔立ちのミズキを森の中彷徨わせたときだ。あの頃の自分を思い出すと拳骨を喰らわせたくなる。
 あの時はただ、母の形見を持ち出した人間を懲らしめてやろうと浅はかな考えに支配されていた。
 しかしミズキは欲深なおんなではなかった。思慮深く身を粉にして屋敷に仕え、何より父への嫌悪感を抱いていた。ゲゲ郎と同じく、だ。
 我儘な若主人への配慮など断れば良いのに、ミズキは毎日通い詰め、この屋敷の外の世界の話をしてくれた。ミズキの語り口調は巧みで、実際にゲゲ郎が体験したかのように没入することができるほどだった。
 なぜこんなに色々旅の話を知っているのか。ミズキにそう問いかけた。ミズキは遠い過去をなぞるように目を細めて言った。
「叔父さんが放浪癖があって、その旅の話を聞くのが好きだったんだ。けど結局、その叔父さんのせいでこんなことになっちまったけどな」
 ミズキは、もしかして、自由になりたかったのではないか。
 自分とゲゲ郎の身の上を重ねているから親切なのだ。その事実はゲゲ郎を安堵させた。しかし一方で不満が湧いた。
 不満の正体は、わからない。
「綺麗だな」
 気づけば目的地に辿り着いていたらしい。
 森の中にぽかんと開いた、濃紺の湖にミズキが感嘆の声を上げた。
 湖の真ん中に色褪せた鳥居が佇んでいる。
「ここは神社の一部なのか?」
 ミズキは鳥居を見るなり、周囲を見渡しながら訊ねてきま。
「そうじゃ。ここは龍の住処。しかしもう姿を見せることはないじゃろう。……儂らの屋敷には数多の妖怪がおるじゃろう?」
「あ、ああ。そうだな。全員を見たことはないが
「屋敷におる妖怪は皆、事情を抱えておる。人里にも駆け込み寺というものがあると聞いた。離縁したくとも離縁できぬ、そんなものを受け入れる場所があると」
 この話は随分前にネコ女に聞いただけで詳しくは知らない。人間の社会は不自由だと思ったが、妖怪もまた生息地域への縛りがある。縄張りを奪われると二度と戻れはしないのだ。
 そんな妖怪を受け入れるようになったのがあの屋敷だ。
「儂ら幽霊族もまた、仲間がほとんど死に絶えた。身を隠すために建てたのがあの屋敷じゃった」
「そうなのか……この湖の龍も?」
「随分と見かけなくなったが、そうじゃと聞く」
 この湖の龍もかつてはなのある河の龍だった。
 しかし人間により土地を追われて、ここへ落ちぶれてきた。天へ帰る力を無くしていたからだ。
「龍には番がおってな。その番は、病で亡くなってしもうた」
 しゃがみ込み、湖を覗き込むと水底で水草が蠢いた気がした。
 龍の番は一生涯、一匹だ。ゆえに番を失った龍は、もう生きる気力も天へ戻る気力も失ってしまった。
 ーーーー儂もそうかもしれぬ。
 傍らのミズキは悲痛そうに顔を歪めている。
 もしミズキが前のように青い顔で今にも生命を手放そうとしていたら、ゲゲ郎も同じ道を選ぶだろう。
 会ったこともない龍に親近感に似た思いを寄せた。
 ミズキは、どうなのだろう。
 自分と同じように思ってくれるだろうか。
 ゲゲ郎は水面を指先でなぞり、ぽつりとつぶやいた。
「ミズキは……なぜ、男女の色事を嫌う?」
 湖を見ていたミズキの顔があからさまに曇っていく。潜められた眉間に皺が濃く刻まれた。
 慌てて眼前で手を振り言い訳を並べた。
「すまぬ、好めというわけではない。ただ気になったものでな」
 ミズキの表情は少しゆるんだが、しかし、言葉は強張っている。
「なんとなく嫌いなんだ。叔父が、人形たちがそういう行為をしているのを俺に楽しそうに見せてきてから……気味が悪くて」
 ミズキは腕を擦りながら青ざめた顔で言う。よほど嫌なものをみたのだろう。ゲゲ郎の前で人形がそんなことをしているのは見たことがないが。
「そうか、そうじゃな。……儂も好きではない。無責任に、子を作りたくない」
 ミズキは何かを言いたそうに唇を動かしている。そういえば伝えていなかったし、説明もしていなかったと思い至る。
「実は、行為はしておらぬ」
「えっ」
「儂は幻覚が得意でな。おんなたちに、そう言う行為をしたと思わせて返しておる」
 ミズキが目を丸めて唖然としていた。そしてあからさまに、安堵したように微笑を浮かべたではないか。
 そんな様子に、ゲゲ郎の期待は簡単に上昇する。
「そうか。そう、なのか……
 だが、ミズキにはこれは言えない。
 ーーーー孕ませるのはミズキだけ。
 父にそう伝えたとミズキには言えない。
 できるわけもない大口を叩いたのだ。性行為を嫌悪しているミズキが、ゲゲ郎と子作りなどしない。
 ミズキを無理矢理組み敷いてそんな真似もしたくない。
 水辺に生えた紫色の菖蒲の花を手折、ミズキに差し出した。ミズキは俯いて花を受けとってくれた。まるで花の匂いを嗅ぐように、口元を寄せ目を伏せる。
 ゲゲ郎は距離を静かに詰めて、風によって剥き出しになった額に唇を押し付けた。
 ミズキはゆっくりと瞼を押し上げて驚いたようにゲゲ郎を見上げたが、接吻には気づいていない。
「どうしたんだ?」
 ミズキの黒髪に指を通し、ありもしない埃を捨てるふりをした。
「いや、ゴミがついておったのじゃ」
 ミズキは穢らわしいことを知らなくて良い。
 きっとゲゲ郎が抱くこの感情も、ミズキには似合いではない。
 半透明の湖畔に映るミズキの姿を見ながら、ゲゲ郎は苦笑いを浮かべた。


 部屋にやってくるおんな妖怪を“かわし”ながら、ミズキとは湖畔への散歩の逢瀬を重ねた。時刻により湖は色を変え、ミズキを楽しませていた。
 穏やかな時間だった。ミズキを前のように失わなくても済むと思っていたからだ。
 しかし所詮、ゲゲ郎の行動は浅知恵なのだと思い知る日がきた。
 いつものように夜遅くに、紫の御簾の下に白い手が見えた。今度は人らしい姿の妖怪が良い。そう思いながら煙管をくるり、と半回転させた。
 いつもならずかずかと入ってくるくせに、今宵の妖怪は一向に入ってこない。
「早よう、入れ」
 苛立ち紛れにそう言い、背を向けて敷いた布団の上に腰を下ろした。途端、急に背後から抱きしめられた。柔らかな肉の感触に、胸を押し当てられたと知る。
 ゲゲ郎は乱暴に払いのけようとしたが、からだが動きを止めた。甘い、桜の匂いが漂ってきたのだ。
 ミズキのいる庭ーー春の庭の匂いだ。
 心臓が暴れ狂うように跳ね上がり、ゲゲ郎は恐る恐る背後を振り返えった。首が軋むようにしか動かず、生汗が額を伝って落ちていく。
 そんなはずはない。
 ミズキに似た匂いの別人かもしれない。
 膝上に乗った自分の手が震えながら拳を形作る。
「ゲゲ郎……
 振り返った先にいた濃紺に囚われる。
 頭から紫の薄い布をかけたミズキが、赤い長襦袢を着て抱きついていた。その眼差しにいつもの生命力溢れる輝きはなく、虚な眼差しをしていた。
 操られている、と一目でわかるような眸だった。
……旦那様から言付けです。偽りなどすぐ見抜けるぞと」
 ミズキらしからぬ赤い口紅を纏った唇が歪な弧を描いている。
 それだけで父が、ゲゲ郎がおんな妖怪に手を出さずに返していることを見抜いていると察した。だから父はミズキを操って寝屋に寄越したのだ。ミズキを孕ませるという約束ぐらいは、守れと言わんばかりに。
 ミズキはゲゲ郎と視線を絡めたまま長襦袢を肩からずらしていった。艶かしい白肌が姿を見せ、次いで豊満な胸がふるりと姿を見せた。薄い桃色の乳頭を見るなり、本能的にミズキの長襦袢を掴んで胸元を隠した。
「や、止めよ!ミズキ、正気に戻るときっと後悔するぞ!」
 ミズキはなぜ、と言うふうにおっとりと首を傾げた。
 結ばれていない黒髪が肩を滑っていく。
「こう、かい」
 知らない言葉を舌先で転がしているような言い方に、眩暈を覚えた。いつもの俊敏さも、凛々しさもない。いまのミズキは全身の帯が解けたように無防備だった。
……ゲゲ郎」
 頸を、人差し指でなぞられた。
 全身がぞわりと総毛立ち、おとことしての欲が燃え上がるのを感じていた。
 ミズキの後頭部を押さえて、開いた唇を塞いだ。
 噛み付くように唇を喰み、舌で上唇を捲り上げた。
「は……う、ん……
 ミズキは接吻に慣れていないらしい。
 息苦しそうに鼻で呼吸をしながら、弱々しくゲゲ郎の腕を掴んできた。それが縋られているように心地良い。
「んっ、んん……はふ……っ」
 力の抜けた舌を吸い上げ、舌の側面をねっとりと舐め上げた。長襦袢がめくれて剥き出しの内腿を撫で回しながら、唾液を飲ませるように接吻を繰り返す。
「ミズキ……
 舌を解放する頃にはミズキは濡れた目でゲゲ郎を見上げていた。
 崩れそうになる肉体を布団に寝かせてやる。黒い髪に指を入れ、ゆっくりと頭を撫でた。ミズキは気持ち良さそうに目を閉じ、身をすり寄せてくる。
「ミズキ、口を開けておくれ」
「ん……っ」
 洗脳のせいなのかミズキは従順だった。
 言われた通りに口を開け、赤い舌を見せてくれる。紅が落ちたにも関わらず、唇は真っ赤に熟れている。
 開いた口に舌を潜ませていく。敷布団を滑る指が力無く張っていた。
「ん、お、…………
 狭苦しい咽頭を犯しながら、細い足を割り開き己のからだを捩じ込んだ。紅潮した頬に涙が幾重にも流れていきら息苦しそうに眉根を寄せている。
 生温かく濡れて狭い喉からちゅるり、と舌を抜く。ミズキはむせ込みながら、足を閉じようと身じろいでいる。
「どうしたのじゃ……?」
 ミズキは居心地悪いのか目を逸らしている。
 意図せず、父が日ごろ軽口を叩く内容からおんなのからだに詳しくなってしまったせいでミズキが何を隠したいかわかってしまった。
 それでも、興奮で声が震える。
 おんなのそこに触れるのが怖いのではない。
 ミズキだから堪らなく興奮して怖いのだ。
 止まれなくなれそうで、怖かった。
「ここが濡れて気持ち悪いのか?……
 ミズキの内腿から下降させた手で、白い下穿きで隠された股に指を這わせた。びくんとミズキの肩が大袈裟に震える。
「あ、や…………!」
 薄い布はぴったりと割れ目に食い込み、ゲゲ郎の指を迎え入れる。愛液が滲みゲゲ郎の指を濡らす。
 ミズキはおずおずとゲゲ郎を見上げてきた。憤るというよりはその反対で、今にも泣きそうだった。
「お、おれ、漏らしちゃったのか……?」
 ミズキは性的なことを拒むあまり、無知なのだ。
 悟った瞬間、ゲゲ郎は沸き上がる笑みを隠せなかった。
「違う、これは気持ちよくて濡れておるのじゃ」
 幼子に教えるように、そう呟く。
 しっとりと濡れた花びらに指を往復させる。
「儂との接吻が気持ち良くて……こんなに悦んでくれたのか……
「あ、あ、……ッ」
 花びらの奥で硬くなった花芯に触れた。ぷっくり膨れたそこを指先でかりかりと引っ掻いた。
「ひあっ、……!?」
 ミズキは目を見開き、全身を震わせた。
 ここがおんなの弱い部分だと、父の酒宴の席で聞いたことがある。
 父の影に息を吹きかけて消して、追い出した。今はミズキのこと以外考えたくない。若々しく熟れたおんなの肉体のことしか。
 ミズキの濡れた花芯を指で優しく挟んだ。
「ここも可愛らしい。小さく隠れて……いじればいじるほど、甘い蜜を滴らせよる……
 傷つけないようにゆっくり花芯を擦りながら濡れた花びらをなぞった。ミズキは初めて与えられる快楽の波を溺れそうになりながら受け入れている。
「アッ、あ、ぁ……っ、また……っもれちゃう……
 ミズキは縋る場所を求めてゲゲ郎の肩を掴んできた。優しく指を絡めて繋ぎたいが、それよりも抑えようもない興奮がゲゲ郎を突き動かす。
しどどに濡れた秘部を直接みたくて仕方ない。ミズキの内腿を掴み、濡れた下帯を乱暴に剥いだ。
「ひ、やだあ……ッ」
 ミズキは真っ赤になって首を振っている。いつもならミズキが拒んだら様子を伺って慎重になる。なのに今は、好奇心に押され負けている。
 
 薄い下生えに覆われた可愛い花びらは朝露を滴らせ、弄って腫れた花芯が顔を出していた。
 おんなの赤い、命の生まれる場所がその奥にある。
 ずくり、ずくりとゲゲ郎の下半身が熱を帯びる。
 涙を流すミズキに顔を寄せて唇を重ねた。柔らかい、肉の感触に何度も唇を押し付ける。
 直接、濡れた陰唇のなかに指を含ませた。痛がらないように泣かないように、必死で思考を巡らせて口づけを繰り返した。
 舌先で唇の形をたどって、ミズキが出した舌を擦り合わせる。
「んぅ、う、はぁっ、あっ」
 肉壺のなかの粘膜を指で味わうようにかき混ぜた。ぬるついた愛液がゲゲ郎の細指を濡らしていく。
「怖がらずとも良い、……これは普通なのじゃ、気持ち良くて感じておるだけじゃから」
 あやすようにそう言い、狭い膣のなかで指を何度も往復させた。ミズキは緊張で足を閉じようとしていたが、やがて力を抜いて足を広げてくれる。
「ぁ、ア、ん、は、っ……きもちぃ…………ぁっ、あっ、ぁあぁっ!」
 花芯を片手で弄りながら、豊満な乳房にむしゃぶりついた。ふっくらと屹立した乳頭を赤子のように啜れば、ミズキのおとこを知らぬ花園がきゅっと締まった。
「あ、ぁっ、はぅうっ……~~——!」
 ミズキは眦から涙を零し、軽く痙攣して果てた。愛液まみれの指を引き抜き、それを味わうように舌を絡めた。
 気だるいのか、ミズキは半分瞼を下げてゲゲ郎の動作を見上げている。
「安心するが良い、日中のミズキには秘密にする」
 そう言ってミズキの瞼を片手で静かに下ろした。
 しばらくして規則正しい寝息が聞こえてきたが、ゲゲ郎は共に寝ることなく、濡れた股へ顔を寄せた。


 いつも通りの昼下がり、ゲゲ郎はミズキの部屋に出向いた。
 桜の花が咲き誇る木から力なく散った桃色の花弁が廊下を汚している。
「ミズキ、外へ散歩に行こう」
 戸を開けると、ミズキはいつものように洗濯物を畳んでいた。
「ゲゲ郎、ちょっと待ってくれ」
 ミズキはいつもと変わりがなく屈託ない笑みを浮かべて髪を撫でつけている。
 昨日のような蕩けた双眸は既になく、輝く宝石のような双眸があるだけだ。
 ゲゲ郎の脳裏には昨夜の淫らなミズキが過っていた。初めての快感に怯え、愛液で濡れた未開の地は、今やゲゲ郎の指を知っている。
 ミズキは羽織を纏い、傍らに来るなり表情を曇らせた。
「どうしたんだ? 変な笑い方だな」
「ああ、いや。思い出し笑いじゃ」
 ミズキは知らない。
 知らないままで、ゲゲ郎がおんなにしていく。
 手にした煙管の吸い口を唇に押し当て、ふう、と悩ましい息を吐いた。