桂山針
2026-05-11 10:11:40
41259文字
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書き溜めてるやつ

一応書き溜めてるけど、全く進まないけどちょっと投稿したいな。という欲を発散するためのものです。
ハーメルンに後々上がるとも思いますが、その際内容が少し変わってるかもです。所謂、【画面は開発中のものにつき、実際の仕様とは異なる場合があります】です。

Prologue:とても平和な夏の日

01 イングランドの森

 1999年7月22日、ひとりの少女が死んだ。
 嗚呼、哀れなる友人よ。永遠の友よ。冷たき運命に縛られし矮小な魂よ!
 主よ、その御手にて彼女を受け取り、永遠の安らぎを与え給え。その名は失われず、その歩みは御前にて保たれん。
 願わくは、彼女が主の御許にてやすらかに眠らんことを。その祈りを、ひとりの友は絶えず捧げ続けるだろう。
 『トゥイグウードの廃教会にて実施された葬式』より
 ――君の愉快な道化師 イヴリン・スミス

※ ※ ※

 イングランド北東部には森があった。今時のブリテン島に森は珍しい。16~17世紀頃、ブリテン島では欧州へ向けて木材の輸出が行われた。よって1980年現在森林被覆率は英国全体で9.0%に留まっている。
 
 しかし、そこには森があった。それは誰かの勘違いでも無く、その森はブリテン島に存在している。
 現在、地元住民から≪呪われた森≫と称されるその森には、500年ほど前に≪トゥイグウード≫という僻村があったらしい。地元の郷土史家ですら、何故≪トゥイグウード≫の村が滅んだのかは知らない。
 この≪トゥイグウード≫と呼ばれていた村には一応は教会が存在した。しかし、≪トゥイグウード≫の村が滅ぶ事件についての記録は何一つとして残されていなかった。故に、この地域を専門的に研究する郷土史家は≪トゥイグウード≫の村が滅んだ理由の一切を推測する事が叶わず、物語ファンタジーを繋ぎ合わせて、それらしい事を言うしかなかった。
 例えば、病気の蔓延により滅んだ。例えば、何らかの原因により街へと集団移住をした。最後には魔女に呪われて滅んだ、だとか言い始めた。
 
 確かに、≪呪われた森≫と呼ばれる所以は、この森に足を踏み入れた者の多くが短くない時間を経て命を奪われる。
 始めは林業関係者。彼らはなんと6週間後には、様々な理由でこの世を去っていた。数少ない森を活用して別荘地にしようと考えた会社の従業員も死んだ。それが只の偶然か、それとも呪いか論じる事が出来る者は今まで現れた事は無い。
 現代の郷土史家の多くは魔法魔術を滑稽な過去の遺物と決めつけ科学を尊ぶ理性的な人間であり、自身の直感に従って生き続ける魔法使い達では無いのだから。

 この誰も知らないその森の奥には見る者を惑わす程美しい花畑があり、その中央部分には1900年代後半としてはあまりにも時代遅れな石造りの家がポツンと佇んでいた。そして、その誰にも知られていない家には2人の少女と2匹の動物が暮らしていた。

………………

 朝食を用意するキッチンにてコンロの火が爆ぜる音。その音に交じって、少しだけ砂嵐めいたノイズが走る。その次の瞬間、艶やかな男の声が部屋いっぱいに広がった。
 絹のように柔らかな金色の髪を持つ少女、恐れすら抱く美しい赤い瞳を持つ少女。その少女を美少女と称さずになんと称すのだろうか? と言われたげな〈美少女〉、イヴリン・スミス(以後、彼女の事を〈美少女〉と示せと彼女自身から指示を受けた)が杖で料理をし、それをラジオが彩る。ごく一般的な魔法使いの家で見られる朝の光景である。

おはようボンジュール! 親愛なる英国魔法界の紳士淑女の皆さま』
 低く良く通る声が、部屋に響く。部屋の中では、時期に朝食が出来上がる。〈美少女〉は近くの止まり木に居るシルヴィアの〝飼いフクロウ〟であるオリビアに眼差しを向ける。
 オリビアは不機嫌な様子で飛び上がり家の中を器用に飛び出す。そうして、自身の主人であり〈美少女〉の友人であるシルヴィア・ベルグワードが住まう2階の部屋の扉を嘴で叩く。

 実をいうと、オリビアは〈美少女〉の事を嫌っていた。しかし、同時にシルヴィアの事は愛していたので〈美少女〉の言う事聞くしかなかったのである。
 ここで注釈だが、オリビアは元は英国魔法界の一般郵便フクロウであった。ある日、この家へと郵便物を届けに来た時、当時1人でこの家に暮らしていたシルヴィア酷く哀れに思い、彼女の家族として種族違いの母親としてこの家に住み始めたのである。
 種族を超えた愛があるのならば、この1人と1匹には間違いなくあるだろう。

『こちらは〝ウィザーディング・ワイヤレス・ネットワーク〟、朝のひとときをお届けする【サン・ジェルマン伯爵と愉快な朝】。7月1日、月曜日。空は薄曇り。されども、心まで曇らせる必要は御座いませんよね?』
 〈美少女〉は慣れた手付きで、ハムエッグトーストをそれぞれ2枚のプレートに乗せる。

『パーソナリティはいつもの朝のお供、サン・ジェルマン伯爵。ああ、年齢の質問は受け付けておりませんよ。前回、3789歳と予想したお方。惜しいですね』

「あ、シルヴィアちゃん、おはようグーテンモルゲン。朝ごはん出来てるから食べよう」
「おは……よ、う。ありがとう」
 シルヴィアと呼ばれた少女はヨタヨタと歩いてくる。黒髪に未だに開き切らない灰色の瞳。シルクの滑らかな寝巻を纏っている。目を擦りる。階段でコケけないギリギリを突くように歩く。その様子はまるで子供向けの螺子巻き式人形であった。
 〈美少女〉はシルヴィアを愛らしそうに眺めていた。近くでオリビアが〈美少女〉に敵対心を燃やす眼差しを見ていた。フクロウにもまた嫉妬の心がある。この世界に生まれ堕ちた全ての生命は7つの大罪を抱いているのだ。

『さて、本日のニュース。魔法省公式ニュースをお届けしましょう』
 シルヴィアはまず、壁に肩をぶつかりながら洗面所へ向かいで顔を洗う。
 冷たい水が顔に染み渡り、ぼんやりとした頭も疎ましくとも親愛する朝であるという自覚を持てるのである。

『魔法省大臣。そうですあの魔法省コーネリウス・ファッジ大臣より声明です。〝英国魔法界は依然として安全かつ安定している〟だそうです。英国人が〝安定〟と言う時、それは大抵紅茶を茶葉からいれる事が出来る、と言う意味です。安心してよろしいでしょう』
 ラジオの陽気な声は洗面所まで響いてくる。
 シルヴィアにとって、朝からハイテンションを保てるこのパーソナリティーは、最早尊敬に値するような人物だった。シルヴィアがもし、朝のラジオパーソナリティーを務めれば自身の寝言を配信する事になるに違い無い。
 
『続いて天気予報です』
 ラジオからは軽やかな音楽のジングルが鳴る。その頃にはダイニング・テーブルまで辿り着いて、シルヴィアは椅子に倒れこむように座った。木製の椅子が僅かに軋み、ギィと音を立てた。

『いつものブリテン島の如く、曇り。曇り。されど快適。言う事はこのくらいでしょう。良いですね、ブリテン島は。大抵の天気は曇りなのですから。当たり外れがなくて天気予報士も楽でしょう』
 シルヴィアはやっとここで目が開いてきて、美味しそうなハムエッグトーストが見えてくる。

「わぁ~美味しそう! 流石はイヴの手料理だね!」
「まぁ、〈美少女〉にとって料理はお茶の子さいさいなのさ」
 〈美少女〉は美しく、誇らしげの笑みを浮かべている。シルヴィアもまたその笑みに釣られて笑顔になる。

『さてさて……続いては音楽の時間です。夏の陰鬱とした朝を吹き飛ばすのにピッタリな情熱を。彼らの新らたな音を!』
 ラジオパーソナリティーがそう言えば、激しいギターの音がラジオのスピーカーを揺らす。鍋を叩くようなビート。魔法的に増幅された重低音が家の柱を確かに揺らした。
 その音楽を聴き、〈美少女〉もシルヴィアもリズムを取って楽し気な朝食の時間を送る。

『素晴らしい! 情熱とは、制御された魔法のようなものです。強すぎれば爆発し、弱すぎれば冷えてしまう。適切な火加減を、サン・ジェルマンは推奨いたします』
 ラジオパーソナリティーは何やらうまいことを言った風な反応を見せている。この頃になれば、食べるのが早い〈美少女〉は既にハムエッグトーストを食べ終え紅茶を淹れ始めていた。

『では、リスナーの方からお便りを一通。ホグワーツ在学中の小さな魔女からのお便りです。〝伯爵様、どうすれば美しく長生き出来ますか?〟』
『ふむ、お嬢さんマドモアゼル。良い質問だ、誤解を招く事を承知でお答えしよう。魔法は美しくとも残酷な御業だ。もし、君が本当に長生の術ソレを望むのならば、いつの日か手に入れられるだろう。例えば、わたくしのように。例えば、森の泉の底から……
 
 〈美少女〉は紅茶を飲みながら、何処か窓から遠くの方を見ているようだった。
 しかし、この家の窓から見えるものといっても、精々美しい花畑と鬱蒼と生い茂る暗緑の森ぐらいだった。シルヴィアが不思議に思って〈美少女〉の眼差しの先を見た。僅かに木々は揺れたが、シルヴィアは気が付かなかった。
 
『──冗談ですよ。ブリテン島の泉は大抵泥と蛙です』
  
……ん? イヴ、どうしちゃったの?」
「い~や、何でもないよ。あ、そうだ。来週にウェストエンドへ行ってミュージカルでも見に行かない? 新聞広告で面白そうなもの見つけちゃったんだよね~」
 少し誤魔化すように、それでも普通の世間話のように〈美少女〉は囃し立てる。シルヴィアも笑顔で「それはいいね、どんな作品なの?」と会話を続けた。

『さて、ホグワーツ魔法魔術学校は遂に夏休みを迎え、新入生を迎える準備を始めるでしょう。と言う事で、さて、〝サン・ジェルマン伯爵の、少しだけ先取り〟恒例の未来の予感コーナーです』
 シルヴィアはここら辺りでやっとハムエッグトーストを食べ終わり、〈美少女〉が淹れた紅茶を飲み始めた。紅茶は僅かに熱さが残っており、シルヴィアの猫舌にとってはそこそこのダメージを与える存在に成っていた。

『ホグワーツにはまた例年通り新しい1年生が入学します。そうですね、彼らが最後の過疎学年となるでしょう。さて、毎年誰かが歴史を変えるかもしれないと言われますが……まぁ、子供は子供であるべきですね。英雄も悪役も暖炉の前の物語で十分です』
 その言葉に〈美少女〉が僅かに反応して、ラジオを凝視した。まるで、パーソナリティーの言っている事が信じられない、とも言いたげな様子である。
「どうしたの?」
 そう聞いてから、シルヴィアはパーソナリティーが未来予知のような事を言っているのに気が付いた。
「イヴが未来予知を信じるだなんて珍しいね」
 
『おっと、いけない。未来を語りすぎるのは占い師の仕事でした。わたくしはしがないラジオパーソナリティー若しくは錬金術師。職務の範疇外の事はすべきではない、と魔法省大臣が教えてくださいましたからね』
 シルヴィアの声に重なるようにパーソナリティーが冗談めかしに言う。ただ、〈美少女〉は何処か引っかかっているようで、顎に手を当てて悩んでいる人。の構図になった。

 その時、窓からコンコンという音が聞こえて来た。シルヴィアは立ち上がり、窓を開ける。そうすれば、見慣れないフクロウが2枚の封筒を持ってきていた。封筒を受け取り「ありがとう」と言うと、フクロウはさっさと立ち去ってしまった。
 ダイニング・テーブルに戻りながら封筒を見て見る。その封筒には〝H〟と金文字で書いてありその周りに獅子、穴熊、鷹、蛇が並んでいる。それを見て、シルヴィアは驚きと不安を封筒と一緒にどの手に握り始めた。
 
「イ、イヴ? 凄いよ! こ、これって……ホグワーツ魔法魔術……学校の入学案内のお手紙、だよね?」
「へぇ~、ホグワーツの入学案内書か。案外、来るのが早かったね」
 イヴリンはシルヴィアから手紙を受け取ると手紙に書かれた宛先を見るなり笑った。

[イングランド トゥイグウード 花畑に囲まれた石造りの古い家 イヴリン・スミス様へ]

「ふーん、最近は宛先を気持ち悪いほど書くのが流行りなんだね」
 その声音は皮肉から来ているものだった。〈美少女〉はシルヴィアが手で破いて封筒を開けようとしているのを横目に、スーッと横に指を引いた。そうすれば、封筒は綺麗に開かれる。中には2枚の手紙が入っていた。
 
[ホグワーツ魔法魔術学校 校長 アルバス・ダンブルドア マーリン勲章勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員]
 
「はは、これは気に入った! 私も将来、誰かに手紙を送る時は肩書を10個ぐらいつけてやろう」
「け、けど……こんなにも肩書きを書く意味はあるの……? このダンブルドア校長先生という方は、権威主義的な方なの?」
「どちらかと言えば、権威主義的なのはこの英国社会の方じゃない? ま、そーゆーのはいいから」
 そう言って、1枚目の手紙を広げてみる。

 親愛なるスミス殿 
 この度はホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されました事、心よりお喜び申し上げます。
 教科書並びに必要な教材リストを同封いたします。 
 新学期は9月1日に始まります。7月31日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。 
 敬具 
 副校長ミネルバ・マクゴナガル

「これって、もし断ったやったらどうなるのかな?」
「た、確か……家にある本で見たのだけど……ブリテン島及びアイルランド出身の魔法使いは皆、ホグワーツに通わなくちゃいけないらしいよ……だから……海を飛び越えて他の国に行かない限りは追いかけて来るんじゃない? 手紙自体が……
「おぉ、それは怖い怖い……
 あまり怖がっていない様子だった。愉快そうな笑みを浮かべて2枚目の手紙を見る。その手紙には、必要な教科書や衣類などが事細かく書かれていた。

「ふ~ん、まるで可愛らしい児童向けの小説の内容にも思えてとても愉快だねぇ」
「ま、魔法を使えるイヴが……言うんだ」
「へへ~、私はこう見えても案外現実主義者リアリストなんだ……ところで、シルヴィアちゃん。キミの封筒にはもう1枚手紙が同封されているけれど、何だい?」
 シルヴィアはそう〈美少女〉に問われるまで、もう1枚の手紙の事など気付きもしなかった。
 あたふたと手を動かしながら、3枚目の手紙を開いて見る。友人のイヴリンには無い、3枚目の手紙。独りぼっちを恐れ、多数の中に埋もれる事を求めるシルヴィアにとって由々しき事態である。
 
 シルヴィア・ベルグワード様
 拝啓
 同封いたしました入学許可証にてお知らせの通り、貴女は本年9月1日よりホグワーツ魔法魔術学校に入学する資格を有しております。これに関連し、貴女に重要なお知らせがございます。
 故ヘンリー・ロスワード氏ならびに故オフィーリア・ロスワード夫人の名義にて管理されていた資産につきまして、法的手続きを経て、貴女が正当な相続人であることが確認されました。
 当該資産のうち、グリンゴッツ魔法銀行の金庫に関する鍵は、安全管理の観点から当校にて一時的に保管されております。
 つきましては、当校より職員一名を貴女のもとへ派遣し、当該鍵の引き渡しおよび必要事項の説明を行わせていただきます。

「な、なるほど……?」
 シルヴィアにとってはヘンリー・ロスワード、それにオフィーリア・ロスワードという名前に一切の合点がいっていないようだった。一方、〈美少女〉は何処か真剣な表情で手紙を眺めていた。

 訪問予定の職員は、セブルス・スネイプ教授(魔法薬学担当)です。
 スネイプ教授は、7月6日午前10時頃に貴女の居住地を訪問する予定となっております。ご都合に問題がある場合は、同封の返送用ふくろうにて速やかにご連絡ください。
 なお、本件は入学に先立つ重要な手続きではありますが、学業上の義務とは直接関係ございません。とはいえ、入学準備に必要な資金管理の観点からも、早期の対応を推奨いたします。
 本校は貴女の入学を心より歓迎いたします。
 敬具
 副校長ミネルバ・マクゴナガル

「へぇ……こいつがくるんだ」
「知ってるの?」
「知ってるも何も、ホグワーツ教授っていう職業に就く魔法使いは英国魔法界と言う特性上、それだけで有名人なんだよ」
「ど、どんな……人、なの?」
 シルヴィアが恐る恐る聞く。
 いつだってシルヴィアは、この世に存在する全てを恐れているが、特に素性の知れない誰かと会う事については恐怖心を抱かずにはいられなかった。人間と言うのは誰だってそうだ。闇を恐れ、見知らぬ者を恐れ、未来を恐れる。
 どれだけ知っている事が増えても人間は、常に何かに恐怖を抱いている。そうやって、人間は一歩一歩着実に進化の歩みを進めて来た。

「安心して。噛みつきはしないよ。少なくとも、私の前ではね」
 その言葉にシルヴィアは目を見開いて、〈美少女〉を凝視した。ホグワーツ教授という者は人外で、人を嚙み殺す者すら存在するのか、と疑い始めたのである。
 一応念のために補足しておくが、この1000年近いホグワーツの歴史の中で人を嚙み殺したホグワーツ教授は今のところ居ない、そう記録上はなっている。
 もし、居たとしたら恐らく何かしらの狂気に蝕まれていたのだろう。ただ、記録は日々編み込まれ続けるので、明日起こる可能性もあり得ない事ではない。

「ただまあ……性根は少々発酵しているし、大人としての完成度は悲しいくらい低い。教師という肩書きが泣いてるかも……でも大丈夫。キミが怯えるほどの価値はないよ」そしてまた、いつもの調子で笑う。
「もし万が一、キミに無礼を働いたら――その時は、少しだけ退場してもらうだけ」
 まるで舞台の幕引きを語るみたいに、軽やかな声音だった。
 ただ、人の評判と考えるとあまりにも抽象的な言い方である。シルヴィアは結局、来客について具体的なイメージを一切持てずに待つ羽目になったのだ。
 不安げに自身の飼いフクロウである大体19インチ(約50cm)のオリビアの方を見る。元郵便フクロウの彼女は魔法界の事情やホグワーツの事情についてそれなりに知識がある。
 但し、その知識は人間目線では無くフクロウ目線であるが為、その情報の正確性は誰も保証出来ない訳だが……

「あまり、アカルイ話は出来ないわね。今から来るのは〝セイカクも見た目も最悪な奴〟なのよ」
「なんだか、酷い謂れを持っている人……だね、こう。何か悪い事をしたの?」
「ワルイ事も何も、彼は死喰デスイ――「ところで、キミ達って不思議だよね。どうして、動物と魔法使いが会話できるのかい? 私は一度もそのような例は聞いた事が無いよ?」
 何やら、オリビアが重大情報を言う前に〈美少女〉によって話を遮られてしまった。仕方がない話だろう。だって、オリビアの言葉はシルヴィアにしか聞こえていないようだし、何度試しても〈美少女〉はオリビアの言葉は理解出来なかった。

「う~ん、分からない、んだよね。突然、オリビアがやって来て、突然話せるようになったから……
「ふむ、なるほど……けど、2人が羨ましいよ。私もシャーデン卿と話せたらなぁ~」
 シャーデン卿、それは〈美少女〉が飼っている黒猫の略称。フルネームはシャーデンフロイデ卿らしい。
 シルヴィアは知らないが、ドイツ語で他者の不幸や失敗を喜ぶ感情を指す言葉である。
 当初、〈美少女〉は量子力学者の名前を付けよう画策したが、どうも呼ぶときの口の形が気に入らない、音の響きが違う。など御託を並べて、〝シャーデンフロイデ〟になったらしい。
 因みに、そのシャーデン卿自体は自分の名前を非常に不服に思っており、出来れば変えてほしいと切に願っている。
 しかし、人間と猫。そこには種族という大きく一生埋まる事の無い差が存在していて、シャーデン卿の願いは永遠に叶えられる事は無い。

「そういえば……今日はシャーデン卿、見ないけど……何処に行ったの?」
「さぁ……森の奥にでもネズミ捕りに行ったんじゃない?」
「そっかぁ~」

 1991年7月1日はのんびりと進んでいく。