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kaisou
2026-04-22 23:09:29
4618文字
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私の記憶を離れないものがある
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Aliquid est quod memoria mea non relinquit. 最終章
Aliquid est quod memoria mea non relinquit. 私の記憶を離れないものがある
1740年コンクラーヴェ話。本篇その2
最終章
視点違いの2つの話のうちの1つ。長いので連載にします。
すべては、十分だった。
※歴史創作なので悪しからず
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コシアがローマを去り、幾多の歳月が流れた、ある日のこと。 特別なきっかけも、感傷を誘うような理由もない。ただ、ある朝。書きかけの文書の白い余白に、ふと視線を落とした、その刹那だった。
——
忘れなかった。
浮かんできた言葉は、それだけだった。 誰の声でもない。何かの引用でもない。なのに、数年前の薄暗い部屋で対峙した情景が、昨日のことのように鮮烈に蘇った。あの日、コシアの口から発せられたものと、重なる語句は少なかったはずだ。その言葉が内包する意味の質量だけは、岩のように一分も揺らがなかった。胸の奥底で、長い年月、堅牢に固定されていた何かが、古びた扉のように軋む音を立てる。 それは崩壊ではない。ただ、魂の重心が、微かに、決定的にずれただけだ。それ以上でも、それ以下でもない。
ランベルティーニは、筆を止めなかった。 去った者の名を辿ることも、感傷に身を浸すことも、教皇としての矜持が拒んでいた。ただ、その言葉を脳裏に浮かべたまま、淡々と、感情を排して作業を続けた。オルシーニが遺し、コシアが守り抜いた基準は、今も確かにここにある。
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