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ここ
2026-04-22 18:37:34
19484文字
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小説
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【リバリン】リーバルの結婚🔞
<2025.8.31初出> リーバルの言葉も足りないがリンクの察しが悪すぎる故に拗れているリバリン
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【⚠️18歳以上のみ閲覧可】
その日、リンクは訪れていたリーバルの部屋で一冊の手帳を見つけた。
見つけたと言っても、別に家捜しをしたわけではない。その手帳はリーバルの家のベッドのすぐ近くのサイドテーブルに開かれた状態で置いてあったのだ。そういったものをリーバルが出しっぱなしにすることは珍しく、リンクがつい興味を引かれてしまったのも致し方ないことではあった。リンクは内心悪いなと思いながら、ちょっとした好奇心でそれを読んでしまった。
「
……
結婚、について
……
?」
目に飛び込んできた予想外の言葉が、思わず口からこぼれ落ちる。
やや神経質そうな細い字で書かれていた内容は、結婚の準備に関するものだった。そしてそれは、どのように解釈してもリーバル自身の結婚についてとしか思えないものだった。開かれていたページの内容を一通り読み終えそれを理解したリンクは、大層驚いた。
というのも、リンクはリーバルと身体の関係があったからだ。
身体の関係がある、というのは、裏を返せばそれ以上の関係ではないということだった。リーバルとこのような関係になったきっかけははっきりとは覚えていない。しかしそれが厄災に対する戦いの最中で、リーバルから誘われたのだということはなんとなく覚えている。あの頃誰もが抱えていた緊張や不安だとか、度重なる魔物との戦闘による興奮だとか、若気の至りだとか、他にもうまく言葉に表せないあれこれが複雑に絡まった結果、このような関係になったのだと思っている。英傑として共に過ごす時間が長かったことも、リーバルがリンクを手頃な相手と選ぶのに都合が良かったのかもしれない。もちろんそれはリーバルに無理強いされたというわけではなく、リンクも納得の上での関係だった。模範たれと自分を律して生き続けてきたリンクにもやりきれない思いが湧き上がることがある。その全てを言葉に言い表さずとも、激情を吐き出しぶつける場所は確かにリンクにも必要だったのだ。とはいえリーバルから始まったこの関係は、きっと厄災との戦いが終わるのと同時に切れてなくなるのだろうとリンクは思っていた。
しかしそんなリンクの予想に反し、皆の力で見事に厄災に打ち勝ち、深かった戦争の傷跡が徐々に癒え始めてもリーバルとの関係は切れることがなかった。厄災討伐から数年経って平和な世と言っても差し支えないだろうというくらいに世の中が落ち着き、リーバルはリトの村で、リンクはハイラル城で過ごす時間がほとんどになっても、リンクとリーバルはそれほど期間を空けずに逢瀬を繰り返していた。二人きりで会ってする事を済ませ、別れるたびに次はいつ会えそうだというおおまかな約束を交わすのが流れとして出来上がっていたからだ。リンクの方もただ何となくそのうちこの関係は終わるのだろうなと思っていただけで、別に積極的に終わらせたいと思っていたわけではない。気持ち良いことは嫌いではないし、正直なところリーバルと身体の相性も良かったので、この関係が続くこと自体に問題はなかった。
リーバルが中央ハイラルを訪れることもあるが、リンクの住まいは城の中に与えられた一室だ。もちろん個室とはいえ、城内には常に人の気配がある。諸々のことを考えると、リンクとリーバルが会うのは必然的にリトの村の端にある、リーバルの家であることがほとんどになっていた。そうなるとリーバルの家にはリーバル一人の時には必要ないベッドが置かれるようになり、リンクのちょっとした私物も置かれるようになり。リンクにとってリーバルと過ごす時間はますます心地よいものになっていた。そんなわけでリンクは今日もリーバルに会いに、あからさまにいうとリーバルに抱かれるためにリーバルの家を訪れていたところだったと言うわけなのだ。
—
-
「リーバル、結婚するの?」
リンクは衝撃のあまり自分が手帳を盗み見たという事実をすっかり忘れ、戻ってきたリーバルにすぐさまそう尋ねた。リーバルはリンクが家を訪れてすぐに食料を取ってくると言って席を外していたのだ。
「
……
は?」
リンクの不躾な質問に、リーバルが一瞬固まる。見開かれた目がサッと机の上に開かれたままの手帳に走り、瞬時に状況を理解したらしいリーバルは目を釣り上げて「勝手に読んだな!」と叫んだ。リーバルが両腕に抱えていたもの──マックスサーモンや山羊のバターやタバンタ小麦、イチゴなどの山盛りの食材──をボトボトと足元に落として激昂する様子を眺めながら、リンクはどこか現実逃避するように「明日の朝ごはんはマックスサーモンムニエルとデザートのイチゴかな」などと考えていた。ちゃんと伝えたかっただのなんだのとギャンギャン吠えるリーバルに口ではごめんと謝りながらも、リンクの頭の中央には『リーバルの結婚』という強烈な言葉がデデンと大きな広告塔のように居座っていて、耳に入ってくる言葉を処理する余力がない。リーバルの吐き出す文句の湿度がだんだんとネチネチしたものになり、言っている言葉も「他人事」だの「自覚が」だの小言めいてくるが、それも強固に居座る言葉の横をするすると素通りし耳から耳へと抜けていく。リンクの頭の中は、チカチカと激しい自己主張をする『リーバルの結婚』について事実確認をしたい気持ちでいっぱいだった。
「ちょっと、ちゃんと聞いているんだよね!?」
「うん」
全然ちゃんと聞いてない。しかし一通り言いたいことを吐き切ったらしくフーッ、フーッと息を弾ませているリーバルにおざなりに答えたリンクは、リーバルが新たな文句を紡ぎ出す前に再度「結婚するの?」と尋ねた。
「ああ」
リーバルはまだ腹の虫が収まらない様子ではあったが、リンクの問いをあっさりと肯定した。
「英傑としての役目は全うしたしね。世の中も落ち着いてきたし、次は少しくらい人並みに自分たちのことを考えてもいいだろう? 何か文句がある?」
「ううん」
リンクがフルフルと首を振るのを見て、リーバルは「だよねぇ」と得意げに鼻を鳴らした。そしてやっと足元に散乱してしまった食材たちの惨状に気づいたらしく、まったく
……
とブツクサ言いながらそれらの食材を手早く片付け始めるのをリンクはぼんやりとを眺めていた。
そうか。リーバルは結婚するのか。確かに平和になった世間では慶事も増えてきたのをリンクも感じていたし、それは喜ばしいことだ。しかしリーバルがその当事者になるということについては、これまで考えたこともなかった。リーバルとはそれなりに長い付き合いだし、何と言ってもこうやって月に数度は会って肌を重ねる仲なのだ。それなのに、リーバルに結婚を考えるような相手がいることすらまったく察知していなかった。唐突に知ってしまったそれがショックなのかなんなのか、リンクの頭の中は回路が麻痺してしまったように思考が鈍くなる。
リーバルは手伝いもせずにぼーっとベッドの上に腰掛けたままのリンクを見て一瞬物言いたげな顔をしたが、結局は何も言わずに一人で片付けをやりきった。そして明日の朝食の下ごしらえらしきものを黙々と済ませた後、いそいそとリンクの座っているベッドまでやって来て、これまでと同じように、つまり当然のようにリンクをベッドに押し倒した。
「え?」
「
……
え?」
まさかそう来るとは思わなくて、ボフッとベッドに押し倒された拍子に口から間抜けな声が漏れる。そんなリンクの様子につられたように、リーバルも同じような声を出して固まった。見つめ合うこと数秒、リンクがやや驚きながら「するの?」と尋ねるとリーバルが出鼻を挫かれたように「なんだよ、そのつもりで来たんじゃないのか?」と聞き返してくる。
「それは、そうだけど」
そりゃリンクだって、そういうつもりでリーバルの家を訪れていた。リーバルの手帳を覗き見てしまうまでは。リーバルが結婚を控えているのだと、本人の口から告げられるまでは確かにそのつもりだった。でもリーバルが誰かと結婚することを決めているのであれば、たとえ身体だけの関係であったとしてもリンクとこういった行為をするのは良くないことなのではないか。そう思うのに、リーバルの翡翠色の瞳にじっと見つめられると口から言葉が出てこない。
「ならいいでしょ」
リーバルはリンクの口にした答えに目を細めると、もう黙れと言わんばかりに大きな嘴でリンクの唇を塞いだ。そのままリーバルの大きな舌がリンクの口いっぱいに忍び込み、ビクッと驚いたリンクの舌をぬるりと絡め取る。そうなってしまうと、そこから先はもうなし崩しだった。ぬるぬるとよく動く舌に口蓋を舐められ、腰のあたりがジンと痺れる。リンクの身体はリーバルに散々抱かれたせいで、リンクの意思に関係なくこれから与えられる快楽に期待するようにみるみると熱を灯した。そして自分でもよくわからないモヤモヤを抱えている心とは裏腹に、リンクの身体はリンクの身体を熟知しているリーバルの手管によってぐずぐずと溶かされていき、あっという間に何も考えることができなくなっていった。
—
-
互いの身体を夢中で貪り尽くした後、リーバルとリンクは体液で汚れた身体を簡単に清めてベッドの中で寄り添い合っていた。
こういう関係になった当初は、それこそ生き急ぐかのように時間が許す限り行為に耽り、終わった後は用は済んだとばかりに別れることが常だった。しかし厄災との戦いを終えて互いに時間的にも精神的にも余裕が生まれてきたからであろうか。関係が長く続くにつれていつの間にか、リーバルとは行為の後もこのように一緒に過ごすことが増えていた。そして、激しく情を交わし合うのと同じくらい、リンクはこの穏やかな時間が好きだった。
しかし、今のリンクはその幸せな時間を楽しむ気持ちにはなれそうになかった。我ながら現金なもので行為の間は頭から追いやられていたというのに、興奮が引いてくるのに比例するように頭の中が先ほど見た手帳の中身で再びいっぱいになったのだ。リーバルは汗で束になったリンクの髪を嘴で弄びながら瞼を重そうにしている。リンクはそんなリーバルに向けるともなしに「結婚、するんだ」と呟いた。
「そうだよ」
聞こえなくてもいいと思いながら小さく呟いたリンクの声を聞き漏らさなかったらしいリーバルが、半分目を閉じたまま答えた。耳の近くにあたる吐息がくすぐったいが、頭をずらす気にはなれなかった。リーバルの嘴の感触を感じながら、重ねて問いかける。
「みんなには言うの?」
「言わない。二人だけでいいんだ。結婚した後で、タイミングを見て族長や姫たちには報告するから」
「そっか」
眠そうな声色ではあるが淀みないリーバルの答えを聞いて、リンクは(じゃあ俺が盗み見みたいな形でリーバルの結婚を知ってしまったことは、リーバルにとってはさぞ不本意だっただろうな)と思った。リーバルがあれだけ怒ったのもそういう理由だったのかと納得がいったし、悪いことをしたなとも思う。しかし、仮にもこういった行為をする関係であるのに、ある日突然リーバルから「結婚した」と報告されるかもしれなかったリンクの気持ちも少しは考えて欲しい。そんな風に恨めしい気持ちが湧き上がったところで、リンクはすぐに思い直した。
(身体だけの関係でしかないのに、何を図々しいことを言っているんだろう。)
リーバルがリンクを行為の相手に選んだのは、結局のところそういった気遣いが必要ないと考えたからだろう。身体も頑丈で、無口なゆえに口も固くて、気を遣わなくて良い。リンクがそんな都合の良い相手だからこそ、こんなふうに関係が続いてきているのだ。リンクだって同じように都合よくリーバルを利用してきたのだからそれに文句を言う資格もないし、もしリンクがそんなことを言いでもしたらリーバルはアッサリとリンクとの関係を切るだろうなということは想像に難くなかった。リンクとリーバルがこういった関係を結んでいることは厄災に共に立ち向かった盟友とも言える英傑たちにすら知られていないのだから、ひっそりと続いてきた関係をひっそりと断ち切ることは酷く簡単に違いない。
(でも
……
それは、嫌だな。)
胸の内に自然と湧き上がった自分の感情を認識した途端、リンクは先ほどまでリーバルに高められ火照っていていた身体の芯が急激に冷えていくように感じた。リーバルにリンクの気持ちを蔑ろにされるのが辛い。けれど、それに文句を言って関係が終わってしまうのも辛い。最初から気持ちが伴わない、身体だけの関係だった。リンクもそれに納得していたはずだ。それなのにリーバルが結婚すると知った今になってリーバルの心まで求めるのはあまりにも欲張りがすぎる。頭ではそう思うのに、心の中は悲しみが占める。
(俺、リーバルのことが好きになっていたんだ
……
。)
恋心に気づくのと失恋が同時だなんて、本当になんて自分は間抜けなのだろう。最近はめっきりなくなったが、出会った頃のリーバルにも散々案山子だのなんだのと馬鹿にされたっけ。こんな間抜けな奴を好きになってくれるわけがないか。そんな自嘲的な思いにつられて口の端が歪む。
「リンク?」
自分から話しかけておきながら途中でぷつりと黙り込んでしまったリンクの様子をおかしいと思ったのだろう。ウトウトと目を閉じかけていたリーバルがこちらを覗き込む気配を感じた。リンクはリーバルの視線から逃げるように、眠気に耐えられないふりをしてリーバルの胸に顔を埋めた。リーバルの気持ちがリンクに向いていなくても、リーバルの腕の中は温かかった。まだ、この腕の中にいてもいいはずだ。リーバルがリーバルの好きになった誰かと結婚するまでは。結婚したリーバルに「お前はもういらない」と言われるまでは。
(あと何回、俺はこうしていられるんだろう?)
もしかすると今日が最後かもしれない。リンクはそんなことを考えつつも、羽毛が湿ってリーバルに不審に思われないように涙を堪えた。そのままじっと寝たふりをしていると、リーバルもやがて眠りに落ちたようだった。頭の上からスゥスゥと静かな寝息が聞こえてくる。
「
……
好きだよ、リーバル」
初めて口にした囁きのように小さな言葉は、眠るリーバルには届かずに目の前の羽毛に吸い込まれて不明瞭に消えていった。ああ、ちゃんと言いたかったな。たとえ叶わない思いだとしても、伝えることが許されるうちに伝えたかった。そんな後悔がリンクの胸の内に渦巻く。
身体は確かにリーバルの翼に包まれて温かいのに、リンクの心の中はヘブラ山の吹雪の中にいるかのように凍えていた。
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