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【7/19更新】シャアム短編まとめ

シャアム




シャアムワンドロお題「好きな色」
スパロボ時空



「アムロには、白が似合う。」

シャアの台詞にプルが振り返る。
その後ろのアムロ本人も、サングラス越しに視線を寄越すシャアを見返した。

「ふーん、じゃあアムロの好きな色って白なの?」

無邪気な瞳をくるくるさせてそう尋ねるプルの手には『お友達たくさん⭐︎プロフィール帳』と書かれたノートが握られている。


十分ほど前の事だ。昼休憩時間を人気の無い相談室でひっそりと過ごしていたアムロは、プルの襲撃を受けた。

「あっ!ねぇ!アムロもプロフィール、教えてよ!まだまだたくさん、集めたいんだぁ!」

可愛らしいお願いをしてくる少女の手には如何にも女子が好みそうな『友達ノート』なるものが握られていて、瞬間アムロは遠い昔を思い出した。
まだ何も知らない子供時代に、フラウが同じような物を手にアムロの事を根掘り葉掘り聞いてきて最終的に喧嘩になってしまった、そんな淡い思い出だ。これから聞かれる事を粗方予想した彼は、缶コーヒーをテーブルに置きソファに座り直してプルに向き合う。

「何が聞きたいんだい。」

インタビューの構えを取った彼にパッと明るい笑顔を見せたプルは、向かいのソファへと身軽に腰掛け真剣な表情を作った。

「あのね、誕生日は?」
「63年11月4日。」
「血液型は?」
「AB型だ、」
「身長と、体重は?」
172cmの、体重は最近計っていないな。」

カチカチっとボールペンを構えてまるで記者の気分でノートを埋めるプルは、時たま無い眼鏡を押し上げる仕草までしている。
その微笑ましい様子にアムロは笑いを堪える。手元のノートは終盤近くまでページが進んでいて、プルがかなり力を入れて『お友達データ』を集めているのが伺えた。この戦艦にはプルに近い年齢の子も多い。それはつまり、子供が戦う事が多いというのを意味するけれど。

「じゃあ、今スキな人が居る?」
「ン?ノーコメントにさせて貰えるかな。」
「そしたら、告白した事がある?」
「すまないが、ノーコメントで。」
「え〜、ならなら、告白された事は?」
……。」

子供の書くノートじゃないのか?
そう思ったアムロはこっそりとプルの手元を伺う。そこには確かに、同じ質問が記されていた。
——最近の子供って、ませてるんだな

「もぅ〜!!つまんない!アムロってヒミツばっかり!」

沈黙を拒否と受け取ったプルがむくれて頬を膨らませる。

「それなら、好きな色は?」
「好きな色は、」
——特に無いかな。

そう答えようとした折に、入り口の影からシャアが入ってきて冒頭のやり取りとなったのだ。
質問に勝手に答えられた形となったアムロは、少しだけ気分を害して張った声を出す。

「別に好きな色が白って訳じゃ無い。たまたま、そういう巡り合わせが多くて、そんなイメージが付いているだけだ。」
「えー!じゃあ、アムロは白が好きで着てるんじゃないの!意外!」
「ああ。」

やり取りを尻目に、シャアがサングラスを外しながらアムロの横に腰掛ける。
——隣に座るなよ

「じゃあじゃあ!シャアさんにも質問!誕生日はー!?」
「59年の11月17日だ。」

そのまま始まってしまったインタビューに退室するタイミングを失ってしまったアムロは、手持ち無沙汰に缶コーヒーを揺らした。
シャアと顔が合わせ辛い。つい数日前、彼とトラブルを起こしてしまったからだ。所謂酔った勢いの下らないトラブル。
なんて事無い、お互い大人だし、男だ。犬に噛まれたと思って水に流すんだ。
そう合意して「気にせず過ごす」には二人の生活圏は近い。知らず、避けていた男と鉢合わせてしまったアムロは服の下でじっとりした汗をかいていた。

「じゃあ、今スキな人は居る?」
「居るのだが、避けられていてね。」
「きゃー!そうなんだ!じゃあ、その人に告白するの!?」
「ああ、近いうちにな。」
「わー!凄い!ニュースかも!シャアさんの事がスキだって人も沢山居たからあっ。」

これって秘密だった!と両手で口を塞ぐプルだったが、真下を向いていたアムロは気付かなかった。
ソファの下、プルから見えない所でシャアの掌がアムロの手を握っていて、それどころでは無かったからだ。
彼は、手首の太い血管を通してシャアに心臓の鼓動がバレてしまうのではないかと怖くなる程、動悸が激しくなっていた。

「ええ〜っと、じゃ!好きな色はやっぱり、」

長くて節のしっかりした男の指が、アムロの指の造りを確かめるみたいにゆっくりと撫でる。
そのまま、指の股同士を擦り付けるみたいに握り込まれた。
限界だ。

「赤!シャアは赤だろう。昔から赤ばかりの男だからな、貴方は。質問は終わりかい。すまないが、別件が有る。前を通してくれないか。」

突然すくっと立ち上がったアムロに、プルが少々面食らう。驚いた少女の代わりに、シャアが身を避けた。

「そうか、残念だ。ではアムロ、また”明日”。」

サングラスをかけながらそう言うシャアに何も返さず、急いだ様子の彼は相談室から去っていってしまった。

「アムロ、お腹でも痛かったのかな。大丈夫かな。」
……いや、単に用事だろう。心配要らないさ。」

純粋な労りの心を安心させるようにシャアが微笑み、プルはそれに混じり気のない笑顔を返す。
——この子は少し素直過ぎるな。
その何の疑いも持たない様子に、シャアは幼い頃の妹を思い出していた。ダシにしてしまった形になった少女へ、少しだけ申し訳なさと言う物が湧いてくる。

「じゃあ、シャアさんの好きな色は赤ね!」
「いや、嫌いでは無いが、好きと言うよりは実用性を重んじたパーソナルカラーに近いな。」
「え、ええー!?びっくり!」

その申し訳無さに免じて少しの本音を教えたシャアは、驚く少女に挨拶を残し、相談室を後にした。「また明日」と言われ油断し切った背中を晒しているだろう獲物を追って。


その後、完成した『お友達たくさん⭐︎プロフィール帳』は艦内の女子たちに回し読みされた。
その中でもシャアのページに書かれた「好きな色:白」と、アムロの方に書かれた「好きな色:赤」の意外性とインパクトは、噂好きの少女たちの好奇心を爆発させる事となったのだが
それはまた別の話。


おわり