🍱
13389文字
Public pixiv未アップ
 

【7/19更新】シャアム短編まとめ

シャアム



お題「サイズ違い」

ギュネイ・ガスはシャア総帥の側近である。
彼の護衛として常に近くに侍り、時に身の回りの雑用をこなす事もあった。
最近は和平に向けた連邦との会談続きで特に忙しい彼の代わりに、執務室に食事を運んだり郵便物の確認をしたりしている。
その日、彼はスイートウォーターの片隅にひっそりと佇むテーラーに足を運んでいた。

「ギュネイ、今日は研究所で調整の予定だったな。帰りにこの店で荷物を取って来て欲しい。」

そう言われ簡素な地図を頼りに来た店の店主は非常に無口で、ギュネイの顔を見た途端カウンターの奥から紙袋を一つ取り出し突き出したかと思うと、一言も発さずに裏口へ引っ込んでいってしまった。

——なんだ、無愛想な奴だな。

ギュネイ自身も決して愛想の良い方では無い事を棚に上げ、そう思いながら袋の中を覗く。
中にはシンプルなシャツとズボンが一式入っていた。
総帥の執務室には彼の軍服や礼服の類が用意されているが、その中に一式だけ私服が掛かっている事をギュネイは知っている。
お忍びで出かける時にでも使う予定なのだろうそれは、彼がネオジオンに入隊した時から掛かっていた。

——あんなに忙しくちゃ、使う機会なんて無いだろうに。ちょくちょく新調されてたのは、あの店で仕立てていたからだったのか。

ギュネイはそう思い、何となしにそのシャツを広げた。

——

途端手の中に違和感が広がった。
小さいのだ。
総帥は背丈も身体の幅も恵まれていて、一言で言えば大柄な方だ。しかし手の中のシャツはどう見ても一回りほど小さく、総帥が着られるようなサイズではない。

——なんだ?サイズを間違えたのか?

そう思い袋の中のカードを確認するが、そこには間違いなく彼の名が刻まれている。それに、あんな専門店の店主が顧客のサイズを取り違えるだろうか。
疑問に思いながらもただのお使いの身で有るギュネイは帰路につき、シャツとズボンをクローゼットにしまったのだった。

それが、3ヶ月前の事。

「ギュネイ、急ですまないが今日は一日護衛は必要ない。」

総帥はいつになく上機嫌でそう言った。
ギュネイは急な話に目を瞬かせながらも、降って湧いた休暇に胸をときめかせる。

——それにしても、何だって急に。

そう思った瞬間、総帥の身体の陰から何者かが顔を出した。アムロ・レイだ。
一瞬ぎょっとしたギュネイであったが、そういえば、交換留学という名目でロンドベル隊から派遣されていたのだったと思い出す。
紆余曲折の末結ばれた和平の下「市民に平和を印象付けるには戦争の象徴たるモビルスーツ隊の交流が必要不可欠である」と猛烈に推し続けた総帥の意見が、1週間前遂に通ったのだ。

——これが本物のアムロレイか。思った程強そうじゃないな。

失礼にならない様目礼だけしたギュネイだったが、彼の格好に既視感を抱いた。
コッソリ目線を上げると、質素なシャツとズボンに身を包んだアムロが目に映る。

「あっ。」
「ン、どうした。ギュネイ・ガス。」
いえ、何でもありません。」

そう答えたギュネイだったが、内心かなり驚いていた。アムロが身にまとっている服が、いつかギュネイが受け取ったオーダーメイド品で間違いなかったからだ。
サイズを指定され仕立てられたそれは、アムロの身体にこれ以上ない程フィットして見える。

「次の出勤は明日の朝でかまわん。今日はご苦労だったな。」
「はっ!失礼します!」

短くそう答え執務室を去るギュネイは、ぼんやりと疑問を持った。

——あれは、アムロ・レイの為に仕立てられた物だったのか?まさかな。

アムロはジオンの仇敵だ。浮かんだ馬鹿らしい考えを即座に否定し、突発的なバカンスの予定に心躍らせる。

——クェスに連絡してみよう。今日は機嫌が良いからら、あのハサウェイって奴がついてきたって構わない。新しく出来たカフェに連れていってやるんだ。

スキップが出そうな足取りで、ギュネイは上等な絨毯の上を帰っていった。


おわり