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由崎
2026-03-05 20:44:52
13400文字
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(未完)朝起きたら俺以外の国が全部女だった
右🏴固定
🏴以外ほぼ女です
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「え、えっと
……
つまり、あちらに居るイギ
……
イングランドさんは別人ってことですか?」
書類を胸に抱えたままのハワードが、現実を飲み込めないように視線を泳がせる。
そっと横へ目を向けると、ソファにはイングランド。
別の世界から来た本人が座っていた。
スコットランドは重たく息を吐き、腕を組む。
「そうだ。こいつは私たちの知ってるイングランドじゃない。別の世界のイングランドだ」
ハワードのまばたきが、ゆっくり二回落ちる。
理解ではなく、理解を拒んだ脳が固まっているような沈黙だった。
今朝、突然「イングランドが倒れた」と上司の姉君、スコットランドから連絡が入った。
七月でもないのにどうしたのかと首をひねりながら、今日中に必要な手続きを抱えて屋敷へ来た。
そこで見たのは元気そうなイングランドとその姉君たち。
そして、妖精によるチェンジリングで本人が別の世界へ行ってしまったという説明。
ハワードは、その情報量に押しつぶされそうになった。
ソファに座る上司は、どう見てもイングランドさんだ。
不機嫌そうな眉も、頬の角度も、こちらを見る目つきも、仕事が嫌いなときの沈黙すらも。
まるでいつも通りの姿で、そこに座っている。
別人
……
?
考えようとしても、頭のほうが逃げる。
思考の手前で霧が立ちこめて、言葉にならない。
「
……
じゃあ、イングランドさんは
……
いったいどこに?」
かすれた問いに、ウェールズが真剣な面持ちで頷く。
「昨日は満月だったの。妖精の魔力が一番強い日だから、次の満月までは帰られないの」
部屋の空気が、しん、と沈んだ。
ハワードはゆっくりと息を吸い、小さく呟いた。
「
……
は、はぁ
……
?」
それは理解を諦めた声だった。
「それでね、会議日までにこのイングに、この世界の情勢いろいろ教えてやってね〜」
北アイルランドが、まるで天気の話でもするみたいにあっさり告げる。
ハワードが再び固まる横でイングランドは眉間に深くシワを寄せ、ムスッと北アイルランドたちをにらんだ。
「
……
そもそも俺たち連合王国だろ。こっちの世界について知らない俺より、スコットとノースとウェールズがやった方がスムーズだろ」
言っていることは正論だった。
それなのに、三人はどこか曖昧な表情をしていた。
「そうなんだけどねぇ
…
いーくんがやったほうがいいよね」
ウェールズがぽつりと呟き、スコットランドも腕を組んだまま小さく頷く。
イングランドは眉をひそめた。
「なんでだよ」
兄上
…
いや、姉上たちの反応とは違う。
言葉を濁す三人の態度が妙に引っかかり、イングランドはさらに困惑する。
そんな空気の中で、ハワードは立場上逃げられず、そっと背筋を伸ばした。
覚悟を決めた顔だった。
「
…
分かりました、イングランドさんに会議日まで必要な説明をいたします」
その声音には丁寧さと職務感があったが、内心は静かに遠い目をしていた。
その後、姉と言っても相手は女性である以上、同じ屋根の下で生活するのは嫌だとイングランドがはっきり拒否したため、ハワードは本人の希望に従い、一ヶ月分のホテルを手配した。
この世界のイングランドの服を借りるのも気まずいと渋ったので、必要な身の回りのもの、服や日用品もまとめてハワードが用意している。
そして今。
ハワードの運転する車の助手席に、別世界のイングランドが腰を下ろしていた。
流れる街並みにぼんやり目を向けていたイングランドが、ふいに呟くように口を開く。
「なぁ、ハワード、気になってたんだけど、その
……
俺、ひとり暮らし用のフラットは無いのか?」
声は小さいが、戸惑いと不思議さが入り混じっている。
イングランドの元いた世界では、兄上たちとのシェアハウスのほか、ロンドンのフラットや複数の別宅を所有していた。
この世界に飛ばされた時も当然のように、そのフラットで生活するつもりでいた。
ハワードが「ホテルを手配します」と言った時も、深く考えずに受け入れてしまったが、今になって胸の奥に引っかかりが残ったままだ。
助手席からハワードに視線を向けると、ハワードは穏やかに答えた。
「イギリスさんには平日に寝泊まりされるロンドンのフラットと、いくつかの別宅があります」
イングランドの疑問はさらに深まった。
「だったらロンドンのフラットで良いんじゃねえか?」
その素朴な提案に、ハワードはあからさまに曖昧な声で応じる。
「
……
アポ無しでやって来られる方もいらっしゃいますので、ホテルのほうが間違いなく他の国々と鉢合わせる可能性がありません」
その一言で、イングランドはようやく腑に落ちたように息をついた。
「ああ、そうか」
それは、よく知っている状況だった。
元いた世界でも、アメリカを始めとした元弟たちがアポ無しで押しかけてくることは日常茶飯事だったし、隣国のクソ髭に至っては手製の菓子を持って訪ねてくることすらあった。
世界が違っても、あまり変わらないのかもしれない。
……
さっきスコットとノースが言ってたよな、俺以外の元英領はほぼ女って言ってたよな。
アポ無しでやって来る元弟たちが、いや、元妹か
……
?
なるほど。
会ったらどんな顔すりゃいいんだ俺は
…
胸の奥がじわっと冷える。兄上達が姉上だった時点で十分に精神にきているのに、元弟たちまで女だった場合という想像は、想像以上にきつい。
何をどう受け止めればいいのか、心が拒否してくる。
イングランドはシートにもたれ、ため息を飲み込んだ。
ホテルのロビーは静かで、外の喧騒が嘘のように遠かった。
チェックインを済ませたあと、ハワードが姿勢を正して言う。
「ではイギリスさん、明日、職場の案内をいたします、生活に必要なものはすべて部屋に入れてありますので」
イングランドはわずかに頷いた。
疲れが顔に陰を落としているのは自分でも分かる。ハワードは控えめに微笑んだ。
「
……
今日はゆっくりお休みください、良い夢を」
エレベーターの扉が閉まると、イングランドは思わず壁にもたれた。
一日で色々ありすぎた。
頭が現実をまとめる前に、体のほうが先に悲鳴を上げている。
部屋のドアを開けると、ふわりと新しいシーツの匂いが迎えてきた。
スーツケースの代わりに、ハワードが用意した紙袋や衣類がきちんと並べられている。
「気ぃ遣わせたな」
ぽつりと呟く。
誰に聞かせるでもない小さな声。
服を脱ぎ、シャワーを浴びる。
熱い湯が肩に落ちた瞬間、強張っていた筋肉がほどけていく。
鏡に映る顔は慣れない世界で張りつめていたせいか、どこかやつれて見えた。
タオルを巻いたままベッドに倒れ込む。
明日のことも、元の世界のことも、戻る方法さえ、全部を考えようとしたが思考よりも眠気のほうが先に沈んでゆく。
イングランドはゆっくりとまぶたを閉じていった。
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