由崎
2026-03-05 20:44:52
13400文字
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(未完)朝起きたら俺以外の国が全部女だった

右🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿固定
🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿以外ほぼ女です


暗闇の底で、ざわついた声が混じり合っていた。
近くの声と遠くの声が入り交じり、深いところから浮かび上がるように輪郭を持ちはじめる。

……イングランド、ほんとに様子変だったよね」

「うんうん!だっていーくん、会った瞬間に誰だお前らはって言ってたよね〜スコちゃん」

「ふん、アイツの様子がおかしいなんて日常茶飯事だろ」

視界が薄く明るみを帯び、三つの影が揺れた。

「あっ、起きた?大丈夫?」

「急に倒れるからだ。顔色も悪かったぞ」

「イング〜?返事できる〜?」

視界が焦点を結び、三人の女が立っているのが見えた。

「やっと目ぇ開いたな」

長身の女の声が落ちる。

「もう、ほんと心配したんだから!いきなり倒れるなんて聞いてないよ」

「珍しいよね?別に七月近いわけでもないのに」

「秘書に連絡しといた。今日は休みにしてあるから安心しろ」

イングランドは呼吸を整え、口を開く。

……その、お前達は……スコット、ノース、ウェールズ……でいいのか?」

三人は揃って眉をひそめた。

「え……どういう意味?」

「いーくん、どうしたの?」

「おい、何を言いたい?」

イングランドは慎重に言葉を続けた。

……俺はイングランド、間違いなくイングランドだ。そして、俺には兄がいる。三人の兄だ」

三人が息を呑む。

「それは……

長身の女の言葉が途切れる。
三人の表情に違和感がゆっくり広がる。

「ねぇ……思わなかった?」

金髪の女が声を下げる。

「このいーくん、なんか……いーくんじゃなかった気がするっていうか……

赤毛の女も静かにうなずく。

「うん。なんか違和感だよね?気配とか」

長身の女も小さく息を吐いた。

………確かに言い返さないイングランドなんて、気味が悪いな」

そして三つの視線がイングランドへ。

……もしかしてさ」

金髪の女がさらに声を潜める。

「君、わたしたちの弟じゃない?」

その瞬間、赤毛の女がぽん、と手を打った。

まるで唐突に閃いたような、けれど本人の中では当たり前につながった動きだ。

……あっ!思い出した!昨日さ、スコットとイング喧嘩してたじゃん!」

スコットランドが目を細める。

……そうだが、それが今の話に繋がるのか?」

ノースは完全に聞いていない。
身振り手振りを交え、勢いのまま話を続ける。

「イングランド、泣きそうな顔で叫んでたよね!『俺は!姉上じゃなくて兄上が欲しかった!』ってさ!」

イングランドの声真似まで入れて、空気がピシッと固まった。
金髪の女が両手で頭を抱えた。

…………それ、完全に原因じゃん!いーくん、チェンジリングしちゃってるよ!!」

チェンジリング。

妖精によって赤子が取り替えられるという、ブリテンに古くからある言い伝えだ。
三人は本気で、別の世界のイングランドと入れ替わったのだと受け止めたらしい。

赤毛の女はにこにこしながら頷く。

「だよね〜?どおりで今日のイング、全然イングじゃなかったんだね!」

長身の女がため息を吐く。

……つまり、昨日の喧嘩が引き金になったと」

「なんで他人事いうの!3割くらいスコちゃんのせいだよー!」

金髪の女が抗議し、長身の女が目をそらす。
三人の間に妙な納得が一気に広がった。
視線が揃い、空気がわずかに変わる。
驚きでも困惑でもなく、どこか腑に落ちたような静けさを帯びて。
そして、三人はまるで役割を分担したかのように同じ瞬間にイングランドを見つめた。

「ようこそ、別の世界のイングランド」

その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気が不思議と馴染んだ。

ここは幽霊も妖精も魔法も存在するブリテン島。
弟が取り替わっていたとしても、不思議ではないのである。

イングランドは胸の奥に澱んでいた混乱を押し込めるように、ゆっくりと長く息を吸った。
引き攣った声を静かにこぼす。

……冗談じゃない」

小さく落とした声だったが、三人にははっきり届いていた。