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マエバ・セイボスキー
2026-02-21 19:42:40
16143文字
Public
パーバソ
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眠りの海の船長
眠りパロのパーバソ。
Dの眠りをとてもオマージュしています。
なんのひねりもなく、タイトルままです。
二人はしあわせにくらしましためでたしめでたし、です。
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パーシヴァルは、機嫌がよかった。その朝だけではない。もうずっと、気分が良い。恋がそのようにさせ、愛が身体を軽くしていた。
森の中で運命を見つけたそのときから、パーシヴァルは、春の鳥のようだった。主人の気持ちが伝わるのか、愛馬の調子も良いようだった。人馬一体とはよくいうが、パーシヴァルと彼女は完璧な相棒同士だ。
愛馬の蹄が、パーシヴァルの心を表したかのように軽やかに草地を行く。黄緑色の瑞々しい葉は、踏まれてもきっとすぐに顔をあげるだろう。
パーシヴァルは、森の奥を目指していた。小さな家、彼の住む、愛しくも慎ましやかな。細い小川を辿った先に、巨木に大半を埋めるようにしてその家は建っていた。
手前で馬を下り、小さな橋を渡る。振り返ると、クントリーはまるで励ますかのような顔をしていた。そんな細やかな表情の変化などあるわけもないのに、パーシヴァルにはそれがしっかりと伝わるのだった。
ドアは、ノックをする前に内側から開いた。
「よう兄弟」
中は薄暗い。小さな窓からあかりが差し込み、埃がきらきらとひかってみえる。声は部屋の隅、陽の届かない黒々とした場所から響いていた。
ごつ、と重たい音がする。
暗闇に目をこらす。日の当たる場所に茶色いつま先が現れ、ぎょろりと白い目玉がふたつ、浮かんだ。
「お前さんが探してるお宝はここにはねえぜ」
濡れた材木が軋んで立てた音のような声だった。
「丁度良かったぜ、城を訪ねる手間が省けた」
ぬるりと暗闇から沸き上がるように姿を表したのは、曲がった髭の男だった。老人というほど老いてはおらず、壮年というには老獪のようにみえた。
「取引だ、率直にいこう。この国で仕事をさせてくれ。なに、ちょっと王室から許可を出してくれりゃあいい。難しいことじゃない、それにここの貴族連中にとってもいい話さ」
「許可、とは」
男の口がするどい稲妻のようにひらき、ごろごろと雷鳴のような笑い声が響いた。
「『労働力』の提供さ」
王が嘆いていた。近隣の国では非道なことがまかりとおっている、と。父が承諾するとは思えなかったし、なによりパーシヴァル自身、唾棄すべき提案であることは間違いがなかった。
「それは、」
「おっと、まだ答えるなよ。話は最後まで聞きな」
取引の基本だぜ、とまたあの不快な笑い声をもらす。
「オマエ達は労働力を手に入れる、オレはそれで財をなす、そのうえおまえの大事な宝物が定期的に『商品』をもってお前に会いに来る、お前は、そうだな、そのときだけ抱いてやって、普段は綺麗なお姫様でも嫁に貰って良い王様をやりゃあいい。男妾なんてそっちのほうが好都合だ。ほら、損得でいったら得しかねえ、なかなかな好条件の取引だ」
そうだろ?と笑う顔は、パーシヴァルが断るなんて夢にも思っていない様子だった。
「お断りする」
「
……
はあ?」
「王に話を通すまでもない。承諾致しかねる。彼を返して貰おう」
「おいおい、おい?」
部屋の中に差し込んでいた明かりが消える。にわかに部屋は黒くなり、すぐ外ではぐるると獣の唸り声のような雷鳴が微かに聞こえていた。
「あー、もう一度だけきくぜ? 今度は考えて答えな坊主」
カッと辺りが一瞬光り、世界が黒と黄色に染まる。男の目が爛々とぎらついていた。
「取り引きをするな?」
「断る」
すぐ近くに、爆発するような音を立てて雷が落ちた。
「本気か? いかれてやがるのか? こんな」
「必要は無い、今すぐに彼を返しなさい」
男は心底驚いた顔をした。恐ろしさや怒りではない、ただただ驚愕に目が開かれている。
「おまえ、本気なのか、オレが」
「貴殿が何者であったとしても。取引には応じない、そして彼もかえしてもらう」
これは、決定だった。パーシヴァルは、王族である。次期王である。パーシヴァルの判断は国を変えるし、人を生かしも殺しもする。だからこそ、不要な迷いはもたない。検討をすべきではないものについては、即断即決すべきで、パーシヴァルの言葉は王に次いで絶対だ。パーシヴァルがしないといえば、しない。
「必要とあらば」
パーシヴァルは、腰に手をやった。槍の方が得意とはいえ、剣の腕前もそこらの騎士よりずっと上だ。
「まてまて、わかった。戦う気はない」
「では」
「まあ、とはいえ
……
」
ドーンとふたたび落雷する。
「返す義理もない、じゃあな」
雷と供に突風が吹き、次の瞬間には部屋の中にはまたあたたかな陽射しがそそがれていた。
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