lilie_y0527
2026-02-19 23:08:54
13117文字
Public
 

先生ルークと保護者ディン

現代AUルクディン


【お祈りごっこ】


ある日の夕方、少し早めにグローグーを迎えに来たディンは、園庭の隅で足を止めた。保育室の真ん中、ルークとグローグーが二人で座っている。

「神さま、今日もグローグーくんを守ってくれてありがとうございます」

ルークの静かな声。彼はグローグーの小さな手を包むようにして、一緒に手を合わせている。傾きかけた西日がルークの金髪を透かし、白いシャツの端を柔らかく照らしている。その姿は、まるで古い宗教画から抜け出してきたかのように、静謐で、非の打ち所がないほど綺麗だった。
ディンは、自分が履いている土に汚れたブーツや、傷だらけの手を、ふと意識してしまった。
ディンにとって、ルークはただの「優しい先生」以上の存在になりつつあった。この濁った世界で、たった一人だけ汚れを知らない場所に立っているような、清らかな光。そんな人が、自分の息子を愛しみ、自分のような男にも優しく微笑みかけてくれる。

……ぱ!」
お祈りが終わったグローグーが、テラスで待つディンの姿を見つけて駆け寄ってくる。ルークも立ち上がり、逆光の中で眩しそうに目を細めてディンを見た。
「ディンさん。おかえりなさい。グローグーくん、今日はお祈りのポーズ、完璧だったんですよ」
誇らしげに、無邪気に笑うルーク。その笑顔が、あまりにも汚れがなく、まっすぐ自分を映し出すので、ディンは思わず視線を逸らしてしまった。
「先生」
「はい?」
「あなたは、どうしてそんなに綺麗なんですか」
「え……?」
ルークが驚いて目を見開く。ディンは自分が口走った言葉の奇妙さに気づき、慌ててグローグーを抱き上げた。
「いや、なんでもありません。また明日」
ディンは足早に去っていく。残されたルークは、赤くなった頬を手で冷やしながら、夕闇が迫る保育室の中で立ち尽くした。

(綺麗だなんて。僕なんて、あなたを想って不純な祈りをしてしまう、未熟者なのに)
ディンが自分を聖者のように扱えば扱うほど、ルークの中にある想いは、行き場を失って、激しく疼き出すのだ。褒められて、これほどまでに悲しく、これほどまでに胸が締め付けられるのはなぜか。
ルークは、まだ空気に残っているディンの気配を追いかけるように、一度だけ窓の外を見つめた。そして、今夜もまたフォースに懺悔するしかないのだと悟り、長いため息を夜の闇に逃がした。