——◆一 善法寺伊作
乱太郎の手が不安げに伊作の着物を握り締めている。
周囲は濃い霧に覆われて、あまり視界がきかない。その、霧の中を歩いている。
乱太郎の小さな背に手を置いて歩幅を合わせながら、おかしい、と伊作は思っていた。目の前には何もなかったかのように山道が続き、かすんでよく見えないがその先に谷があって、橋がかかっている。
足元が崩れて落下した後、ふと気が付くと、伊作は乱太郎と手をつないだまま、見覚えのない山道にうずくまっていた。
見上げても落ちてきた崖のようなものはないし、そもそも見たことがないくらいの霧で視界が狭かったため、状況がわからない。声を出して呼んでも、自分たち以外の保健委員は見つからなかった。
——一緒に落ちたはずなのに。
色々なことが尋常ではない。早く皆を見つけてこの霧から抜け出さないと、後輩たちを危険にさらすのでは、という気がする。伊作は珍しく、やや焦っていた。
その時ふと、何か妙な気配がして伊作は顔を上げた。
「伊作先輩、あれ
……」
小声で言って、乱太郎も前を指さす。
前の谷間にかかったつり橋が、少し揺れている。ず、ず、と地面に振動が伝わってきた。さっきの崩れそうな揺れとは違う。それは、何か大きな生き物が、歩いているような
——。
いる。
つり橋の下に、何かいる。
霧で見えない視界に、小山のような影が見えている。それはゆっくりと、橋の下を通り過ぎていく。
二人は顔を見合わせた。
「乱太郎、ここにいて」
そっとささやく。それから、一緒に行きたそうな顔をした乱太郎に向かって、有無を言わせない穏やかな笑みを見せた。好奇心旺盛な後輩がしぶしぶうなずくのを待ってから、伊作は音もなく前に走った。
近づくと、霧にまかれて見えなかった橋が向こう岸まで見えた。橋がかかっている谷間はそれなりに広く、霧で満たされて下が全く見えない。
——あれだけ落ちたのに、また谷というのもおかしな話だ。
疑問はいくらでも浮かぶ。
谷の際まで進むと、伊作はじっと、下に目を凝らした。
いる。間違いない。よくみえないが、橋をくぐった大きな生き物が、霧の向こうをゆっくり歩いている。
追いかけて正体を確認するか
……と一瞬思ったが、首を振る。これ以上進むと、乱太郎を視認できなくなる。ひとまず、見たこともない巨大な生物がいると確信できたのだから、やることは一つ。とにかく距離をとるべきだ。
「引き返そう。乱太郎」
振り向る。
「
……乱太郎?」
伊作は足を止めた。
さっき乱太郎と別れた位置から、橋は見えていた。だから、橋の手前にいる今、振り向けば姿がみえるはずなのに。
乱太郎の姿は、どこにもなかった。
——◆二 山本陣内
真っ白な霧の中を、二人で歩く。足元に、わずかに雪が積もり始めている。
陣内は、密かに息をついた。感覚がおかしくなりそうだ。
少し前にいる雑渡をちらりと見ると、その広い肩にも、わずかな粉雪が乗っては消えていく。ほとんど真っ白な中に忍び装束がくろぐろと浮かんでいるばかりで、どこか幻がかった景色だ。
タソガレドキ忍者たちが近づいた時、霧は、まさに丸めた綿のようになっていて、まったく中が見えなかった。だから念のため、押都、高坂、尊奈門の三人をその場に残して、雑渡昆奈門と山本陣内が二人だけで霧の中に入った。
あまり経験したことのないほどひどい濃霧で、ほとんど何も見えない。やむなく方角をさだめ、歩数を覚えながら、ただまっすぐ進んでいる。これなら、来た方向に同じ歩数歩けば、元居た場所に戻れるはずであった。
——しかしこれは。
陣内はやや眉をしかめている。いくらなんでも、霧が濃すぎる。今どこを歩いているのか判然としない。
——これでは探索のしようがない。
さすがに、早晩見切りをつけるしかないだろうと思えた。
五十歩あるいたところで、曲がりくねった松の木に行き当たり、その下で立ち止まる。陣内は松の幹にあった赤子の頭のようなこぶに触りながら、雑渡に目を向けた。
「組頭、さすがにこれでは
……」
雑渡も同じことを思っていたらしく、「だよねえ」と答える。
彼は、うーんと息を吐くようにうなると、しばらく目をつむり、それからその目を半分開いて、雪の舞う空を見た。厚い雪雲が垂れ込めている。本降りになるとやっかいだ。
「
……戻ろうか」
「は」
そういうことになった。
二人はくるりと後ろを向き、また歩数を数えながら、元の場所に向かった。ところが、である。
「
——どういうことだ」
五十歩歩いても、霧は視界の先どこまでも続いていた。
どちらともなく、顔を見合わせる。
「来た時より、霧の範囲が広がった
……?」
そう言った陣内の横で、雑渡が押都たちを呼んだ。答えがない。
もう一度顔を見合わせ、そのままさらに方向を変えずに三十歩進むと
——見覚えのある曲がりくねった松の木があった。
「
……⁉」
「これは、さっきの
……」
思わず駆け寄る。間違いない。赤子の頭のようなこぶがある。似ている松ではなく、さっきの松の木だ。
「方向を、見失った
……?」
「私たちふたりともか?」
信じられないというおももちで、三度互いの顔を見た。タソガレドキ忍軍狼隊小頭と、タソガレドキ忍軍忍び組頭である。思い上がるわけではないが、忍者として長く鍛えてきた方であり、体の感覚も鋭くあるよう、怠らず励んでいる。二人そろって、まっすぐ歩いているだけの方向を誤るようなことが、あるはずはない。少なくとも陣内が間違えば雑渡が、雑渡が間違えば陣内が気づくはずだ。
しかし、実際に逆方向にあったはずの松の木が、目の前にある。
空を見上げる。厚い雪雲に覆われて太陽の位置は分からない。天から方角を知ることも期待できない。
「これは妙なものに飛び込んじゃったかな
……」
雑渡がそうつぶやいたとき、さして離れていない場所から、戦の音が聞こえた。
この短時間で何度目であろうか。二人は顔を見合わせる。
もはや方角の事を考えても仕方がない。探れるものを探るしかないだろう。二人の忍者は、戦の音のする方へ、まっすぐ歩を進めた。
——◆三 三反田数馬
何かに追われている。
何かに追われているのは間違いない。だが、それがなんだかわからない。
後ろを振り向いた数馬は、何度も確認した追ってくるものの姿をもう一度見た。
「やっぱりあいつ目が三つありますよぉ」
同じく後ろをみた左近が泣きそうな声でそう言う。
「スリル~」
さすがに切迫した声で、伏木蔵が叫んだ。
追ってくるのは、猪だった。いや、猪に似ている何か、という方が正しいか。
さっきまで追われていた普通の猪とは違って、なんだか動きが奇妙にうねうねしていて、体が大きく、体毛が長く、足が見えない。走る速度が動物の猪よりかなり遅いのは助かるが、顔はお面のように生気がなく、そのくせなんとなく人間のような目つきをしていて、不気味だった。しかも、どう見ても、額の真ん中に三つ目の目玉がある。それが、霧にまかれて見えたり見えなかったりしながら、追ってくるのである。
奈落の底に落ちて、気が付くと、数馬、左近、伏木蔵の三人は固まって河原にいた。どこから落ちたのかと見上げてみたが、上には何もない。「賽の河原」という言葉が脳裏をよぎったが、その割には鬼もいなければ積まれた石もない。奇妙に思って記憶をはっきりさせようと考え始めたところに、横から現れたのがあの猪だった。
「炭焼き小屋だ!」
数馬は叫んだ。
三人の走るすぐ先に、小さな炭焼き小屋が見えていた。
「左近、伏木蔵、あの陰に隠れてやり過ごそう」
声をかけると、後輩二人はうなずいた。炭焼き小屋の側面、薪が積み上げられている横に入り込み、左近と伏木蔵を奥に行かせる。数馬はそっと角から顔を出して、追ってくるモノの方をみた。二人よりは、影の薄い自分が前にいた方が、見つかりづらいはずだ。
影の薄さが功を奏したのか、濃い霧のおかげか、猪は自分たちを見失ってくれたようだった。こちらからも、猪の姿は霧で見えづらい。ほとんど影である。だが、距離をはかることはできた。猪は明らかに速度を落として、自分たちを探しているようだった。
——早く通り過ぎてくれ!
焦る気持ちを抑え込み、数馬はじっと待った。
近づいてくる。
——大丈夫、この場所がばれているわけではない。
猪の姿が、すこしはっきりしてきた。
後ろの二人が、口に手を当てて息をひそめているのがわかる。
ふと、数馬は、猪の足音が、なぜかぺたぺたといっているのに気が付いた。野生動物の足音というより、それは、人が素足で歩くような
……。
猪がゆっくり、通り過ぎていく。うっすら積もった雪に、猪の足跡がついている。
それは、はだしの人間の足跡のようだった。
ぞっとして、数馬は反射的に口元を押えた。
その時、後ろで、反対側を向いた伏木蔵の声がした。
「
……乱太郎?」
「え、乱太郎?」
振り向き、小声で尋ねる数馬の視線の先で、すでに腰を浮かせていた伏木蔵が足音を殺して歩き、炭焼き小屋の後ろをのぞき込む。その姿が、小屋の後ろにみえなくなった。
「あっおい!」
小声で言って、左近が追いかける
「待って二人とも、まだ動くのは
……」
そう言って追いかけた数馬が炭焼き小屋の後ろを覗き込んだとき、そこは閑散としていた。
「
……え?」
一瞬わけがわからず、数馬は絶句する。
誰も、いなかった。
「伏木蔵? 左近?」
名を呼び、きょろきょろと回りを見渡す。
——いない!
鼓動が早くなった。まずい、こんな状況で、下級生を見失うなんて!
「伏木蔵! 左近!」
今度は少し大きな声で、もう一度呼ぶ。慌てていて、猪がまだ遠くに行っていないことを、数馬は失念していた。
ふと後ろに気配を感じ、振り向く。
至近距離で、猪の三つの目が、じっと数馬を見ていた。
——◆四 雑渡昆奈門
「どう思う?」
そう言って、雑渡は陣内を見た。
「どう
……と言っても
……」
そうつぶやいたきり、陣内は答えられない。
雑渡としても、どういう答えを求めているわけでもなかった。わけがわからないのだから。
戦の音のする方に進み、藪をこえ、急に開けた視界には、見覚えのある戦場が広がっていた。それは過去の記憶の中に鮮明にある戦場だった。
敵陣。
燃え盛る、見覚えのある建物。
雑渡は知っている。あの火事の中に、諸泉尊奈門の父が取り残されている。
奇妙に現実感がない光景の中には、いるべき人々がいない。戦場の戦いの音と、火の燃える、ごうごうという音だけがうるさいほど響いている。
——あそこに飛び込まないといけない。
雑渡は強烈な焦燥感にさいなまれていた。
——諸泉が。早くしないと、諸泉が!
——違う、これは過去の光景だ。
せり上がってくるひどい焦りを、鉄の理性がおしとどめる。何かおかしい。いや、何もかもおかしい。
それから、呼ばれるようになんとなく自分の手を見て、雑渡はぎょっとした。
手首にまいてあるはずの包帯がない。
包帯の下にあるはずの火傷跡もない。
よくみれば、手の平も手の甲も、荒れがなく若い。
「
……」
思わず反対の手を見る。包帯はない。
体をよじって自分の太ももの横を見た。袴の脇から見えるはずの包帯もない。
「
……陣内、私どうなってる?」
たまらず声をかけた。陣内が振り向く。その顔が一瞬驚愕にゆがみ、硬直した後、何とも言えない表情を浮かべた。その反応で、雑渡はすべてを理解した。
「昆
……お前
……お前、火傷が
……」
雑渡の全身から、火傷が消えていた。そればかりではない。その姿は、火傷をする前の、健康な若い青年の姿に変じていた。
思わず、といったようすで子どもの頃のように雑渡を呼んだ陣内は、子どもの頃のように頬に触ろうと手を伸ばし、途中で理性が働いたのかその手を引っ込めて、代わりに控えめに雑渡の手を握った。その瞬間、はっとしたように、熱に浮かされたような表情が覚めた。
雑渡の手を握った陣内の指先が、いつもなら包帯で隠れている手首に触れている。陣内はぱっと手を離すと、雑渡の手首を、今度は手のひら全体で握った。普段、包帯の巻かれている部分の感触を、確かめるように。
陣内はぐっと目をつぶり、しばらくじっとしていた。大きく息をつき、目を開いたとき、子どものころからよくかわいがってくれた近所の優しい兄さんの陣内は消え、狼隊小頭で雑渡の側近の山本陣内が戻ってきていた。
雑渡はまたも、それですべてを察した。左手で、自分の左顔面を触る。
包帯の感触が、ある。
「
……幻覚か」
雑渡がそう声に出したとたん、戦場は消え去っていた。
——陣内は指先にわずかに触れた包帯の感触を感じ取ったのだ。
——目に見えているものと現実が違っていることに気付いたのだ。
——私より先に。
雑渡は、悪いことをしたと思いながら目の前の年上の部下を見た。
陣内は怖い顔をして黙り込んでいる。根が情深い彼にとって、この幻覚は少し堪えるのではないか。この男が
——彼だけではないが
——ずっと自分の火傷の様態を心配し続けてくれていることを、雑渡は知っている。しばし無言で待って、それから、「陣内」と声をかけてみる。
しばらくして陣内は、低く押し殺した声で
「これがあやかしのしわざなら」
ゆっくりかみしめるように言って一息つく。それから、
「趣味の悪い怪異だ」
と吐き捨てた。
「そうだね」
「一発殴りたいな」
顔を上げながら、珍しく、物騒なことを言う。
雑渡は笑うと、
「いいね。ぶん殴る役は譲ってあげるよ」
と答えた。
陣内はひとつ頭を振り、いつも通りの声音になった。
「子どもたちが心配ですが、こうなってみるとあれも呼び水だったかもしれませんね。本当にここに保健委員さんがいるかどうかもあやしい」
「たしかにね。まあまずは、探索しつつ脱出方法を考えようか」
答えて、歩き出す。
目の前に、昔死んだ仲間の死体が現れたが、雑渡はもう反応せず、ためらいなくそれを踏んだ。感触はなかった。
それ以上、幻は現れなかった。
——◆五 鶴町伏木蔵
猪から逃げて炭焼き小屋の横に隠れた時、伏木蔵は、小屋裏から手招きする子どもの手をみた。それは、見覚えのある緑の着物を着ていて、思わず「乱太郎?」と声をかけ、招かれるままに前に進んだ。
後から思えば、後ろから先輩の止める声が聞こえていた気がする。だがその時、伏木蔵は不思議に、手招きする手に惹かれ切っていた。ほとんど無意識に招かれるまま進み、ただ手だけを見ていた。
どのくらいついていったのかわからない。考えてみれば、小屋の裏から出てしまった後は霧の中に自分をまねく手だけが浮いていたわけで、それはおかしな話だった。それに気が付いたのは、急に後ろから襟を引かれ、引き倒された時だった。
「
……え⁉」
子どもの手招きから目を離した瞬間、急に頭がはっきりしたような気がした。自分を引き倒した青年の顔を見る。
「
……! こ、」
言いかけた口を、青年の手が塞いだ。
伏木蔵を止めたのは、高坂陣内左衛門だった。
次の瞬間、高坂は音もなく伏木蔵を抱き上げると、ぱっと後ろに飛び退った。それから、そこに積もっていた落ち葉の中に埋め込むようにして伏木蔵を隠す。彼は無言のまま、すぐ隣で同じように落ち葉に潜んだ。
——木の葉隠れの術だ!
習った忍術を思い出した伏木蔵は、その場でじっと息を殺し、待機した。
すぐに、なんだか妙な足音が聞こえた。次に、子どものような、なんとなく不安定な声が聞こえてくる。
「まだ? まだ? おいで、おいで」
かさ、かさ、さく、さく。
落ち葉を踏んで、近づいてくる。
「まだ? まだ? おいで、おいで」
同じことを繰り返しながら、うろうろしているようだ。
隣にいるはずの高坂が完全に気配を消しているので、伏木蔵は高坂に倣ってじっとしながら、浅くゆっくり呼吸をし、動かずに待つ。
「まだ? まだ? おいで、おいで」
木の葉の隙間からすこしだけ、声の主の姿が見える。伏木蔵は目を凝らした。
乱太郎などではなかった。
なんだかくねくねした、うつろな目を見開いた子どもが、妙な方向に首をまげながら、あちこち覗き込んでいる。口の中が奈落のようにまっくらだ。見ていると吸い込まれる気がして、伏木蔵はぎゅっと目をつぶった。
くりかえす子どもの声は、しばらくそのあたりをうろうろしたが、やがて遠ざかっていった。
その気配が完全に消えてから、隣でかさりと音がし、高坂が身を起こした。
「大丈夫か?」
「はい
……」
言いながら、伏木蔵も起き上がる。
その頭に乗っていた木の葉をはらった高坂が続けた。
「なぜあの子どもについていっていたんだ。あれは
……あれはあやかしものだろう」
今更ながら、伏木蔵は身震いした。全く気付かずに、惹かれるようにして、怪異についていってしまっていたのだ。夢から覚めたようだった。
「他の保健委員さんは今日は一緒じゃないのか?」
高坂は質問を重ねる。
「伊作先輩と乱太郎とははぐれて、そのあと炭焼き小屋までは三反田数馬先輩と川西左近先輩と一緒だったんですけど
……」
「最初は全員一緒だったのか。
……待て、炭焼き小屋があったんだな?」
高坂がそう確認したので、伏木蔵はうなずく。
「ここは霧が濃すぎて、どこに何があるか判然としない」
そう言って、高坂の切れ長の目が周りを見る。ほとんど白く沈んで、視界は狭い。
「どうも方向感覚も鈍っている。そういう、建物のような目印になるものを、探したほうがいい。私も組頭や尊奈門たちとはぐれたんだ」
それだけ言うと、高坂は立ち上がった。
「ひとまず、炭焼き小屋を探して歩いてみよう。うまく見つかれば、川西君と三反田君には会えるかもしれん」
「はい」
伏木蔵は慌てて立ち上がると、全身にくっついた木の葉をはらう。
「歩きながら、霧の中で何があったのか、互いの状況を詳しく話そう」
高坂がそう言ったその時、また
「まだ? まだ? おいで、おいで」
少し離れたところから、あの声がした。
高坂と伏木蔵は顔を見合わせる。
忍びは基本的には戦闘員ではない。相手の情報をかすめ取り、余計な戦いをせず回避するのが最もよい。
相手がこちらを探していて、まだ居場所を補足していないなら、逃げるに限る。高坂は伏木蔵を抱え上げると、風のように走り出した。
声は、すぐに聞こえなくなった。
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