燈 ともしび
2026-01-09 19:50:56
18040文字
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ぎゆさねオメガバ【破れ鍋アルファーに綴じ蓋オメガ】

ぎゆさねでオメガバースを書きました。
キ学軸。アルファー🌊×オメガ🍃
格好良い🌊さんも🍃さんもいません。独自設定モリモリです。
🍃さんが子ども産んでやる等発言します。また2人の子どもの描写がさらっとですが出てきます。
大丈夫でしたらよろしくお願いします🙇‍♀️



▽5

 不死川のトークアプリのアイコンが美味しそうなおはぎだったので、初めてのデートは甘味処を巡ることにした。
 ただ、今週末は俺が顧問になっている剣道部の試合で潰れてしまうので来週の土曜日。少し間が空いてしまうが仕方ない。仕方ないが、やはり早くデートしたい気持ちでいる。
 そして肝心のデート先だが、出されたら食べるけれど基本的に俺は自分から好んで甘味を食べることはない。なので、まずは美味しそうな甘味処をリサーチするところから始めたのだが、これがなかなか難しかった。
 甘味強め、甘さ控えめ、粒あん、こし餡のような基本的なものから更には花のような形の変わり種なおはぎまで。俺が知らなかっただけでおはぎの世界は多種多様だった。
 気になったお店で行ける範囲のところは仕事終わりに買いに行ってみたりもしたが、売り切れだったり種類がほとんど残っていなかったりと空振りになることも多く、当日サプライズでおはぎの美味しいお店に連れて行けたら、なんて呑気に考えていた自分の甘さに頭痛がする。

「不死川、相談がある」
「へ?」
 食事中、突然呼びかけたので不死川は驚いたのか目がまん丸だ。猫のようで可愛い。
 最近では昼休みにこっそり時間を合わせて数学教師控室でお昼ご飯を一緒に食べていた。生徒も教師もここにはほとんど寄りつかないので
「ナイショの校内デートにうってつけだろ」
 と不死川に笑って言われた時は鼻血を噴く寸前にまでなったが、何回も過ごした今でもやはり少しドキドキする。俺はどうもこういう不意打ちにとても弱い。

「なんだよ、どうしたァ」
「あの、今から格好悪いことを相談したいのだが良いだろうか」
「冨岡に格好良さを求めてねェから大丈夫だ」
 それはそれで悲しいのだが、現実なので諦める。
「お店の相談をしたい」
「店ェ?」
「そう。来週のデートの」
 そう言いながら自分のスマホ画面を不死川の方へ見せる。行けそうな範囲で口コミの評判が良いお店をいくつかピックアップしたものだったが、それを見た不死川が嬉しそうに笑ってくれたので心臓がひとつ大きく跳ねた。最近良くある。不死川が可愛いから。

「わざわざこんなにたくさん調べてくれたのかよ」
「本当はサプライズしたかったのだが、店もおはぎの種類も多過ぎて決められなかった」
「ここまで調べてくれただけですげえ嬉しいっての。しかも二人で相談しながら決めるのも……なんかすごく」
「すごく?」
……デート感があって嬉しい」
 嬉しそうな笑顔から一転、後半は目元を赤くして言うから俺は床に転がりそうになった。最近、二人きりだと不死川もリラックスしているのか表情や態度、言動全てがゆるくなってとても可愛いのだが、今のは駄目だ。可愛いの限界点突破だ。
 どうしよう。今ものすごく不死川を抱きしめたい。
 でもここは二人きりとはいえ職場内。流石にそれは憚られ、隣に座って寄り添うことで我慢した。
「真面目ェ」
「いや、うん……
 ふふ、なんて不死川は笑う。でも俺は表情から考えを読み取られてしまいそうで顔が上げられない。浅ましい考えが浮かんでしまったなんて言えない。
 最近の俺は不死川に好きと言って貰えて、俺も不死川を好きだと自覚したことで様々なストッパーが外れかけている気がするのだ。
 デートしてたくさん話をしてお互いをよく知りたいなんて今もその気持ちに嘘はないけれど、やはり気持ちが通じ合ったと分かっているからこそ、触れたいという欲も浮かぶ。
 ちらっと不死川を横目で見れば、こちらを見ながらまだ面白そうに笑っている。これではどちらがアルファーなのか分からない。

 不死川はオメガなのでヒートがある。
 ただオメガ性が発現したのが割と早かったことと近所に腕の良いオメガ専門医がいたことでヒートコントロールは完璧に近いらしい。毎日欠かさず内服をすることで、二、三日微熱のような症状が出る程度で済んでいるのだと教えて貰った。だからこそ激務なキメツ学園の教師が出来るのだと本人は笑っていた。
 でも、その内服を止めてしまえば他のオメガと同じく発情を伴うヒートが起こる。
 このキメツ学園は優秀校故に教師にも生徒にもアルファーが多い。なのでもし不死川が一度でも薬を飲み忘れたら不幸な事故が起こってしまう可能性もあった。もちろんそんなことは俺が絶対にさせないけれど。
 不死川は俺の大切なひとだから。誰にも傷つけさせたくないし、傷つけさせない。情け無い落ちこぼれアルファーの俺だけれど、不死川を幸せで包み込みたい。その為ならいくらでも頑張れる。

「不死川」
「なんだよォ」
「好きだ」
……俺も好きだ」
 投げ出していた左手がそっと不死川に握られた。校内ではハグもキスも出来ないけれど、手は繋いでOKにしていた。だって、やっぱり俺もアルファーなので。好きなオメガが同じ部屋にいたら触れ合いたくなってしまう。不死川もそこは同じようで、こうして手を繋いだり寄り添って体温を分け合ったりするのが好きなようだった。
「デート楽しみだなァ」
「うん。たくさん食べよう。あと、不死川の弟さんや妹さんにもお土産買って帰ろうな」
「別に気を使わなくて良いってェ。俺が家族に買うし」
「いや、俺が買いたいんだ。だって大切なお兄さんが変なやつに掻っ攫われたら嫌だろう?」
「変なやつって」
 不死川はまたクスクス笑う。今日もたくさん笑ってくれている。可愛い。嬉しい。
 繋いでいた手を指と指が絡まる恋人繋ぎに変える。恋人なんだ。良いだろう。

「冨岡ァ」
「うん」
「幸せだ」
……うん。俺も幸せだ」
 ゆっくりで波瀾万丈でもドラマティックでもない俺たちの恋は、とても幸せに満ちている。