燈 ともしび
2026-01-09 19:50:56
18040文字
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ぎゆさねオメガバ【破れ鍋アルファーに綴じ蓋オメガ】

ぎゆさねでオメガバースを書きました。
キ学軸。アルファー🌊×オメガ🍃
格好良い🌊さんも🍃さんもいません。独自設定モリモリです。
🍃さんが子ども産んでやる等発言します。また2人の子どもの描写がさらっとですが出てきます。
大丈夫でしたらよろしくお願いします🙇‍♀️



▽4

 初めて抱きしめた不死川は良い匂いがしたし、力を抜いてもたれ掛かられたとき、俺に対する信頼まで感じられて愛おしさが溢れた。
 抱きしめる。それはなんて幸せな行為なんだろう。落ちこぼれアルファーな俺は一生知らなかったかもしれないこと。不死川が居てくれたからこそ叶えられたこと。
 ああ、この気持ちをどうしたら上手く不死川に伝えられるのだろうか。

 抱きしめた身体をいつまでも離したくなかったけれど、お互いのことをちゃんと知りたいと言ったのは俺だ。
 まずは話したい。あと、次の約束をしたい。
 ひとつひとつゆっくりと、二人のペースで積み重ねていきたい。
 身を切られるような思いで不死川の身体をそっと離す。不死川は俺の顔をきょとんとした顔で見つめてきたが、離したくなくなるのでお願いだからそんなに可愛い顔をしないで欲しい。

「あの、まずは不死川の連絡先を教えて欲しい」
「え、教えてなかったっけェ?」
「知らない」
 そう、俺たちはそんなことすら知らないままなのだ。なんせ初めは宇髄を通して連絡するなんて事になっていたくらいなのだから。
「ん」
 すぐに動き出した不死川はトークアプリの画面を出してきてくれたが、俺が追加に手間取っているとそれも全部代わりにやってくれた。手際が良い。やっぱり不死川は優秀なのだ。
「スマホは苦手かァ?」
「基本的に使ってない」
「だろうなァ」
 笑いながら見せてきたのは俺のトークアプリのプロフィール画面だった。初期設定のままのアイコンや背景が『スマホを使いこなせていない奴』だという全てを物語っているのだろう。
 おまけに友達一覧に居るのも姉と学生時代の友人である錆兎と真菰だけだ。でも今日、そこに不死川のアイコンが追加された。不死川のアイコンは丸く艶々の美味しそうなおはぎだった。
「不死川はおはぎが好きなのか?」
「ん。美味えよなァあれ」
 不死川のプロフィール画面を見ながらニヤついていたら、返ってきた返事もそれで可愛過ぎた。絶対にデートでおはぎの美味しいお店に連れて行こうと決めた。

……あの、よォ」
「なんだ?」
「その、冨岡の友達一覧にいる錆兎と真菰って」
「! 友達だ! 単なる! あと錆兎と真菰はもう結婚しているんだ! 不死川が気にするような相手ではない! あと姉さんは本当に血の繋がった姉だ!!」
 まさかの嫉妬のようなことを言われたので、珍しく大声を張り上げてしまった。
……本当ならこんな事を言うのはフェアではないと思うが、錆兎も真菰もアルファーなんだ。今はそれぞれオメガのパートナーと結婚して幸せに暮らしている。学生時代にたまたまグループワークで一緒になって気が合って。それ以来ずっと三人で仲良くしていた友達なんだ。その二人とは今までお互いに恋愛感情を抱いたことはないし付き合ったこともない。それはこれからもない。もし不死川が気になるようなら向こうに訳を伝えて一覧から消す」
 必死に言い伝えると不死川はしばし呆気にとられた後に
……ごめん。俺が悪かった。その二人は大切な友達なんだろ? 消すなんてしないでくれ。姉さんと表記されていたアイコンの人も疑ってねェよ。だって顔が冨岡そっくりだもんな。冨岡が誠実なのは分かっていたのになァ……なんかみっともねェな、俺」
 そう言って、向き合っていた俺の肩に顔を伏せてしまった。俺はまたその身体を抱きしめたくなって慌てふためく。
 だって、可愛い過ぎるではないか。
 残念だけれど俺は不死川が思うよりもモテない。なんせ自他共に認める落ちこぼれアルファーだから。
 それなのにこんな反応って、それって。そう思ったら俺の心臓が早打ちをし始める。
「不死川は……本当に俺のことを好いていてくれているんだな」
「それはさっき言ったァ」
「そうだったな、ごめん」
「うん。俺も悪かったからいいよォ」
 ぎゅっと。今度は不死川から抱きつかれた。
 やっぱり良い匂いがする。あと頭がふわふわするような幸福感も。

「好き」

 完敗だった。
 俺は不死川に絶対勝てない。
 耳元で伝えられた思いに俺の気持ちも溢れ出してしまった。
 昨日までは単なる同僚だった。それどころか俺のことを嫌っているだろうと思っていた。連絡先だってさっき交換したばかりだ。まだ好きな食べ物もひとつしか知らない。
 それなのに、心の中にあるのはひとつだけだ。
 この気持ちが好きという感情ではないのなら、なんと呼べば良い?甘くて幸せで、胸の中を掻きむしりたくなるような愛おしさの名前を。

「俺も……不死川のことが好きだ」

 そう伝えて不死川を抱きしめ直す。
 なんか、幸せで泣けてきた。

「デートもたくさんしよう。たくさん話そう。あと……ずっとずっと一緒にいよう」
 抱きしめる腕の力がお互いに強くなる。

「不死川実弥さん」
 顔を上げて視線が合う。見つめ合う。

「一生かけて愛し抜くから、俺を貴方の唯一の伴侶にして貰えないだろうか」
 選ぶのはアルファーじゃない。オメガだ。
 決定権は不死川にある。

 俺はやっぱり情け無い落ちこぼれアルファーだからプロポーズすら格好悪い。涙は止まらないし声も震えてる。不死川に愛想を尽かされても仕方ない。
 でも、不死川はそんな俺を見てもまた綺麗に笑ってくれた。

「俺は初めから言ってただろうがァ。テメエしか……冨岡しか嫌だって。産むのは冨岡の子だけだ。見とけ。俺の弟妹よりもたくさん産んでやらァ」

 不死川も泣いていた。俺も涙が止まらない。
 側から見たらかなり格好悪いだろう。
 でも、これが俺と不死川の初めの一歩だった。幸せで愛おしくて大切な、最初の一歩だったのだ。