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燈 ともしび
2026-01-09 19:50:56
18040文字
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ぎゆさねオメガバ【破れ鍋アルファーに綴じ蓋オメガ】
ぎゆさねでオメガバースを書きました。
キ学軸。アルファー🌊×オメガ🍃
格好良い🌊さんも🍃さんもいません。独自設定モリモリです。
🍃さんが子ども産んでやる等発言します。また2人の子どもの描写がさらっとですが出てきます。
大丈夫でしたらよろしくお願いします🙇♀️
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▽2
「不死川
……
」
名前を呼んで、そして俺はそのまま黙り込んでしまった。
気不味い。なんというか己の浮かれっぷりが気不味い。
これは『会ったこともない、自分の伴侶になってくれるかもしれないオメガ』に対して深く考えもせず、一人ではしゃいで浮かれていたことが気不味いのであり、不死川に対してはなんというか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だって多分、というか絶対に不死川は俺のことを嫌いだと思うので。
それもこれも俺の言葉の選び方とかコミュニケーション手段が下手くそなのが悪いのだけれど、不死川はいつも俺に対して怒っている。俺が不甲斐ないばかりに怒らせて余計な手間をかけさせてしまったり、世話を焼かせたりしているからだろう。
俺のほうは同じ歳で同じ教師という仕事をしている不死川と仲良くなりたい気持ちがあったが、こんな調子で不死川を怒らせてばかりのため、仲良くなって貰えないと最近では諦めかけていたのだ。それなのに『友達』を飛び越えて『伴侶候補』とは、俺は一体どうしたら良いだろうか。
「あ、コーヒーひとつください。ホットで」
固まって黙り込む俺を他所に、正面の席に座った不死川は落ち着いた様子で注文をしている。そこに驚いたり慌てたりする様子は見られない。ただ、その顔に嫌悪感が見られないことにはほっとした。流石にそれは俺も立ち直れない。
初老のマスターが丁寧にコーヒーを淹れているのを遠くに見ながら、最初の口火を切ったのは不死川のほうだった。
「なんか言えよ」
「いや
……
その、驚いてしまって」
そう返事をすれば不死川の眉間に少しだけ皺が寄る。
ああ、また俺は言葉選びを失敗した。俺は不死川を前にすると上手く言葉が出てこない。それは仲良くなりたいのに空回りする原因でもある。
「いや、違くて、その、俺に不死川は勿体無いというか」
「は?」
なんとか気持ちを伝えようとするが、すればするほど空回りしてしまう。俺が言葉を紡ぐ度に不死川の眉間の皺が深くなっていく。無駄と知りながらも落ち着くために大きく深呼吸した。俺は不死川を怒らせたいのではないから。
「
……
ここに来てくれたのは宇髄に頼まれたからなんだろう? 俺が
……
情け無いアルファーだから面倒見てくれとでも言われたか」
「はァ? なんだよそれ」
「違うのか? だって不死川はあのキメツ学園の中でも優秀な教師だ。校長や同僚、生徒からの信頼もある。授業もわかりやすいと評判だ。はっきり言って俺よりも優秀だ。そんな優秀なオメガならば、何も俺のような落ちこぼれアルファーを選ばなくとも相手など選び放題だろう」
不死川は何か言いかけて、でも頼んだコーヒーが運ばれてきたから口を閉じて黙り込んだ。
マスターは特に気にした様子もなく「ごゆっくり」とだけ告げてまた店の奥に戻って行った。
「調子が狂うわァ、テメエは本当によォ」
「え」
マスターが席から離れると不死川は腕組みをしてこちらを睨んだままそう告げる。これは確実に怒っている。俺は訳もわからずオロオロしてしまったが、それもまた不死川を苛つかせたのだろうか。
「だからァ! 俺は自分で選んでここに居るんだわァ!」
「
……
へ?」
「宇髄から話がきたのはテメエも知ってる通りだ。ただ連絡がきた時は伴侶を探してるアルファーが居るってだけだった。元々俺も伴侶を探してたからなァ、丁度良いと思われたんだろ。でも俺は色々注文が多いからいつもこっちから断ったり、向こうから断られたりしてた
……
でも」
でも、でもなんだろう。そう言いたかったが何を言っても不死川を怒らせてしまいそうで黙る。言い争いはしたくない。
「相手が
……
冨岡だって言うから、その、俺もここに来たんだわ。だから卑屈なことばっかり言ってんじゃねェよ。俺は選んでここに居るんだよ」
びっくりして目玉が落ちるかと思ったし、顎が外れるかと思った。
目の前の不死川は腕組みをして横を向いている。でも髪の毛が短いからその耳が真っ赤なのは俺からもよく見えた。
いや、これは。
もしかして、これは。
不死川は相手が俺だと分かっていてここに、待ち合わせ場所に来た。俺は伴侶となってくれるオメガを探してここに来た。
なら、それならもしかして俺たちの思惑は一致しているのだろうか。
「不死川は
……
その、もしかして相手が俺でも良いと思ってくれたのか?」
アルファーらしくないと散々言われている俺だけれど。
自惚れかもしれないが、今の不死川の言動からはそうとしか思えなくて言ってしまった。だが不死川はそれに対して反論をしてこない。それどころか
「ようやく分かったかよ、ポンコツアルファーめ」
と笑ってくれたのだ。
その瞬間、俺の脳内に花が咲いた。一面の花畑だ。はっきり言って俺はチョロいから大喜びしてしまう。だからアルファーらしくないと言われてしまうのだが、それでも良かった。
嬉しい。俺が良いと言われたのは初めてだ。
「俺の両親はアルファーとオメガなんだわァ。親父は碌でもない男だったが、そこそこ良い家の出のな。そんで格下の家のオメガである母親を無理矢理娶った。でも一番最初に生まれたのはオメガな俺だった。しかもその後に生まれたのは全員ベータの弟と妹。アルファーが一人も生まれなかったもんであちこち大荒れでよォ」
不死川はようやくこちらに向き直ってくれたが、その口から語られたのは重い話だ。
「やけになった親父は浮気しまくるし、母親は共依存なのか虐げられてんのに別れようとはしねぇ。俺は望まれていないオメガとして徹底的に放置されて育った。はっきり言って最低の家だった」
うちとは大違いだ。そう思ったがまた黙る。不死川の話をもっと聞きたかった。
……
不死川のことをもっと知りたかった。
「だから俺は
……
オメガとして強く生きると決めたんだ。弟や妹も守らなきゃならなかったしなァ。でも、オメガとして生まれたからにはたった一人に望まれて、愛し愛されて子どもを生んでみたいって気持ちも、ずっとあった。だが親父がそんなだったからアルファーってのはいけすかない最低な人間で、相思相愛、対等な結婚は俺には無理だろうとは思っていたんだ。それなのにテメエみたいなオメガを対等に大切にしようとするアルファーらしくないアルファーが目の前に現れたから
……
欲が出た」
顔を上げた不死川の耳はもう赤くなかったし、顔は真剣そのもの。
ここだ、と思った。
だからこそ、ここの返事は絶対に間違えてはならないと。
「冨岡ァ、俺は優秀とか落ちこぼれとかそんなんどうでもいいんだわァ。俺が望むのは俺のことだけを愛しぬくって誓えるか、それを生涯守れるってどうかだけだ」
さあ、どうする?
真っ直ぐこちらを見てくる不死川の目は一切の嘘を許さない。
でも、そんなの俺には関係ない。
だって、
「誓う。俺は不死川だけを愛して大切にする。生涯違えず誓う」
それこそ、俺が望んでいたことなのだから。
目を見つめ返して断言すれば、不死川はもう一度笑った。それはまた脳内に花畑が広がるような綺麗な笑みだったから、俺の心臓がドンと大きく跳ねた。
「分かったァ。なら俺はテメエの伴侶になって子どもをたくさん産んでやる」
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