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燈 ともしび
2026-01-09 19:50:56
18040文字
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ぎゆさねオメガバ【破れ鍋アルファーに綴じ蓋オメガ】
ぎゆさねでオメガバースを書きました。
キ学軸。アルファー🌊×オメガ🍃
格好良い🌊さんも🍃さんもいません。独自設定モリモリです。
🍃さんが子ども産んでやる等発言します。また2人の子どもの描写がさらっとですが出てきます。
大丈夫でしたらよろしくお願いします🙇♀️
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「アルファーなのに」
今まで何度もそう言われてきた。そしてそれに続く言葉もいつも同じ。
「あなたは残念なアルファーね」
だった。
俺がアルファーなのは生まれつきのもの。望んでそうなったのではない。それなのにアルファーらしくない、残念と延々と言われ続けてきた。
アルファーらしさとは一体なんだ。偉そうにしてオメガを下に見て虐げることか? そんなのは嫌だ。それならば俺は今のままで良い。アルファーらしくない自分で良い。もう放っておいて欲しい。
でも、そうはいかないのがこの世の中だった。
元々アルファーの人口はとても少ない。なかなか生まれないのもアルファーの特徴のひとつ。最近、それが更に加速してきていることが問題となっていた。
そこで学問やスポーツなど、人種として優秀とされるアルファーを減らすわけにはいかないと、政府が勝手にとある制度を推し進めようとしていた。
俺のように結婚適齢期と言われる年齢になっても結婚しようとしないアルファーを強制的に結婚させようとしたのだ。アルファーの子どもはアルファーとオメガとの結婚でしか生まれないので俺は顔も知らない、政府が決めたオメガと勝手に結婚させられようとしていた。もちろんそこに当人である俺の意思など無い。
冗談じゃない。嫌だ。
そう叫べは、なら相手は自分で選んだオメガでも良いと言う。オメガとの結婚は逃れられないが、相手は選ばせてやると。
オメガはアルファーよりは人口が多い。けれど、男性体でも子どもが産める性質や、人間として劣等種であるという昔からの差別的なラベリングのせいで『自分はオメガである』と名乗らず、この世界で一番多いベータに擬態して生きている者がほとんどだった。
要するに自分で相手を探すのなら隠している他人の秘密を暴くことから始めろというのだ。
『アルファーならばオメガと番って最低でも二人は子どもを作ってもらわなければ』
平然とそんなことを言う。狂っている。この世の中はおかしい。怒りから噛み締め過ぎた奥歯が砕けそうになった。
自分でオメガの相手を探す期限は今年中。それが過ぎたら強制的に政府が決めたオメガと結婚させられ、子どもを作らされる。
俺はアルファーとして生まれたが、他人とコミュニケーションを取るのが昔から苦手だった。あまり変わらない表情筋も、語彙の少ない言動もそれを加速させていた。アルファーが全員優秀だなんて誰が決めたのだ。俺は優秀なんかではない。残念なアルファーでしかない。
でも、俺にもひっそりとした願望はある。好きあって、お互いを大切に思える相手と結婚したい。この世でたった一人を愛して大切にしたい。両親も歳の離れた姉もベータだが、どちらもそんな夫婦なので俺もそうなりたいとずっと願っていた。
俺の愛するたった一人は自分で決めたい。時間は少ない。急げ。大切な相手を一刻も早く探さなければ。
そこからは寝る間も惜しんで、たった一人を探す時間に充てた。
元々、俺の交流関係は少ない。学生時代の友人と後は職場の同僚くらい。コミュニケーション能力の低い俺は今更これ以上交流を広げられないだろう。するとその中で本当に愛せる、そして俺のことを愛してくれるオメガを見つけなければならないのだ。
学生時代の友人達はどちらもアルファーだったので除外。しかも既に伴侶を見つけて子どもも生まれている。となると職場の同僚になるが、うちの職場はアルファーがたくさん通う有名私立学園なだけあり、教師も優秀でないと務まらない。この中にオメガがいたとしても少ないだろうし、もちろん隠して働いているだろう。
あ、詰んだ。そう思った。
俺は無力だ。やればやるほど、動けば動くほど絶望感が強まっていく。
それでも諦めたくないと半年ほどは自分なりに頑張ったのだ。絶望が増しただけだったが。
もう疲れた。でも諦めたくない。
そんな気持ちの狭間で揺れ動いていた時、同僚である宇髄が飲みに誘ってくれた。普段はあまり飲まないが、この時は絶望からかやけ酒のようになっていたと思う。俺のそんな態度を見て哀れに感じたのだろう。宇髄は予想していなかったことを言い出した。
「冨岡さ、俺ひとりだけオメガのやつを知ってるんだけど」
「え」
「そいつに冨岡はどうだって聞いてやっても良いぜ。ただ、条件があるんだ」
「
……
どんな、条件なんだ?」
俺が食いつくと宇髄は指を一本立てて
「そいつだけを愛して幸せにする、絶対に浮気しない。他にオメガを娶らない。それがそいつが言ってる条件なんだがどうよ?」
と。
俺はテーブルに突っ伏していた身体を起こしてその指を掴む。まさにそれこそが俺の求めている相手だからだ。
「その条件を飲む! 俺は一人だけ、最愛の相手だけを愛し抜きたい」
そう伝えれば、宇髄は嬉しそうに笑って分かったと言ってくれた。良い奴だから本当は俺が幸せにしたかったが、俺にはもう嫁が三人いて振られたのだと余計な情報も言われたが。
さっそく宇髄はその相手にトークアプリで連絡をとってくれたので、俺は酔いを醒ましながらその返信を待った。
するとまもなく相手から返事が返ってきたらしい。曰く
「明日、一度会いたい」
と。
俺は待ち合わせ場所が世界のどこでも行くと言ったので宇髄に落ち着けと嗜められてしまった。でも本心からそんな気持ちだった。
数回のやり取り後、相手との待ち合わせ場所として宇髄に伝えられたのは職場と自宅の間にある駅の喫茶店。相手とは意外に家が近いのかもしれない。そんなことも嬉しくなった。
翌朝、自分なりに身なりが良く見える服を着て、髪の毛もちゃんと寝癖を直し、その喫茶店に向かった。楽しみ過ぎて着いたのは待ち合わせよりも全然早い時間だった。
大丈夫大丈夫。緊張で口から心臓が飛び出しそうなのを必死に抑える。お陰で美味しいと聞いていたコーヒーの味もよく分からない。勿体ない。
やがて小さな店内に誰かが入店してきた気配がした。その足音は真っ直ぐこちらに近づいて来る。俺は緊張から顔も上げられない。残念アルファーなので仕方ない。
「冨岡」
急に名字で呼びかけられて身体が少し浮く。
待って欲しい。この声は聞いたことがある。
聞いたことがある、というか、むしろ。
「待たせたなァ」
毎日、俺がくだらないことで怒らせては怒鳴られている声、に似ていた。
恐る恐る顔を上げる。
するとそこにはやっぱり俺の見知っている顔が見えた。
「不死川
……
」
「おう」
これが、俺と不死川が同僚としてではなく伴侶候補として出会った初めの一歩だった。
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