Nosmi
2025-12-31 22:48:12
15109文字
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醒めてくれるな、わが悪夢 1 (ライシュロ)小説

魔王ラと麒麟(空想上の動物の方)のキメラになったシュのライシュロ。暗い。
捏造設定が多いのでなんでも許せる人向け。




 それからというもの、ライオスがここを訪れる頻度は増した。
 実は本当に暇なのかと思ったが、明らかに疲れた顔で来ては仮眠だけ取って帰ることもある。無理をしてまで来なくとも、と言っても「でもきみの顔を見ると安心するから」と隈のある顔で力なく微笑まれてはそれ以上強く言うのも気が引けた。そういう訳で現状は話し相手か、疲れているようなら枕役に徹している。血の臭いを感じるようになってからは後者が増えたのが気がかりだが、本人が寝不足の理由を話そうとしない。本当に深刻な状態であればファリン達が黙っているはずがないので大丈夫だとは思うが。
 おそらく地上を目指すライオスとそれを阻止したい地上側で戦いが激化し、その分休息の時間が減っているのではないだろうか。迷宮内に篭っていれば何不自由なく過ごせるはずなのにそうまでして出たがる理由はわからない。まさか東方に行ってみたいからではないだろうが、あの男のことなので完全に否定できないところが悩ましい。俺とファリンを元に戻すことに関係している可能性もなくはない。俺はともかくファリンについてはマルシルが血眼になってその方法を探しているらしいが、未だ成果が上げられていないところを見るに迷宮内の情報だけでは限界があったのかもしれない。とはいえ外の状況を知る術がろくにないので全ては推測に過ぎないのだが。
 地上に、元の姿に、俺は本当に戻れるのだろうか。戻りたいとは思っている。思っているが正直言ってライオスは今の俺を気に入りすぎている節があるので方法が判明してもすんなり行くとはあまり思えない。無理にでも戻れば関係も昔のように戻るだろうか。それとも興味自体を失うだろうか。触れられることも見つめられることもない、温度を感じないあいつを想像してみたが上手くいかなかった。
 だが結局のところ、今現在俺の命がライオスの胸先三寸であることに変わりはない。迷宮の主は遅かれ早かれ必ず狂うという。正気を失ったあいつはどうなるのだろう。俺の終わりをどう望むのだろうか。そこまで考えて嫌に説得力を持った想像が頭をよぎる。皿の上に横たわり、動かぬ自分に近づくナイフとフォークを持った男の手。

 ふいに悪寒を感じて思わず身を震わせた。気づけばもう日も落ちつつある。気温も川の水温もさほど冷たくはないが、さすがに長く浸かりすぎている。目眩も吐き気もとうに治まっていたので早く岸に上がるべきだと頭ではわかっていたが、どうしてか動く気になれなかった。川面にきらきらと反射する光が眩しい。金の色を帯びてこの目を刺すそれは誰かの瞳を彷彿とさせた。
 その目に不安を滲ませて、何か欲しいものはないかと尋ねる姿を思い返す。
 欲しいものならもちろんあるとも。俺だって人なのだから。しかもお前が「なんだそんなことか」と容易く与えられるようなものだ。だがそれでは意味がない。己自身から得られたものでなければ満たされることは決してない。

 ライオス、俺は理由が欲しい。
 お前と対等であれる理由が。俺が俺でいられる理由が。

 俺は生きる理由が欲しい。