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Nosmi
2025-12-31 22:48:12
15109文字
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醒めてくれるな、わが悪夢 1 (ライシュロ)小説
魔王ラと麒麟(空想上の動物の方)のキメラになったシュのライシュロ。暗い。
捏造設定が多いのでなんでも許せる人向け。
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「
……
あ、ああ!地上にだろ!?もちろん戻れるよ!ただ今はちょっと出口を塞がれてて出られないけど、一時的なだけだから!早く片付けてみんなで地上に戻れるよう頑張ってるからもう少しだけ待っててくれないか!」
突然勢いよく捲し立ててきたライオスに面食らう。いきなり何を言い出すんだと驚いたが、焦った表情に泳ぐ目と、わざと違う意味で受け取って誤魔化しているのは明らかだった。
「やっぱり故郷に帰りたいよな!俺はそういうの無いけどいいと思うよ!確かワ島だっけ?俺ずっと東方群島に行ってみたいと思っててさ!よかったら一緒に───」
「おい、ライオス
……
」
落ち着け、という意味で名前を呼ぶとライオスはぴたりと喋るのをやめた。そして今度は誤魔化しを咎められたと取ったのか、叱られた犬のようにしゅんとした顔でぽつぽつと話し始めた。
「
…………
正直に言うと、わからない。翼獅子は確かに叶える力を持っているけど、それはその過程で具体的な方法がわかっている場合だけなんだ。無条件ですぐ欲が叶うわけじゃない。君やファリンのように一度混ざった魂を分離させるためには何が必要なのかがわからないと
……
」
「わからないのに混ぜたのか」
「うっ
……
君の気持ちも確認せずに勝手なことをしたのは悪いと思ってる。でも色々あって
……
マルシルは魔力切れを起こしてたしファリンはマルシルを安全な場所まで運んでていなかったし、君の死体は損傷が激しくて蘇生させるにも足りないものが多かったから
……
それで翼獅子と相談して
……
」
「そこまでして何で俺を
……
」
だって、とライオスは子供じみた口調で呟いた。
「きみにもう二度と会えないなんて、そんなの絶対嫌だった」
呆気に取られるしかなかった。だってそうだろう。そんな、
たったそんなことの為に?
会えなくなるのが嫌だから、という理由だけで悪魔に蘇生させて病気になれば付きっきりで看病して原因を調べ、たった一人が暮らす為だけに空間ごと改造しては安定した後も小まめに様子を確認しに来る、と?
どう考えても労力に見合っていない。他にやるべきことなどいくらでもあるだろうが。
絶句して引いている俺を見てライオスは不思議そうな顔をしていたが、何か変な発言をしたようだということには気づいたらしく慌てたように大声を出した。
「で、でも!俺にできることなら何でも叶えてみせるから!何が欲しい?何がしたい?どんなことでもいい、君の願いを聞かせてくれよシュロー。俺が叶えるから
……
だから
……
」
言い募る声が段々と尻すぼみになっていく。痛いくらいに握っていた手も緩んでもはや添えているだけだ。
「えっと、だから
……
その
………
君に会うのを
……
いや、俺がここに来るのを許してほしい
……
」
そう言って顔色を伺うように上目遣いでこちらを見つめる男に俺は心底呆れてしまった。
「許すも何も、それを決められるのは迷宮の主であるお前の方だろう」
「でも君の為の場所だ。それに君が本当に嫌がることはしたくない」
眉を下げながらも真っ直ぐな目でライオスはそう言い切った。
そうだった。こいつは至極真面目な顔をしてこういうことを言う奴だった。正しくないことをした自覚はあるくせに、後悔だってしているくせに、欲しいものは決して諦めようとしない。手放さない。それでいてその中に悪意が全くないものだから始末が悪い。
そして迷宮の主という、権力の頂点にいる自覚がまるでない。悪魔への命令一つで生命の法則すらねじ曲げる力を持っているのだ。逆らったり意に沿わないことを言えばどんな目に遭うかわからない、という恐れをわかっていない。探索していた時と同様に、どんなに自分の意見や要望を通したくても無理強いせず、誠実に話して相手の同意を得ようとしている。一人一人ができることには限界があるからそうやって力を合わせて乗り越えてきたように。
だから命令して従わせようという気がない。こんな状況になってもなお俺を自分と対等な相手だと思っている。
ああ、お前のそういうところが本当に妬ましい。
だが今の俺にはその妬ましさが唯一の拠り所だと言えた。麒麟は他者を妬んだりしない。ましてや格上の存在に対して羨みはしても、妬みを覚えるのは相手を自分と同格以下と見なしている場合だけだ。つまり召喚者に服従する魔物ではなく元々の俺からでなければ生まれないものだと言っていい。ライオスにこの感情を抱えている限り、人間としての俺は消えていないということだ。妬みなど本来は望ましくないであろうその感情が己の存在証明になるとは皮肉なものである。
それでも、その身勝手な善性からずっと目を離せないでいる。
包まれていた手をゆっくり振り解くと拒絶されたと取ったのか、眉を下げてわかりやすく悲しそうな顔になる。その表情に少しばかり溜飲が下がって、これも俺だけの気持ちなのだ、と思った。そして次の言葉であっさり機嫌の治った顔を見るのがちょっと癪だな、とも。
「
……
お前の好きにすればいい。俺は構わない」
目を丸くした表情が変わる前に正面のライオスへ身体を預けた。角が当たらないよう顔を背けて肩口に頬を押し当てる。こうすれば顔を見なくていいし見られない。はしゃぐ声くらいは、まぁ、我慢しよう。
しかし予想した反応は得られなかった。何も言わず身動きもしない。不審に思って少し顔を浮かせかけるとぎこちなく腕が背中に回された。いつもの抱擁かと思ったが、段々腕の力が強まってそのうち息苦しいくらいになっても無言のままだ。表情がわからないのも相まって逆に心配になってくる。
「おい、ライオス
……
ライオス?」
「ごめん
……
もう少しだけ
…
」
呼びかけに対してようやく漏れた声は酷く頼りないものだった。ライオスの行動はいつだって想定外ではあるが、こんなにも弱々しい姿を見せたことがあっただろうか。こうなっては無下にもできない。
「それなら力を緩めてくれ。苦しい」
「うん
………
」
返事だけで結局力加減は変わらなかった。それどころか頭をぐりぐりと寄せてくるので苦しい上に痛い。抗議として相手の背を何回か軽く叩くと寝起きでむずがる子供のような声を上げてようやっと解放された。
もしや泣いているのではと思ったが目元は濡れていなかったのでわずかに安堵する。ただいつもよりこちらを見つめる瞳に熱がこもっている気がして落ち着かない。そんな俺に気づいているのかいないのか、ライオスは少し垂れた目の輪郭を柔らかく細めると噛み締めるように言った。
「君がいてくれて本当に良かった」
「何故だ。俺は何もしていない」
心底意味がわからず首を傾げる。ライオスはそれを聞いてきょとんとしたかと思うと次には息が漏れるように、ふは、と笑った。不可解に不可解を重ねられて思わず眉根を寄せる。
「何がおかしい」
「ああ、違うよ。馬鹿にしたんじゃないんだ。でもわからないのか?本当に?」
わからないから聞いているというのに念押しで聞き返されてますます眉間にしわが寄る。それに対してライオスは笑顔のまま一言ごめん、と悪びれもせずに謝ると、不満げな俺の顔に手を伸ばした。指の背で頬をするりと撫で上げ、眉間のしわを親指で伸ばされる。上機嫌のくせに教える気はなさそうだ。何とも面白くなくて口をへの字に曲げればそこも宥めるように撫でられる。唇のむずむずとした感触に顔を背けると大きな手のひらが首の後ろに回って引き寄せられた。そのままうなじにある鱗の凹凸を確かめるようになぞられて背筋が震える。そしてその唇が耳に触れるほどの距離で、蜜を煮詰めたような声を流し込まれた。
「きみのそういうところが好きだよ」
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