朔文小説まとめ

朔文の短めの小説(最大でも2000字)をまとめました。





【ルート通りに歩いて】


晴れた日の午後。文花ふみか朔叶さくとと一緒に近所のスーパーに来ていた。迷子にならないようにとがっちり繋がれた手に引かれて歩く。カートの上にカゴを乗せて、野菜コーナーから見て回る。
朔叶の頭の中には、「この順番で回る」というルートが描かれた地図が広がっていて、毎回そのルートを丁寧に沿っていく。ほんの少しでもルートを外れるのは嫌だった。
しかし文花の頭の中にはその地図が無い。興味あるものを見つけたらそちらに自然と目と足を向けてしまう。

「ふみちゃん」

ほんのわずかに動いただけだったが、朔叶は即座に気づき呼び止める。振り向くとゆるく細められた青緑色と目が合う。

「僕から離れないで」

声音は優しいのに、有無を言わさないような緊張感が言葉に込められていた。

「ちょっと見てくるだけだから」
「だめ」

繋いだ手にさらに力がこもる。繋ぐというよりもはや掴んでいる。

「僕の用事が終わったら一緒に見てあげるから。それまで待てる?」

幼い子に言い聞かせるような口振りに文花は複雑そうに眉を寄せたが、了承以外は認めないと言わんばかりの圧が、朔叶の瞳の奥から発せられているのを見て、渋々でも頷くしかなかった。

……うん、分かった」
「ありがとう。ふみちゃんはいい子だね」

地図上のルートに文花が無事戻ると、朔叶は安心したように微笑んだ。……しかし握られた手の力が弱まることはなかった。