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雨音
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黒薔薇のトリカゴ
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朔文小説まとめ
朔文の短めの小説(最大でも2000字)をまとめました。
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【「かわいい」】
文花
ふみか
と二人きりで過ごす穏やかな時間。
夕暮れの光が差し込んだ部屋で、ふとした瞬間、
朔叶
さくと
の胸の奥で抑えきれない感情があふれる。
きっかけなんてものは無かった。ただ隣にいる文花を視界に入れただけで浮かび上がってきた想いだった。
朔叶は文花の背に手を回す。
そっと引き寄せ、腕の中に閉じ込めるようにして抱きしめる。
少し間を置いてから文花の耳元で、吐息混じりの声で囁いた。
「
……
ふみちゃん、かわいい」
最初は一度だけ。けれどその言葉の響きが心に染み渡り、もう一度、もう一度と自然に口をついて出てくる。
「かわいい
……
ほんとにかわいい
……
」
熱に浮かされたように夢中になって囁き続けた。するりと、文花の艶やかな髪を指ですくうように撫でる。
文花は最初、照れ笑いを浮かべて「ありがとう」と応えた。
しかし朔叶は止まらない。
その声が熱を帯びて、回数を重ねるごとに空気まで甘く溶かしていく。
「ふみちゃん、かわいい
……
かわいい
……
」
その言葉が十回を超える頃には、文花の頬は淡い桃色に染まり、甘い熱がこもった視線を正面から受け止めることができなくなってきた。
胸の奥がくすぐったくて、恥ずかしくて、けれどどこか嬉しい。
「さく、分かったから
……
」と呟きながら、耳まで赤くなった顔を隠すように朔叶の胸に押しつける。
頬の体温がじんわり、彼のシャツに小さく伝播する。
朔叶はその様子を見て息を呑む。そして愛おしそうに目を細め、腕の力を少しだけ強めた。
「ふみちゃん、本当にかわいい。かわいすぎて、どうしたらいいか分からなくなるくらい
……
」
困ったように眉を下げたその顔は、優しく柔らかいものだった。
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