ロマン君がぬくぬくとしたお布団から出て行きたくなくてうだうだする話

BLではありませんがこの生産ラインではマーロマ(順不同)も生産されています


 ここがいいと思ったから、ここにした。

 大学進学を機に始めたロマニ・アーキマンの一人暮らしは一つの欠点を除いて、概ね順調に進んでいる。生活の要と称される衣食住の中でも特に生活の質に寄与する住まいは吟味に吟味を重ねこれぞという物件を選んだだけあり、今現在非常に充実した大学生活を送っている。
 大学へのアクセスは良好。近所には手頃な価格帯のスーパーとドラッグストアにいざという時のコンビニ。決して築浅とは言えないがリノベーション済みのおかげで住み良い設備と管理しやすい程度の広さを備えた部屋。ネット回線の速度にも不満はない。(あまりに気にする性質ではないのだが、父がどうしても言うので)某事故物件サイトでも事前に調べたがこれといった心理的瑕疵も無く、これだけの好条件が揃っているにも関わらず手頃な家賃をしていた。更に近所に旨い飯屋と条件の良いアルバイトを見つけたとなれば、これ以上を望むべくもない。
 妥協せずに選んだだけあってロマニはこの部屋には大いに満足しているのだが、内覧に着いてきた父は何故かこの部屋には普段の理性的な態度からは想像がつかない不自然な難色を示した。この部屋の条件にはロマニと同じく一切の不満がないというのにだ。
 曰く、ロマニが部屋に踏み入れるなり「ここにする」と宣言したのが気に入らないのだと。
 確かにそれは事実だったがロマニの即断は好条件故である。そんなことで反対されては一生部屋が決まらない。だからソレを理由にするのは勘弁してくれと父を説き伏せれば、普段の理性的な判断力をもって渋々といった様子でようやく受け入れてくれたが、それでも最後に一言添えるのを忘れなかった。

「だって、きみはいつもは優柔不断すぎるくらいだろう」

 それはまぁ……、そうだけれども。でもそんなこと言われてもなぁ。ここだと思ったのなら、それは良いことだろうに。
 だが今思えばこの父の珍しい不自然なまでの心配は決して杞憂ではなかった。
 それでも重ね重ね言うがロマニ・アーキマンは今住んでいるアパートには一切の不満がない。これは未だに変わらぬ純然たる事実であるし、明日父が訪ねてきても胸を張ってそう主張するつもりだ。
 ただし、生活には一つばかりの瑕疵がある。これをアパートに由来するものと捉えるのかは人によるだろう。ロマニはというと、「よしんばアパートのせいだったとしても、今の生活を手放してまで解消しようと思わない」という結論を選んでいる。
 少しばかり変な夢を見るくらい、それがなんだというのだ。