匣舟
2025-12-14 18:40:59
16321文字
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おかしといたずらどーっちだ?

秋リクエストで頂いたハロウィンパーティーをするいちは乱です。
更新系で進めていきます!遅くなってすみません!


A.おかしより、いたずらさせて?

庄乱伊

 ハロウィンパーティーが始まると、テーブルの上に置かれているお菓子を手に取る人や、最初に自分が持っているグラスに入っている物を飲む人などひとりひとりする行動が違うため、やっぱりおもしろいなあ。と乱太郎は持ってきていた一眼レフカメラを構えてみんなからは少し離れた場所でカメラのシャッター音を切っていた。
 パシャパシャとカメラを撮るたびにカメラのモニターに映っているみんなの顔が楽しそうで乱太郎はそれを見て嬉しくなった。
 ハロウィンパーティーが終わったらそのまますぐに家に帰ってパソコンを立ち上げて写真のレタッチとか調整をして、現像もして、みんなにサプライズとして渡すのもありかな?と一人でカメラを構えながら考えていると、乱太郎の後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。
「乱太郎、ハッピーハロウィン。」
「乱太郎、ちゃあんと楽しめてる?ずっと写真撮る気じゃないだろうね?」
「あ、庄ちゃんと伊助!そんなことないよぉ、ちゃんと楽しむってえ〜!」
「ふうん?」
 カメラを構えている乱太郎の後ろに立っていたのは自分と同じく運が悪かったせいか女性服のキョンシーの恰好をしている庄左エ門と、メイド服を着ている伊助だった。伊助の手には籠が握られていて、その中にはテーブルの上に置いてあったであろうお菓子がたくさん入っている一方で庄左エ門はただ腕をピーンと前に伸ばして乱太郎のことを無表情で見下ろしていた。
 なぜか無表情で庄左エ門に詰められているような気がした乱太郎はハッピーハロウィン?と言いながら伊助に目線で助けを求めた。乱太郎の目線を感じ取った伊助は笑いながら庄左エ門を見て口を開いた。
「ふふ、庄ちゃん、仮装したとしても本格的にキョンシーをしたらだめだよ。僕は分かったけれど、乱太郎分かってなくてっく、困ってるじゃないか!」
「あれ?伝わらなかったか、驚かせてごめんね、乱太郎。」
 そう言いながらも腕をピーンと伸ばしたまま無表情で乱太郎のことを見つめる庄左エ門に乱太郎はううん、大丈夫だよ。と乾いた笑いを口から出すことしかできなかった。
「というか、二人はどうしてここに?」
「そりゃあ、ね。」
「ねえ?」
「え、なに、二人だけ意思疎通して怖いんだけど!?」
 いつの間にかニコニコして乱太郎にじりじりと近づいてくる二人に乱太郎は一歩ずつカメラを持ちながら引き下がる。な、なんか言ってくれないと困るよお~!?という乱太郎の泣き言にも似た叫びは二人の耳には届いていないようで、その間にも一歩、一歩引き下がる乱太郎の足についにひんやりと冷たい壁の感触が伝わる。
 しまった。壁のこと忘れてた!と乱太郎が思った瞬間にはもうニコニコ顔の二人が自分の顔の横に手を置いて壁ドンをしながらこちらを見つめていた。庄左エ門の顔はいつの間にか無表情に戻っていたが。乱太郎は二人に何か言って!と問いかけようとした途端、二人が同時に口を開いた。
「「らんたろ、とりっくおあ、とりーと?」
 にたり、とこちらを見つめてくる庄左エ門と伊助がキョンシーでもメイドでもなく乱太郎には悪魔に見えた。
 誰かに助けを求めようともしたが、ちょうど三人がいる場所がみんながいる場所の死角になっているし、乱太郎の視界には庄左エ門と伊助のにたり、と笑った二人の顔しか見えないのでもう完全に詰んでいるのである。
「う。お菓子は、いま、もってなくて。」
 当然ながらハロウィンパーティーが始まってからみんなの写真を撮るのに明け暮れていた乱太郎の手元にはお菓子などひとつもない。そんなこと目の前にいる二人は知っているはずなのに、持っていないのを良いことに、二人は満面の笑みで口を開いた。
「へえ、じゃあ、いたずらだね?庄左エ門」
「そうだね。さあ乱太郎、どんないたずらがいいと思う?」
 耳元で庄左エ門と伊助が囁くたびに背中がぞわぞわして落ち着かない。乱太郎はうう……と逃げるようにして顔を真っ赤にして下を向いても、その隙を二人が見逃すわけもなく、右から無表情のキョンシーに擬態した庄左エ門が、そして左からメイドカチューシャを頭に付けてにこり、と笑っている伊助の顔が迫ってくる。
 二人の迫ってくる顔に耐え切れなくてきゅっと目を閉じた乱太郎は、伊助からね、口開けて?という声に対して無意識に従ってしまっていた。ぱくり、と小さく口を開けると伊助からうん、素直でかわいいね。と優しく言われる。
 乱太郎の口の中に入ってきたのは、よく市販で売られているいちごミルク味の飴だった。なあんだ、これがいたずらなのか。と少し拍子抜けな乱太郎の口にぬるり、と飴ではないなにかが入ってきた。
「んっ!?」
 それがどっちかの舌だと気づくまでに時間はかからなかった。甘ったるいいちごミルクの味をもっと濃厚なものにするかのような唾液と乱太郎の唾液が混ざり合う水の音。うっすらと目を開くとそこにはニコニコしている伊助がいた。
 伊助、これはいたずらなんていうものじゃないんじゃないかなあ!?と乱太郎が涙目になりながらも伊助に目だけで訴えているとぷはっ、と小さな声を出して乱太郎から離れる。すると、今度ははあはあと呼吸を整える暇もなく、庄左エ門が乱太郎の唇に口付けをしてきた。
「ふう……ぅ、ん、ん~~っ!?」
「ふふ、乱太郎、もう力抜けてきちゃった?かわいいねえ?」
「んんっ!?~~っ!」
 いちごミルクの味はまだ濃厚さはなくとも少し残っているのだが、どちらかと言えば乱太郎の唾液と庄左エ門の唾液が絡まり合い、気持ちいいのか苦しいのか分からなくなってきていた。
 空いている手で力の入らない状態のまま庄左エ門の肩を弱い力で押し続けていると、それに気づいた伊助が庄ちゃん、そろそろやめてあげなよ。と言う。その声に対して庄左エ門は後ろ髪を引かれる思いで唇をゆっくり離した。
「ぷはぁ……っはあ、はあ……
「大丈夫?乱太郎?」
 腰が抜けて立てない乱太郎を支える伊助と庄左エ門にキッと鋭い目つきで睨むが、今の乱太郎の瞳はとろんと蕩けているので、そんな瞳で見つめられても伊助と庄左エ門にとっては逆効果だった。
「だれのせいだと、おもってるのお……?」
「僕らだね?」
「反省の色がないよ、しょうちゃんっ!」
「でも、らんたろ、かわいかったよ?」
 乱太郎の頬をするりと撫でながらとろけるような顔でこちらをみつめる伊助の手を跳ねのけて自分の顔を覆った。
「かわいいとかかわいくないとかのもんだいじゃないぃ。」
「いいや、かわいかったよ?いつもよりすっごくかわいく見えたからもっと攻めたくなっちゃったんだよねえ、庄左エ門?」
「うん、そのせいでちょっと抑えが効かなくなっちゃったけど……。」
「もう……。ほんと二人して、悪魔みたいじゃん……っ!」
「「悪魔?」」
 今着ている衣装に微塵も悪魔さを感じられなくてなんで悪魔?と首を傾げる二人に乱太郎はぼそぼそと呟くように答えた。
「二人とも、ぜんぜんキョンシーとメイドじゃないんだもん……。」
……
ああ、そういうことね、」
……ううう……はんせいしてえっ……!」
 ごめんごめん、と謝る二人は全く反省している様子がなく、また二人の間で捕まったら何されるかわからないと考えた乱太郎は素早い動きで伊助と庄左エ門の間から逃げていった。
「あー……。逃げちゃったね、庄ちゃん。」
「うんまあ、パーティーもそろそろ終わるし。あとでまた二人でいたずらの続きしてあげたらいいんじゃないかな?」
 ほら、乱太郎ってやられたことすぐわすれるじゃない?だからまた何の疑いもなく僕たちの元に来てくれるよ。と笑う庄左エ門に、伊助もその姿が想像できて、くすりと笑った。
ふふ、そうだねえ、庄ちゃん、次はどんなことしてあげよっか?」
 乱太郎が走り去っていった方向を見ながら伊助と庄左エ門たちは、あとでどんないたずらをしてやろうかな、と脳内で考えつつ、顔を見合わせニヤリ、と笑い合ったのだった。