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はいで
2025-11-16 13:32:02
24560文字
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鏡合わせの挑戦者
文字数:約22,000文字(本文のみ、あとがき含まず)
もしもサバージオスが分離に成功して、オデュッセウスと試合をしたら?
「俺と戦ってくれ」
軽やかな徒手空拳。躍動する四肢。飛び交うファンネル。
相対する二つの巨大ロボット。
「「終焉の大木馬(トロイア・イポス)!!」」
よく似た、しかし異なる意思を持った声が、輪唱する様に唱和する。
筆者は観戦したい。
…この激熱展開、どうやったら見られる?
「せや!!六騎目の霊基にサバジ移したろ!!」
つー訳で形にしてみました!
俺の考えた最強のバディ・バトル展開を食らえ!!
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オデュッセウスが構えていた弓を降ろす。
サバージオスも全身から力を抜いたが、戦闘の緊張が解けた途端に、遠のいていた気分の悪さがぶり返してその場に蹲った。
どうにか無様を晒さない様にと耐えるが、喉元が苦しい。
「
……
っ」
シミュレータールームの扉が開いた。
マスターが扉を抜けて、急いで駆け込んでくる。
「オデュッセウス!これ渡して!」
マスターが放り投げたバケツをオデュッセウスは即座に受け取り、サバージオスへ手渡した後、マントを広げて彼の姿をマスターの視界から隠した。
「
……
!」
鳩尾を思いっきり殴られたのである、辛いがこうもなる。むしろここまでよく我慢したと言った所か。
「ふーっ
…
」
「タオルとお水もあるよ!使って!」
歴戦のマスターは臆する事なく、手慣れた様子でペットボトルの水でタオルを濡らし絞った物を手渡した。オデュッセウスの手を経由して渡されたタオルで、サバージオスは簡単に身を清めた。
「
…
助かった、手間をかけたな」
「なに、戦場ではよくある事さ」
いつもと変わらない程度にサバージオスが落ち着いた所で、オデュッセウスはマントを降ろす。
「そうそう!全力で戦った結果なんだから、恥ずかしくなんてないよ。
はいっこれお水!」
「ありがとう、マスター」
マスターが渡すペットボトルをサバージオスは受け取った。
「それよりもさ!さっきの戦い、何を考えながら動いてたのか後で聞かせてくれない!?凄すぎてさ
…
!ものすごく気になってて
…
!!」
「そうだ
…
!サバージオス、俺も聞きたい事が山ほどあるんだ
…
!」
マスターとオデュッセウスが待ちきれない、と言った様子でワクワクとしている様を見て。
サバージオスはフッと笑みを浮かべて、少し、水を飲んでから言葉を返した。
「今からで大丈夫だ、感想戦と行こう」
二人がワアッと子どもの様にはしゃぐのを見て、サバージオスは和んだ。
オデュッセウスが待ちきれずに口火を切る。
「まず聞きたいのはアイギスが勝手に動いてた事なんだが、アレはどうやったんだ!?俺も知らないからびっくりしたぞ!」
「アレか、アイギスにはパワードスーツとしての機能があるだろう?
俺はアイギスをハッキングして動力系の機能を弄って動かした。予めプログラムとして動きを入れてたから、あとは自動だな」
「なるほど、そうやったのか!特異点でも木馬をハッキングしてたもんな」
「お前と同じ霊基でやって不具合でも出たら迷惑をかけるからな、俺専用の霊基ができたお陰で試せた」
「アイギスを脱いだのはどのタイミングなんだ?」
「木馬を隠れ蓑に使ったタイミングだ」
「トロイの木馬を本来の意味で使ったんだな」
オデュッセウスはトロイア戦争で木馬の内に潜んで、奇襲をかけた時の事を思い出して唸った。
「そう
…
俺はサバージオスが宝具を撃ったのが意外だった。
俺はお前が進んで宝具を使うとは考えていなかった。だって、今回の状況だと、お前が宝具を撃った後に俺が先手を取るのは確定している様なものだからな。わざわざ不利になる手を打つ理由がお前にはない。
でも、実は宝具自体が囮だった、そういう事だな?」
「そうだ。
最後の一撃を加える為に木馬を囮として使った。理由はお前が今言った通りだ。
俺が宝具を撃つ事、それはすなわち俺の方から敗北へ向かってゆく様な事だ
…
お前はそう捉え、俺が宝具の使用を控えると考えた筈だ。
…
だからこそ、俺はあえて宝具を使った。
お前の裏をかく為に、お前が想定しないだろう動きを取った。それ位しないとお前には勝てないだろうからな。
本命は最後の一撃だったさ」
そして、サバージオスはまんまとやりおおせたのだ。
全てを出し切れたという達成感がある、やりたかった通りの動きができた。
だが
…
それと同時に悔しさも湧き出る。
「お前の霊基より俺の方が出力が劣る以上、正面から行った場合に勝つのはお前だ。だったら奇策で攻めるしかない。
お前より弱くとも一矢報いてやりたかった、それが俺の全てだ」
「いや、いいや、サバージオス!お前はとても強かった!」
サバージオスの陰を帯びた言い回しに、オデュッセウスは黙っていられずに力強く語った。
「不利な条件にも関わらず、お前のできる手を尽くし、俺とは全く異なる戦い方をしたんだ。
俺はお前ともっと対等な条件で戦いたかったと悔しくなったぞ
…
!
これだけ強い相手だ。完全に対等な条件で戦えたらどんな戦いになったのかと
…
!」
「フフフ、その表情が見られただけで少しは報われるというものだ。
まあもっとも、お前にまんまと上を行かれた訳だがな。
まさかあの弓を打撃に使うとは思わなかった」
「
弦なき愛の輝弓
ペーネロペー
だな」
オデュッセウスは、愛する人の名を刻んだ装備の名を、少年の様にはにかみながら口にした。
「俺が最も信頼する装備だ。だから生前から色んな使い方を試したものさ。
強靭さは折り紙付きだし、マントの下に忍ばせて不意打ちに使うのにも丁度いい。
愛用の品だから信頼している」
「なるほど、愛の強さがお前の勝因か」
サバージオスは得心が言ったとばかりに頷く。
「改めてそう言われると恥ずかしいな
…
」
「恥ずかしい事などない、誇れ、堂々としろ。
俺はお前に勝つために全力を尽くしたが結局勝ったのはお前なんだ、勝者らしく振る舞え」
「はは
…
お前のお陰で勝ったぞ、
弦なき愛の輝弓
ペーネロペー
。ありがとう」
そう言いながら、弓を撫でる手つきはとても優しかった。
その後に、オデュッセウスはサバージオスへと改めて向き直る。
「なあ、サバージオス」
「どうした?」
オデュッセウスの穏やかな声がサバージオスへと語り掛ける。
「知ってたか?俺はお前と顔を合わせて話すのはこれが初めてなんだ」
オデュッセウスの嬉しげな表情を前に、今更のように、サバージオスはまだ素顔を見せていなかった事を思い出した。
「そうだったか?
…
ああ、確か検査の後にも似たような話をしたな」
「お前は特異点の俺と戦ったから俺の顔は直接見た事があるだろうけれどもな。
ここに居る俺には一度も機会がなかったさ。
さっきだってお前はアイギスを纏っていただろう?」
「そういえばそうだな」
本来の姿を失っているサバージオスの姿形は、現在は殆どが借り物であるオデュッセウスと同じだった。
黒い右手以外には、違う所といったら金髪と赤い眼だけで顔立ちは全く同じである。
サバージオスは「見慣れた顔など改めて目にした所で面白みもないだろう」と考えていたので、わざわざ見せる必要性は感じていなかったのだが。どうやらオデュッセウスにとっては違ったらしい。
オデュッセウスは心なしか弾んだ声で語る。
「俺はいつも声を聞きながら想像していたんだ、お前はどんな表情をして話す奴なんだろうかと
…
俺が背中を預けている相手はどんな表情をして振る舞う奴なんだろうかと」
そこまで言って、オデュッセウスはくしゃり、と破顔する。
「実際に向かい合ってみたら、思った通り過ぎてびっくりした。
今日お前と向かい合って話ができて、俺は嬉しい」
オデュッセウスが感慨深げに熱心な視線で見つめてくるので、サバージオスはこそばゆくなり、顔を逸らしながら文句を言った。
「あまりジロジロと見るな、俺は負けたんだぞ」
「いいや、きっとお前は勝ったんだ、そうだろう?」
「どういう意味だ?」
あまりにも素っ頓狂な物言いに、サバージオスは思わず顔を戻して問い返してしまった。
「だって、お前は誇り高い勝者の顔をしている。
今日のお前の戦い方には譲れぬものがある
…
そんな決意が見て取れた。そしてお前はさっき、全力を尽くしたと言っていた。
お前が戦っていた相手は俺だけではない、サバージオスは己の限界にも挑戦していたんだろう?
だからお前は俺との勝負に負けても、もう一つの戦いで勝利を収めたんだ。
…
俺はそう考えているんだが、どうだ?」
サバージオスは虚を突かれて言葉を失った。
(まるで俺の内面を汲み取ったような)
そう、この戦いの中でサバージオスは心に決めていたのだ。
己に恥じない戦いをと、そしてオデュッセウスに恥じない戦いをと、制約の中でできる事を尽くしたのだ。
「ずっとお前と肩を並べてきたから、言わなくてもわかるさ」
真摯で真っ直ぐなまなざしを前にして
…
取り繕っているのが馬鹿らしくなってきた。
「
…
はっ、読み取られてもそう不思議でもないか。お前とは長い付き合いになったからな」
サバージオスがプライド故に捻くれた物言いをしても、オデュッセウスという男は正しくその意味を汲み取れるのだ。
そして、長い年月を共に並んで戦ってきた戦友に讃えられて、嬉しく思わない程サバージオスは冷徹ではなかった。
「なあ、オデュッセウス」
だからサバージオスは思い切って心の垣根を取り払って、素直に問うてみる事にした。
「俺はお前の戦友に足る存在か?」
分離を望みながら、同時に、不安もあった。
サバージオスはオデュッセウスに肩を並べて恥ずかしくない存在で居続けられるだろうかと。
今日の戦いは詰まる所、その是非を己へ問う為に受けたのだ。
「もちろんだとも!」
その答えはオデュッセウスの笑顔の中にあった。
「俺は今日改めて思ったぞ。
お前と肩を並べられて、そして向かい合って戦う事ができて良かった」
そう言って、左手の平を高々と掲げたオデュッセウスに対して。
サバージオスは右手を掲げて応え、手の平を勢いよくぶつけた。
パンッ、と軽やかな音を立ててハイタッチを交わし、二人は賞賛を分かち合った。
「これからもよろしく頼む、戦友よ」
「フッ、精々お前に置いて行かれない様に付いて行くとしよう」
暫くの間、二人は黙ったまま余韻に浸った後に
…
先ほどから黙ってしまっているマスターを案じてそろって顔を向け、声を掛けた。
「ところで
…
マスターは質問しなくていいのか?聞きたい事があるんだろう?解説するから遠慮なく聞け」
「いや
…
いや、もう
…
聞きたい事は二人が全部話してたし
…
」
マスターはプルプルと子鹿の様に震えていた。
「それにもう
…
今の二人のやり取りが熱すぎてお腹いっぱいっていうか
…
感動しちゃって
…
!
俺がこんなすごい二人のマスターでいいの?って気持ちになっちゃって
…
もういっぱいいっぱいなんだ」
タンマ、とても宣言するかの様に手を掲げて、顔を伏せるマスターの言葉に。
二騎のサーヴァントは思わず笑いだした。
「フフフ」
「ははっ!」
一方は静かに、もう一方は活発に。
正反対の、しかしよく似た声が唱和してシミュレーションルームに響いた。
「借り物の霊基の俺だが、マスターにそう思って貰えるならば努力した甲斐がある」
「俺達がマスターにそう言ってもらえる勝負ができたんなら、それで満足だ。
これからもよろしくな、マスター」
「うん
…
うん
…
!!」
こうして。
カルデア史上初の同霊基対決は、両者の異なる輝きを示して幕を閉じたのであった。
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