はいで
2025-11-16 13:32:02
24560文字
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鏡合わせの挑戦者

文字数:約22,000文字(本文のみ、あとがき含まず)
もしもサバージオスが分離に成功して、オデュッセウスと試合をしたら?
「俺と戦ってくれ」
軽やかな徒手空拳。躍動する四肢。飛び交うファンネル。
相対する二つの巨大ロボット。
「「終焉の大木馬(トロイア・イポス)!!」」
よく似た、しかし異なる意思を持った声が、輪唱する様に唱和する。

筆者は観戦したい。
…この激熱展開、どうやったら見られる?
「せや!!六騎目の霊基にサバジ移したろ!!」
つー訳で形にしてみました!
俺の考えた最強のバディ・バトル展開を食らえ!!





「行くぞっ!」
 オデュッセウスが鬨の声と共に、素早い動きで殴りかかる。
 サバージオスはその動きを受け止め、いなし、時にアイギスを使いながら距離を取っていた。
「この程度は!」
 彼らが生きた時代において、格闘術は戦士の嗜みであった。
 オデュッセウスは多芸だ。剣も槍も弓も扱える。トロイア戦争など、戦場の将として人前に立つ場面では威厳を示す為に武器を手に取る事が多かった。
 それでもライダーのサーヴァントとしてはなぜ徒手空拳を主体に戦っているかと言うとなぜだろうか?サーヴァントは座の英霊の一側面に過ぎず、時には記憶の全容が掴めない事がある。オデュッセウスにも思い出せない記憶があった。だから英霊の座の己が何を考えてこう送り出したのかは掴みかねる。
 ただ、オデュッセウスには直観があった。
(一番、この霊基の俺らしく戦える気がする)
 何物にも縛られず、自由に身体を動かして戦うのは気持ちがいい。
 オデュッセウスの動きは身軽だ。
 彼の身体は戦士としては軽い、身長に対して細身ともいえる程に軽いだがそれは弱さではない、むしろ余分な体重によって動きを阻害されるのを避けた結果の身体の作りであり、無駄なく身につけられた筋肉が最高のパフォーマンスをする為の軽さだった。
 この軽さがオデュッセウスの強さの一つだった。
 人類史の中で魔法が存在した時代の戦士である。魔術による身体強化や、アイギスの持つブースター追加でパワーを足す手段など幾らでもあった。
 だからこそ、徒手空拳という己の身体を武器にした立ち居振る舞いが光るのだ。



「はっ、せやっ!」
 一方、サバージオスは防御へ集中して、オデュッセウスを観察していた。
 オデュッセウスの速度へ対応し、体術で拳を交わし、時には腕でガードをしてオデュッセウスの攻撃をいなしながらジリジリと後退している。
「貫けっ!」
「ならば!」
 飛び上がって放たれた重い蹴りにはアイギスで受けた。
 サバージオスはここまで淡々とオデュッセウスの攻撃を処理し続けていた。
 だがしかし、攻撃に積極的ではない。
 拳を繰り出す事もあるが、オデュッセウスの動きを相殺する為に放つものが多い。
「お前からも仕掛けてこい、俺ばかり手の内を見せているんじゃないか」
 拳を交えながらオデュッセウスは、サバージオスを焚きつけようと不満をぶつけた。
「せっかく正面から勝負できると思ったのに、ズルいぞ」
 だがサバージオスの返しは冷静だった。
「悪い、見惚れていてな」
「ほぅ?」
 戦闘中とは思えない意外な言葉に、オデュッセウスは眉を上げる。
「これがこの霊基の最適解の動きなのかと、勉強になる」
「光栄だが」
 話をしながらも淀みなく殴りかかってサバージオスを煽る。
「これは試合だ、戦え」
「随分前のめりじゃないか」
 それでもサバージオスはまだ乗らない。攻撃をかわす動きを止めないまま、どこか静けさを湛えた声が続く。
「オデュッセウス、お前は今回、手の内を隠そうともしてないんだな。どうした?」
「ははっ、わかるか?」
「ずっとお前の中から見てきた。だからわかる。今日のお前ははしゃいでいる」
「そうだ、この戦いが楽しくてたまらない」
「らしくないな、命取りじゃないか?」
 サバージオスの揶揄いを含んだ声に、オデュッセウスは楽しくなって返した。
「だってお前には奇襲が通じない俺の戦い方の殆どをお前は知っている。
 ここまでのやり取りだってそうだった。試合の前でお前が言っていた通り、お前は俺をよく知っている。
 だったら、戦うなら搦手ではなく全力で行った方が効率がいい。
 そして俺は隠し事をしなくていい戦いというのは久しぶりだから高揚してしまうんだ。
 お前なら受け止めてくれる、それが分かっているから全力を出せるんだ」
 英雄オデュッセウスの戦い方として有名なのは、知力を活かした知謀策謀による計略である。
 しかし、知謀策謀がオデュッセウスという男の全てではない。
 知略を取り払った時に垣間見える素のオデュッセウスの性質は、真っ直ぐで飾らない感性をしており、まるで少年の様なのだ。
 だから計略の通じない相手を前にして戦闘力だけを前面に出して戦う場合は、今回の様に真っ直ぐな戦い方になるのだろう。
 もう一つの側面、と言ったら良いだろうか?それ程までに違った。
(だがある意味では、こちらの方が本来のオデュッセウスらしい戦い方なのだろう
 サバージオスは、彼の真っ直ぐな性格らしい戦い方を前にして、好ましく思った。
「それに俺がそうしたいんだ。
 お前に全力の俺で勝ちたい。
 お前は俺の好敵手なんだ、だから全力で挑戦したい!」
 こんな事、普段の戦闘では言わない。人理修復の旅路という絶対に勝ちを収めなくてはならない戦いで、彼が本心から楽しんで戦う事はない。常に、心のどこかで冷静さを忘れない、状況を俯瞰視して戦う男。
 それが己の本心を曝け出して戦っている、貴重な試合なのだ。

 だから、サバージオスはこの貴重な試合から学びを得ようと攻撃を受け流しつつ、観察を続けていたのだが。
「そこまで言うならば受けてたとう」
 オデュッセウスの反応を受けて、攻めへ転じる事に決めた。



 サバージオスがサーヴァントとして戦う時、いつも制約の中にいる。
 まず、元が神霊である為、サーヴァントという枠組みの中では本来の出力とのズレがある。うっかりかつての己の動きを思い描いてしまうと実際の出力にズレが生ずる。だから常に補正は意識している。
 次に、サバージオスの本来の戦い方は馬上戦が主体あり、武器を使った戦いである。騎乗の神霊であり、馬と一体となって自在に駆け回り、槍や剣といった武器へ馬の慣性へ乗せて力押しで戦うそれが馬上戦の基本であり、サバージオスの本来の戦い方だ。
 そこから言えば、オデュッセウスの霊基が得意とする徒手空拳と弓を主体とした戦い方は、本来のサバージオスとは正反対に位置する。
 オデュッセウスの故郷イタケー島は岩場が多く、馬を走らせる場所がなかった。
 一方、フリュギアの騎乗神であるサバージオスはアナトリア高原を馬と共に自由に駆け巡る環境にあった。
 この2人の戦い方の違いは、生まれと育ちによる違いを大きく表していた。
 だからサバージオスがオデュッセウスの霊基で戦う事自体が既にハンデとなっているのである。サバージオスの本来の動きとは全く異なる身体作りをしているからだ。

 故に。
 サバージオスは常に学びながら戦ってきた。
 霊基に宿る身体の動きの記憶。
 アテナのアイギスの扱い。
 そして、オデュッセウスが表へ出ている時の戦い方を常に見ていた。

 サバージオスは理解している。
(この試合で負けるのは俺の方だ)
 オデュッセウスの霊基に宿って戦っている以上、能力面では完全に同じになる。それならば正面からの戦いでは練度や強化の度合いが高い方が勝つ。同じ身体だから当然の流れだ。
 そして練度の差故に、単純にオデュッセウスの動きをコピーしただけでは劣化になってしまう
(それでは俺が分離した価値がない。単に分離しただけで終わってしまえば、俺としてはむしろ弱体化しただけの結果になってしまう。俺の価値を示す事それがこの戦いにおける俺の勝利だ)
 だから、この試合でするべき事があるとすれば三つある。
 一つ目はオデュッセウスの理想の戦い方を、敵対する側の視点で学ぶ事。
 二つ目はサバージオスにできる、オデュッセウスとは異なる戦い方を試す事。
 三つ目は、負けるにしても一矢報いる事である。

 一つ目は既に済ませた。
(ここからが正念場だ!)

 サバージオスが掌底を放つのを、オデュッセウスは大袈裟に避けた。
 避けた位置へ、右手から放たれた黒い閃光が通った。
「チッ!」
 サバージオスの黒い右手。零落し欠損したサバージオスに唯一残された霊基の一片。
 神霊の神体は存在するだけで魔術的な意味を持つ。霊基を損ないその権能の殆どは消失してしまったが、今でも、サバージオスにとって切り札だ。
 一番扱いなれた一番火力を出しやすい馴染んだ魔術回路それがこの黒い右手であった。
 それをオデュッセウスが軽視しない訳がなかった。完全に読んでいる。
「当たらん!さっ!」
 オデュッセウスは次にどう動くべきかを一瞬迷い、考えた。
 大きく回避をした為に身体には慣性が乗っている。さて、この慣性を攻撃へ使うか?それとも続けて回避をする為に使うか?
 瞬きの間に思案したオデュッセウスだが
「キュベレー!!」
 サバージオスが展開した機械の弓が予想外の位置からオデュッセウスの真横の草むらから発射された。
「!?」
 オデュッセウスがもう一歩後退すると、今度は斜め後ろから発射される。
「くそっ!仕込んでいたか!!」
 これはサバージオスがオデュッセウスの攻撃を受け止めて後退しながら、気取られない様に注意を払いつつ草むらの傍へ誘導してそこへキュベレーの弓の一部を設置していたのである。
 アイギスを展開してしまえば、視界が光に阻まれて幾らか誤魔化しは効く。
 背の低いイネ科の植物が主体の草原であるこのフィールドは、ほとんど遮るものがない。
 草丈が高い植物でも、精々ひざ丈位までしかない。だがそれでも小さな物を隠すには十分だった。
(遮蔽物の少ない、地の利の少ない土地柄だがものはやり様だな!)
 オデュッセウスは回避に専念する事にした。
(今立ち止まるのは危険だ!)
 執拗な波状攻撃が休む事なく降り注ぎ、オデュッセウスは軽やかな身のこなしで攻撃を避け続けた。
 四方八方からの攻撃だ、アイギスで受け続けるのにも限界はある。
 軽業師の様に軽やかに身が翻り、四肢が躍動する。まるでダンスでも踊っているかの様だ。時折マントのはためく乾いた音が鳴るだがオデュッセウスはマントの動きすら捌ききり、一度も布地に動きを阻害される事なく、全ての攻撃を避け切った。
 そして回避が終わった時、サバージオスからはかなり距離が空いていた。
 サバージオスは内心でほくそ笑んだ。
(この隙を待っていた!)
 サバージオスは大技を放つべく詠唱を開始する。



「我に従え、トロイの木馬よ!」
「! やるぞ、木馬!」
 サバージオスが宝具詠唱へ入った。
 それに気が付いたオデュッセウスもまた迎え撃たんと、即座に詠唱へ入る。
「運命の化身、蹂躙の具現!」
「運命の化身、蹂躙の具現!」
 よく似た、しかし異なる意思を持った声が輪唱する様に唱和する。
「騎乗の神霊サバージオスの名の下に嘶け!!」
「せめて一撃で終わらせよう、魔力最大!!」
 木馬の性能をオデュッセウスはよく知っているアイギスの防御すら貫通防御強化解除する宝具の出力を、生身で受ける事は敗北を意味する。
 ならはこちらも宝具で相殺するしかないと、オデュッセウスはこの撃ち合いに応じた。

『終焉の大木馬』トロイア・イポス!!」
『終焉の大木馬』トロイア・イポス!!」

 二つの同じ宝具が炸裂する。
 二人の声に応じて具現化する、二つのトロイの木馬。
 片方は古代ギリシャの英雄、片方は亡国フリュギアの主神。
 片方は青空の雲の様に白く、片方は血潮の息吹の様に赤く。
 鏡合わせの如し二者が向かい合い。
 神代の技術の結晶がぶつかり合う。

 互いの主砲が火を噴き、眩い閃光が目も眩むばかりに閃いた。
 青い燐光を纏った光と、赤い燐光を纏った光とが正面からぶつかって揉みあう。
 まるで地上に太陽が降り立ったかの様な激しい光景。
 衝突したエネルギーの余波を受けた草原を暴風が駆け巡る。
 千切れた草が無残に散り、衝撃で土が抉られ、飛び散った土砂が空を舞った。



 技術部は計器へかじりつき、警告音を発する機械をいなした。
 観戦していたマスターのいる部屋のガラス窓は安全対策が施されており、予め一定以上の光量となると曇りガラスになる様に細工がされていた。
 食い入るように試合を見つめていたマスターの視界はそのお陰で守られた。



 両者の宝具は同じである。
 だが、全く同じとはいかない、その筈だ。
(おかしい!)
 オデュッセウスは澱みなく戦いの手を動かしながら、同時に心の内では疑念を抱いていた。
(サバージオスは俺に打ち負ける事を理解している筈だ)
 宝具レベル。カルデア式召喚による宝具の強化。同じ霊基を重ねて召喚した時、霊基を束ねて宝具の出力を上げるというとんでもない発想の下に行われる強化である。
 マスターの指揮やステータスの把握を簡略化する為に、宝具レベルという、通りの良い用語で呼ばれているこの能力についてだが。
 オデュッセウスの宝具レベルは5、対して、現在サバージオスが用いている霊基の宝具レベルは1。純粋な数値に落とし込んで語るならば、その火力は1.5倍の開きがある事が分かっている。もっとも他にも数多の強化があるので単純には比較できないのだがともかく。
(宝具の撃ち合いなれば己の不利へ繋がる事は見えていた筈だからこの裏には何か策がある!)
 だが、オデュッセウスはこの撃ち合いに応じざるを得なかった。
 まず、繰り返しになるが、生身で宝具の直撃を受ければ大ダメージを避けられない。
 次に、例え罠だとしても、オデュッセウスが火力で打ち勝てば次は必ず先手を取れるので、戦いが有利になる。
 だからオデュッセウスは罠を疑いつつも宝具の撃ち合いに応じた。
 実際、先に押し負けたのはサバージオスの方だった。
 サバージオスの展開した宝具の方が先に消えた。オデュッセウスの一撃に打ち負けて、赤い機体が掻き消える。
(さて
 オデュッセウスは落ち着き払った動きで、木馬が消失する前の一瞬を使い、サバージオスの居場所が特定できないかと計器を利用して索敵をかけた。
 だが結果は芳しくない。
 土が舞って悪い視界に加えて、大気に散った塵の所為でレーダーの反応も芳しくない、ぶつかり合ったエネルギーの余波で熱源の察知も難しい。
 仕方がないので、せめてとオデュッセウスは木馬のコックピットから周囲を目視確認してみたが、やはり肉眼でも発見するのは難しい。
 そのまま顕現を終えた木馬の内側から悠々と出て地面へ降り立つ。

(さあ、ここでどう出る!)
 周囲は互いの宝具によって、もうもうと土埃で視界が覆われている。
 だが。
 オデュッセウスの視界に、赤いアイギスの影が動くのがかろうじて見えた。
 土埃の中でも目立つ、見慣れた赤い姿が突進してくる。
「!」
 突如として目の前に飛び出してきたそれを前にして、オデュッセウスは身を守る為に咄嗟に先手を取って一撃を加えた。
 あまりにも単純すぎる動き故にカウンターパンチが綺麗に決まった。
 しかし。
「!?」
 アイギスは空だった。
 中身がないまま勝手に動いていたのだ。
 その時。
 オデュッセウスの背後の煙幕から、フッとサバージオスが現れる。
 オデュッセウスとは異なる麦穂の様な金の髪、鋭く戦意に燃え上がる赤い眼。アイギスの防御を捨てて軽装になったサバージオスは黒い肌着のみを纏い、文字通り諸刃の刃となって一撃を叩き込みに来たのだ。
 防御を捨て身軽さへ振り切り、攻撃する事だけを考えた大胆な動きだ。
「喰らえっ!!」
 サバージオスはこの一撃に全力を掛けていた。
 正面突破は端から考えていなかった。
 能力差やハンデを考慮すれば、決定的な隙を生み出してから黒い右手で確実に決めるのが勝ち筋だった。
 その為に二重三重の策を展開して智将オデュッセウスを欺いたのだ、全力を出すならここで出し切りたい。
 黒い右手が拳を作り、オデュッセウスへ肉薄する。
(これはまずい、だが!)
 オデュッセウスとて無策で突っ込んだ訳ではない。
 赤いアイギスがあまりにも見え見えの動きをしているので、罠の可能性は考えて行動していた。
弦なき愛の輝弓ペーネロペー!!」
「っ!?」
 オデュッセウスは弓を展開した。
 弦なき愛の輝弓ペーネロペー、オデュッセウスの用いる弦のない光の弓。
 オデュッセウスの意識を受けて浮遊するこの機械の弓を、オデュッセウスは普段とは異なる使い方をした。
 すなわち、マントの内側に潜ませていた弓を咄嗟に展開して、背後から迫るサバージオスの身体を、弓本体で物理的にぶん殴って打ち据えたのである。
「がっ、あっ!!」
 弦なき愛の輝弓ペーネロペーは、オデュッセウスの危機感に応えて勢いよく展開した。
 サバージオスはあまりの勢いに打たれて吹っ飛んだ。
 前のめりに黒い右手で殴りかかろうと飛び込んでいた姿勢で、下から展開した弓の柄がもろに鳩尾に入り、そのまま打ち上げたのだ。
(打ちどころが最悪だ!)
 アイギスを脱ぎ捨てている所為でもろにダメージを受け、身体が空へ浮き、血飛沫が飛んだ。胃の腑をぶん殴られた所為で吐き気もする。一瞬、意識がふら付いた。
 それでも、サバージオスは空で一回転した身体をどうにか着地させたが弓の柄で殴られた衝撃が強すぎて大きく態勢を崩し、膝をついた。
「っ!まだ!」
 誇り高いサバージオスは、屈してたまるか、と赤い眼光で前方を睨みつけたが。
「お前の負けだ」
 既に、オデュッセウスは弓を幾重にも展開し終えた後だった。
 戦場において生じた一瞬の隙が、あまりにも大きな差となった。
 戦慣れしているサバージオスとてそれは分かっていたのだが、弓で殴られたダメージが大きすぎて身体が言う事を聞かず、即座に立て直す事ができなかった。
 膝をつき座り込むサバージオスが、眩し気にオデュッセウスを見上げる。
 対して、オデュッセウスは立ったままサバージオスを見下ろし、油断なく弓を構え続けている。オデュッセウスの背後には数多の光の弓が従い、真円を描いて漂う。オデュッセウスは神にも見紛う後光の様な輝き纏いながら、サバージオスを睨み続けていた。
 動けば即座に射貫く、と如実に物語っていた。
 その差は歴然だった。
……はーっ」
 サバージオスはオデュッセウスを見上げて目を瞬かせて、大きく息を吸った後、溜め息をついて肩の力を抜いた。
 そしてオデュッセウスの前でサバージオスが両手を掲げ、黒い右手を顔の横で力なくヒラヒラとさせながら苦そうに、しかし勝者を讃えて笑った。
「そうだな、俺の負けだ。ここから打てる手は思い付かん」

『そこまで!』

 ダ・ヴィンチの声が戦いを制止する。
 勝敗はついた。