いを
2025-10-20 17:23:25
3818文字
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タグまとめ29

くらくら
それぞれフォロワーさんのお子さんお借りしています。


 信佑が苦々犯罪者を憎悪していることはよく分かっている。研究所に運ばれてきた、死にかけの人間を見る、目――あまり見えない――は、今も憎しみに満ちているようにも見えた。
「ほうっておけば勝手に死ぬでしょ」
 吐き捨てるように呟く男を眺める。そう、こうして放っておけば良い。淡いものなどどこにもないように、烈火のごとき怒りが、マルタには見えた。
 ガラス戸の向こう側で慌ただしく動いている人物。研究員、または医者か。
 出血がひどい。傷口を焼かれ、焼け爛れた皮膚も見える。
「もって半日、生き残っても一生ベッドの上だ」
……
「いいモルモットだろ。俺たちにとっては」
 男のとなりを離れ、更衣室に向かう。どこに行く、と男が言っているようにみえた。
「サカナとはいえ、あれもまだ・・・・・、人間だ。死なせない」
 生き地獄という言葉がある。身内を殺されたこちら側にとってはよいことなのか、わるいことなのか。それもそれぞれであろう。
「苦々犯罪者が憎くないの」
「総じて憎い、といえればいいんだが。生憎、俺が診るのは人間だ」
「人間」
 あれが、人間?とでもいっているような色をしている。
「人間は万能じゃないし神じゃない。多かれ少なかれ、害悪だ。清らかな人間なんぞ、寒気がする。だから、俺は俺のために死なせない」
 人間はそれをエゴと呼ぶのだろう。