roku
2025-09-27 09:04:55
7930文字
Public その他CP
 

沢北月間

沢北月間に書いた沢右SSをまとめたもの
CP→深エジ/松エジ/イチ沢/流沢


6.赤裸々/イチ沢+森諸

「ツレと飲むけど沢北どうする?」
普段の一之倉なら“沢北もおいでよ”と誘うのだが今日は思うところがありその選択を沢北に委ねた。そんなこととはつゆ知らず「行くっす!」と元気よく答えた沢北はこの1時間後後悔する。


「ちょっとイチノさん!」
「ん?」
「何で森重と諸星サンと一緒なの?」
「オレ、ツレと飲むって言ったよね」
「言ったけど
沢北はこのふたりと、というか正確に言えば諸星と相性がよくない。理由は少し前に色々あったのだが今回は割愛する。それ故一之倉は“どうする”かを訊ねたのだ。詳しく聞きもせずに来ると言った沢北が悪い。不貞腐れたまま酒を煽る沢北は、みるみる大きなアーモンドアイをとろんとさせゆらゆらと船を漕ぎはじめた。
「沢北。ちょっと一服してくるから水飲んで待ってなよ」
「え〜またタバコ?嫌です!」
一之倉の裾を掴もうとした手は、それより先に立ち上がった一之倉のせいで空を切った。
「オレも行ってくるわ」
「うい」
残された森重と沢北の接点はバスケ選手であること以外ほぼないに等しく、流れた沈黙。それを破ったのは沢北だった。
「な〜。お前はあの人がタバコ吸うの平気なのか?」
「嫌だけど基本“オレといるとき”は吸わないし」
今日は酒の席でなおかつ友達がいるから一服に行ったとのことだった。対して一之倉は“沢北の前”では吸わない。それは似て非なるものだった。
「何それ、惚気?」
「何それ、八つ当たり?」
「はぁ?ちげーし!」
図星を指された沢北は水ではなく酒を流し込んだ。
「キス、」
「?」
「キス、不味くなんじゃん?それが嫌」
………
「まぁ、身体にもよくねーし」
………
聞いているのかいないのか、森重の口からは相槌すらなかったが、酒の力からか漏れる本音。
……ひとりで道歩いててさ、同じ匂いがしたら振り返っちまうんだよなー」
………
「あと、」
「まだあんの?」
「普通にカッコいいから他のやつの前で吸うのもやめてほしい」
むっと突き出した唇。眉間に寄せた皺。怒るというより拗ねている。
「フッ、」
森重はたまらず吹き出してしまった。さらに険しい表情になる沢北にさっきのお返しといわんばかりに「何?惚気?」と吐く。
「はぁ⁉どこがだよ!」
「あんたの言ってること、全部わからなくはないけど」
「へ?」
思いがけず得られた同意に目が丸くなる。
「でもまぁ、サラリーマンにはサラリーマンの苦労とストレスがあるらしいから」
だから森重は譲歩していると言いたいらしい。
……そう、なんだ?」
いや、でも、それでも嫌なもんは嫌だし!と納得のいかない様子だ。
「子どもみたい」
「はぁ⁉お前より年上ですけど?」
こういうところが子どもみたいだと言われていることがわかっていない。森重はそんなことを意にも介さず「いいこと教えてやるよ」と頬杖をついて目を細めた。
「な、何だよ?」
「嫌だって言ってんのに聞き入れてもらえない場合は力ずくで丸め込むか、構ってやらないか」
……は?」
「そしたら向こうが折れてくるよ」
「いやいやいやいや!はぁ⁉んなことしたら返り討ちにあって足腰立たなくなんだろ!」
勢い余って全てを吐き出してしまった沢北に「ん?」と理解が及ばない様子の森重。その時個室の引き戸が開いて戻ってきたふたり。
「あ、また酒飲んだ?オレ、水飲んで待ってなって言わなかったっけ?」
沢北との間に距離を空けずに座った一之倉が肩を抱き寄せる。
……言ったっす
「言うこと聞けない子はお仕置きかな?」
耳元で囁かれたそれは森重と諸星には届かなかったが、森重は『返り討ちにあう』の意味を理解した。
「そっちなんだ」
「ん?」「どうした?」
同時に首を傾げた一之倉と諸星。
「何でもないっす」とジョッキを手にし、沢北へ視線を投げた。
「せいぜい頑張んなよ」
ふふんと鼻を鳴らした森重に、沢北はぐぬっと唇を噛みしめた。