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roku
2025-09-27 09:04:55
7930文字
Public
その他CP
沢北月間
沢北月間に書いた沢右SSをまとめたもの
CP→深エジ/松エジ/イチ沢/流沢
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1.林檎飴と金魚/深エジ
「夏祭り行きません?」
それはあまりにも唐突で、それまでしていた会話とは何の脈絡もなかったがこれはいつものことだった。基本的にコミュニケーションはバスケで取るこの男
―
沢北
―
はコート外での会話が成り立つことの方が少ない。
「構わないピョン」
この時期すでに大きな祭りは終わっていて、深津と沢北が訪れたのは地元の神社で開催されている小さなものだった。
短い参道に並んだ屋台。沢北は目をきらきらさせながら深津の手を引く。その姿はいくつになっても子どもみたいだ。
「あ、あれ食べません?」
「林檎飴、好きピョン?」
「うーん
…
好きっていうか、懐かしい
……
?」
首を傾げる沢北に「何だそれ。変なやつピョン」と林檎飴をひとつ買った。
「甘っ!あ、でもほら、やっぱ何か懐かしい」
「どれ?」
沢北の手を引き寄せ林檎飴に齧りつく。パリパリとした食感。飴の甘みとりんごの酸味が絶妙で、さすが屋台の定番スイーツだなと深津は思う。
「懐かしいでしょ?」
「それはわからんが、うまいピョン」
「ならよかったっす!」
残りの林檎飴を食べきった沢北は「金魚すくいしません?」と深津を覗き込む。
沢北は「〜したいです」ではなく「〜しません?」と問いかけてくることが多い。そう言えば深津が断れないことを知っているから。
「勝負ピョン?」
「もちろんっす!」
勝負は引き分け。しかも一匹ずつというなんともレベルの低いものだった。
「お前下手すぎピョン」
「はぁ?深津さんだってでしょ!あ!」
「ピョン?」
「そういや小さい頃両親と祭りに行ったんすけど、途中ではぐれて
…
」
その時声をかけてくれた男の子と金魚すくいをし、すくった金魚一匹ずつを交換して持って帰った。初めのうちはエサもきちんとやっていたが、そのうち生活のほとんどをバスケが占めるようになり世話をしなくなった。
「その金魚どうなったピョン?」
「おふくろが世話してくれてたんすけど1年ぐらいで死んじゃった
…
」
「なら“また”交換するピョン」
「
……
え?」
「オレのは15年ぐらい行きたいピョン。これぐらいになってたピョン」
深津が手で呈示した大きさは15センチを超えていた。
「ちょ、っと
…
待ってくださいよ
……
え?」
「遊びに来た友達が鯛と間違うほどだったピョン」
「いやいや!違うっす!そうじゃなくて!!」
沢北が捉えた深津は相変わらず無表情で何を考えているのかわからない。
「
……
林檎飴」
「思い出したピョン?」
そういえばあの日、串のささった真っ赤なりんごが並んでいるのが印象的でじっと眺めていたんだ。
『ちょっとまってて』
『はいどうぞ』
懐かしい気がしたのはこれだったんだ。
「あの時の男の子、深津さんだったの?」
「ピョン」
「もっと早く教えてくれたらよかったじゃん!」
「別にお前が思い出さないならそれでもいいと思ってたピョン」
「何で!?」
「お前がまたオレのところに来たからそれでいい」
そう言いながら今度はもう解けることがないように。そんな願いを込めてしっかりと繋いだ手。
もう片方の手には小さな金魚の入った袋を下げて。
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