roku
2025-09-27 09:04:55
7930文字
Public その他CP
 

沢北月間

沢北月間に書いた沢右SSをまとめたもの
CP→深エジ/松エジ/イチ沢/流沢


3.ブラッドムーン/松エジ+宮城

「はいこれ」
「サンキュ」
沢北から手渡されたのは日本から届いたエアメール。今回の差出人はアヤちゃん♡だけど、手放しで喜べないのは目の前のぶすくれたこいつのせいだ。
「なんでリョータばっか手紙くるんだよ!」
でた!またそれかよ。以前は沢北が付き合ってる(らしい)松本サンから頻繁に手紙が届いていた。だけど半年ほど前からそれがピタリとなくなった。そのせいでオレが手紙を受け取るたびに八つ当たりされてる。もう慣れた。
「お前が返事書かねーからだろ」
「それは!」
「いらないって言われてるから?」
松本サンは自分が書いた手紙に対して返事はいらないと言っていたそうだ。きっと沢北が筆不精だとわかっていたからだと思う。ただたとえそうだとしても普通は書くじゃん。だって好きな相手なんだし、付き合ってんならなおさら。だけどこいつはそれに甘えてほとんど返事を送ってない。なのに向こうからの手紙は欲しい。どこまでいってもひとりっ子のわがまま坊っちゃんだな。
「そうだよ。でも一回は書いたんだからな!そしたら返事こなくなったオレ嫌われたのかも捨てられたのかも……う、っ、……りょーたぁ
沢北の目からぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちる。
相変わらず感情の忙しいやつだ。
「仕事忙しいんじゃね?」
その場しのぎの無難な答えに沢北は「もういい」と口をつぐんだ。
……コート行く?」
いつまでもどんよりとした空気を纏われているのもうざったい。太陽は傾き始めていたがこいつの機嫌を直すにはバスケが一番だ。
………行く」
ボールを手にした沢北は少しだけど元気を取り戻していた。

「リョータ見て!」
「ん?」
空を見上げた沢北がオレを呼ぶ。
「月が赤い」
「あ、ブラッドムーンてやつ?」
「それは知んねーけど、なんか不吉なこと起こりそう」
「そうか?良いことが起こる前触れかもしんねーじゃん」
「そんなことあるわけ……
オレを振り返った沢北がその後ろに何かを捉えて目を見開いた。
「リョータオレ、赤い月のせいで頭おかしくなった
「はぁ⁉何言ってんだよ」
「だってリョータの後ろに松本さんが見える
そんなことあるわけねえだろと振り返ると「元気にしてたか?」とスーツケースを手にした松本サンが沢北に笑いかけた。
「松本サン」
「宮城も久しぶりだな」
「っす」
………松本さん本物?」
「ははっ!本物に決まってんだろ」
「リョータこれって赤い月のエネルギー?」
んなわけねーじゃん!
そんなツッコミを飲み込んで「かもな」とひとこと返す。「何だそれ」と沢北のもとまで歩みを進めた松本サンがさりげなく腰を抱き、沢北の顔がみるみる赤くなっていく。
うわぁ〜男前すげーな。見てるこっちが恥ずかしい。
「でも何で?」
「お前の手紙に“会いたい”って綴られてたから」
……え?」
「一週間休み取るのに半年かかっちまった。待たせて悪かったな」
『一回は書いたんだからな!』
そういうこと?何だよ。本当に付き合ってるうえ、めっちゃ愛されてんじゃねーか!何が嫌われたのかも何が捨てられたかもだ!なんか腹立ってきた。
「あ〜、オレ酒飲んで帰るし、バスケするなりメシ行くなりお好きにどーぞ」
「リョータ!」
背を向けて歩き出したオレに駆けよって耳打ちする。
「できれば明日の朝まで帰らないで」
その言葉を理解した瞬間心の中で舌打ちしてしまった。外に出さなかっただけ偉いと褒めてほしい。
「はいはい、わかったよ」
「さすがリョータ!大好き!」
沢北の長い腕がオレをぎゅうと捕らえた。ここアメリカでハグは日常的なスキンシップだがさすがにこれはまずい。松本サンの鋭い視線が刺さり、慌てて腕からすり抜けたオレは振り返ることなくその場を去った。
沢北の身を案じて。