和泉 小夜
2021-10-22 03:48:53
3577文字
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深海へ沈む


義弟が走って来る。莫迦なことは止めろと、俺を追い掛けて叫んでいる。
ごめんな、廣光。俺、もう無理なんだ。つらいんだ。
今なら人魚姫の気持ちも、母親の気持ちも理解できる気がするんだ。
心底愛している人に愛情を返して貰えない気持ちなんて、お前には分からないだろうよ。
お前は愛されて育っているから。だからごめんな。

もう足が付かない場所まで来た。一歩、踏み出せば。此処から落ちて沈むだろう。

「廣光。どうか元気で。」

振り向いて其れ丈、精一杯の笑顔で、愛していた義弟に伝える。
そうして最後の一歩を踏み出して、海を纏う。

海へ還って、全て遣り直すの。
今度こそ彼に愛されますようにと、願いを込めて。