和泉 小夜
2021-10-22 03:48:53
3577文字
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深海へ沈む


人魚姫は王子様からの愛を与えられた時だけ、人間になれるんだって。
王子様の愛を与えられなかった時、泡になって消えて終うんだって。
彼女には魂が入ってないから、地を踏むことを赦されず脚が痛むんだって。

王子様の愛だけが欲しくて、でも其れすらも叶わず。
殺すことも出来ずに、泡になって消えて終った。
正直、人魚姫は自分の母親に似て、馬鹿な女だと思っていた。
でも今は人魚姫の気持ちも、母親の気持ちも少しは分かる気がする。

初めて光忠さんと逢った海辺へ行く。彼の時、此処に来なかったら。無視をしていたら。
こんな気持ちも、知らなかったんだろうなぁ。こんな結末になるなら知りたくなかったよ。
ゆっくりと海へ入っていく。迚も冷たくて、進む毎に服が海水を吸って重くなっていく。
俺も海に還れば、泡になって消えられるのかな。本物の人魚姫になれるかな。

光忠さんは人魚姫が好きだって言ってたから。
そうすれば、俺のこと。いつか、見付けて呉れるかな。