雨宮水月
2025-08-03 09:15:55
11523文字
Public 企画
 

第3回 誰の文章だゲーム 三題噺編

参加者7名の中で、どの作品を誰が書いたのか当ててみよう!



【作品G】

思考力と集中力を上げるには糖分は必要不可欠なのだと相方は口元でキャンディーを転がしながら、呟いた。

同意しながら、自分も同様に口元でキャンディーを転がす。

そんな話をしながらも自分と相方の視線は目の前のテレビ画面に向けられていた。その前には、最近出た新型の一つ前のゲーム機が鎮座している。

テレビ画面上では、国民的なキャラクターたちがアイテムを駆使しながら、盤上で通貨等を奪い合い勝敗を競う趣旨のゲームが展開されていた。
ゲーム機が次世代に移行しても最新作が作られ続けてきたシリーズだ。その度に相方とプレイして居た為、自分の人生は相方とこのゲームと共に歩んできたと言っても過言ではない。

相方との関係性は行くところまで行ったが、今でもやることは変わってはいない。

なんて事を思いながら、プレイし続けて数時間経過した頃、勝負は終盤に差し掛かっていた。

状況を客観的に分析する限り、僅かだが、此方が優勢であり薄氷の上ではあるものの勝利を掴めそうであった。

ふと

ここで違和感に気づく。

相方との戦いにおいて、このような勝利が多すぎはしないかと。

自分の考える限り相方のゲームの実力は拮抗している。その為、紙一重の勝利が多かった事に疑問を抱くことは無かったが、思い返してみればあまりにも同様の状況が多すぎた。

気付くのがあまりにも遅すぎるような気はするが、こういうのは一度疑念を抱いたら頭から離れないのが世の常だ。

とはいえ、相方が自分の為に手を抜いて花を持たせようとしていたとして、そこまで怒りは沸かない。

別にゲームに命を賭けているわけでもあるまいし、寧ろ、可愛い所があるなと思うくらいには相方の事を推せるくらいだ。

しかし、それはそれとして相方が何処まで手を抜いていたのかということ好奇心が湧いてしまった。

故に

故にである。使い古された台詞を何のためらいもなく発してしまったのだ。

「勝てば何でもしてあげる」



その瞬間、相方の口元から、小さな破裂音が発せられた。

本来は、引き潮が砂をゆっくり削るが如く、時間を掛けて溶かしていくはずのキャンディーを圧力に物を言わせ、強引に破壊するその音が。

その後の展開は言うまでもない。

相方は、毎ターン後のミニゲームは全戦全勝し、使える者は全て使って此方を追い詰め

気づいた時には、画面上の盤面は盛大にひっくり返されていた。

どう足掻いてもひっくり返すことが出来ない状況を確信し、思わず天を仰いだその瞬間である。

相方のキャラから自分が操作する、使い捨てにされがちな恐竜目掛けて、白手袋のアイテムが使用された。

簡潔に言えば、このアイテムは相手に決闘を申し込み、勝者が勝敗を左右するであろう量の通貨等を奪う事が出来るものだ。

そう、この決闘に勝てば相方に逆転勝利できるくらいには。

しかし、常識的に考えれば、劣勢状況に陥っている者が一発逆転に使うのが当然であり、有利である人間が好んで使うものではない。

相方に視線を向けると、相方は静かに此方を見つめて一言だけ言葉を発した。

「勝てば何でもしてあげる」



ガリッ……っと音がしたかと思えば、自分が口元で転がしていたキャンディーは、圧力に耐え切れず口内に散らばっていった。

笑いを堪える相方を尻目に、自分は最後の決闘へと赴く。

かくして

賽は投げられたのであった。

【盤上遊戯の盤外戦術】