eclipsis
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紡ぐ夜明け

ホームシック気味になったペローナがモリア様の夢を見る話。離れてても通じ合う親子。この話と薄ら繋がってます



 小さな島に日が暮れかけている。
 この無人島において存在を一際主張するのは高く生え伸びる木々たちだ。背の高い彼らが夕暮れを浴びて濃い影を落とし始めるなか、その間を縫って飛行するもう一つの大きな影があった。
 その影が島で一番高い木から連なる太い枝へ留まる。着地した枝を二三度と揺すり、折れないことを確認する動作をした。すると一面真っ黒の影がドロリと溶けるように流れて変わり、モリアの姿になった。
 枝の上に立ったモリアはそこから見える景色を眺める。島の緑を超えると海が広がり、水平線へ近づく太陽によって波が橙色に煌めく。
 
 モリアの奥深い洞窟のような瞳が眩しそうに細められた。笑ったようにも見えるその瞳は、果てのない海をスクリーンにして、一つの小さな輪郭を形取ろうとしている。
 髪を二つ結びにした娘の姿が浮かび、それが麦わら帽子を被ったものへ変わる。

 写真の中で見た笑う娘。片手に何やら野菜を入れた籠を持って、もう片方の手には人形があった。それを大事そうに胸元で抱えていた。
 不格好なそのツギハギ人形は、間違いなくモリアが初めて見た物にも関わらず、彼の心に馴染みのある人形だった。
 
 あれはペローナの意志であり、モリア自身だ。見て取ってすぐに分かった。娘は離れている間に、己の孤独を手懐けて乗り越え、強く成長したのだ。
 
 モリアは一旦染みるように瞼を閉じる。再び開く瞳は、真っ直ぐに前を、海を見据えだす。

 遠く見渡した海のその果て、とある島にペローナという娘が居る。

 か弱いプリンセスじゃない。ましてや人形でもない。懸命に生きている娘が居ることを想うと、モリアはじわじわと胸が灯るように温かくなり、心強くなった。

 モリアは海と重なる夕日の光の中、娘の影を見つけるように暫く眺め続けた。