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紡ぐ夜明け
ホームシック気味になったペローナがモリア様の夢を見る話。離れてても通じ合う親子。
この話
と薄ら繋がってます
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偉大なる航路
グランドライン
には無数の島がある。
国として栄える島もあれば、厳しい環境によって手つかずの島もある。不思議な海流と天候が多種多様な島を生み出すのかもしれない。
そんな偉大なる航路の中の、地図にも載らないとある無人島、とある日にて。島に生い茂る森林の中を駆け足で進む男がいた。
男は周りを過ぎる緑へ透けるように溶けこみ駆け抜けると、木々が疎らな拓かれた地に辿り着く。
「ご主人様! 只今戻りました!!」
「! おぅ、アブサロム。よく戻った。
…
無事みたいだな。まぁ、お前の能力なら訳ないが」
そこは簡易的な野営地になっていて、白い顔の大男
――
モリアが鎮座していた。勢いよく現れたアブサロムに労いの言葉をかけると、アブサロムはモリアに向かって敬礼をする。グルル、と猫のように喉を鳴らし得意気に破顔したが、たちまち顔を引き締めると切羽詰まった様子になった。
「早く知らせたいことがあったんで急いで戻りました! 大スクープだ! とんでもねぇ写真を激写しちまった!!」
「なんだ!? 金目になるニュースか!」
アブサロムが慌てて報告すると、モリアの横に控えていたホグバックが喜色を浮かべた声を出した。
モリア達がこの島に滞在する中、資金は専ら隠密行動のできるアブサロムが引っ張ってきていた。その彼の慌てように特ダネを掴んだかと、ホグバックがアブサロムの元まで近寄り野次馬になる。
「バカ! 売れるもんじゃねぇよ! ハッ、あぁモリア様! ぃ、いいですか、よく聞いてください!
ペローナの居場所がわかったんです!!」
横目でホグバックを睨んで諌めつつ、アブサロムが自身の胸元をゴソゴソと探る。モリアは彼の挙動を黙って構え見届けていた。ただ、吊った両目が僅かに丸く見開かれている。
「アイツはクライガナ島という島にいます! が、一人じゃねェ。何でか知らねぇが、鷹の目と麦わらの一味の剣士と一緒に暮らしてます!!」
アブサロムが胸元から一枚の写真を取り上げて大声で告げた。まだ野次馬になっていたホグバックが掲げられた写真を見てギャッと小さく叫ぶ。次いで、あの放蕩娘!と頭を抱えながら喚いたが、モリアがアブサロムから写真を受け取り神妙な顔つきになったのを見ると大人しくなった。アブサロムも落ち着きを取り戻し、目の前の主人を見上げた。
写真の中のペローナは畑に立って麦わら帽子を被り、遠くに居るミホークやゾロの方へ顔を向け笑っている。
「偶然見つけた上に、おいらは一人だったからペローナに声をかける隙を見失っちまって撤退したんですが
……
ここからそう遠くはない島でした。
…
どうします、アイツにおいら達のこと
……
知らせますか?」
押し黙って写真をじっと見つめるモリアに、アブサロムは恐る恐る声をかける。モリアの鋭い目がすぅ、と弓を引くように細まった。
「いや、いい。ペローナには何も伝えなくて良い。放っておけ」
モリアは至極落ち着いた声でそう告げた。
アブサロムはおろか、ホグバックにもその返事は予想外で二人には動揺が大きく走った。
ペローナはモリアの娘だ。当人たちが積極的に間柄を語らずとも、スリラーバークに属するものなら自ずと知れてくる。けれどその娘は、写真の中で何の
翳
かげ
りもなく笑っているのだ。全て忘れているかのように。
あくまでも、アブサロムにはそう見えた。
眉根を寄せたアブサロムが一度強く拳を握ると、意を決してモリアへ向けて口を開いた。
「ッで、でもご主人様!! お言葉かもしんねェが、アイツのその様子
…
っ、そのまま鷹の目たちと手を組んで戻ってこないんじゃ
――
」
「ペローナは戻ってくる」
モリアはアブサロムの言葉尻を待たずに、はっきりと断言した。鋭さを失わない両目が、眼下の二人に向けられる。アブサロムとホグバック、どちらの背筋も伸びて口が引き結ばれた。その様子を見てモリアは緊張を解すようにフ、と薄く笑みを口元に浮かべた。
「おれには分かるんだ。間違いなく戻ってくる。
…
だから大丈夫だ、心配するな。それに、よく言うだろ? 奥の手は大事に取っておけって。おれ達ゃこんな有様だしよ、温存できる戦力は一人でも多いに越した事はない」
有様、という言葉を機に三人がそれぞれお互いを見た。モリアは先の戦の傷が完全には癒えておらず、白い肌に薄ら赤黒い傷跡が残っている。アブサロムとホグバックには無精髭が少し生えていて、どことなく
草臥
くたび
れた印象を纏っていた。先の戦
――
頂上決戦から三人は逃げ切ったものの、海賊団の復興は目処が立たないせいで、この無人島に潜伏している。
顔を見合わせた部下の二人は、ほぼ同時に眉を頼りなげに下げた。モリアは一度ゆっくりと瞬きをすると、写真に視線を戻し話を続ける。
「
……
少なくとも鷹の目の元だしな。このおれ様と肩を並べた七武海だぜ。攻めこむ輩なんか居ねぇさ。それなら奥の手を安全に置いておけるってもんだ。そう思ってペローナの事は、ほっときゃいい」
手元の写真へ視線を注ぎながらモリアは語った。ことの顛末から至って平静にしていた彼の表情が、写真の一点を見続けていると輝くような表情を見せた。それは言葉以上の溢れる何かを語っていて、見上げているアブサロムは思わずポカンと口が開いた。
呆けている部下へモリアは写真を返す。そして徐に身体を動かすと、森林の中へ歩き去っていった。
戻ってきた写真をアブサロムはひたすら不思議そうにじっと見つめた。モリアが写真から何を見出し瞳を輝かせたのか、撮影者である当人にはさっぱり分からなかった。
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