最初の叛乱戦争で将軍殿に討たれ、現世との繋がりを断たれてから長い時が過ぎた。
大精霊同士の絆は引き裂かれ、堕落し荒廃していく王国の様子を見ることしかできぬ日々。怒りや憎しみよりも、「あの時、ああしていれば」という後悔が膨らむばかり。
だがあの日、陛下の
―あの子の絶叫で、私の空間と現世が『無理やり』繋がった。
世界の理を大きく歪める事態が起きていると、即座に気が付いた。
思うに、アイツはこの国の為に何もかもを生贄にした結果、本当に神へ至っちまったのかもなぁ。
だから、あの悲鳴で、断たれていた俺たちや技巧師殿は再び現世に繋げられ、他の大精霊と共に『強制的に呼び出された』のかもしれない。
そうだろう、きょうだい。
そうかもね、きょうだい。
王国の変化を憂い、
宙の意志に従い、ずっと昔に離反した渡し守殿も。
あの戦の後、叛乱者を庇護し、再び預言が成就すると信じて光の蝶を育んだ造り手殿も。
私たちと対立はしたけど、アイツと王国に忠義を尽くし続けた将軍殿と、宰相殿も。
あの瞬間、王城に勢ぞろいしたんだから。
そうして集った、儂らの目の前で。
光と闇を宿した巨石は『砕ける闇』となって暴走し、陛下の身体と心と火も、千々に砕けてしもうたのじゃ。
あの巨石は、神の座を欲した陛下が、己の神器として作り上げた代物。
『渡りの光』に似せた偽りの光を放ち、数多の光の命を溜め込み、数多の闇の命を誘い狂わせておった。
おそらくは、神器の『虚』の中で光と闇の均衡が崩れてしまったのでしょう。
溜め込まれた命の輝きは、禍々しい赤へと変わり、大いなる光は、大いなる闇へ反転してしまいました。
理想郷は『原罪』の地となり、陛下の影から生じた闇の嵐が、王国の全土を覆い尽くした。
そして殆どの民は、時が経てば経つほど、陛下を
……僕らの愛し子の事を忘れてしまったんだ。
滅びの時代の混乱は、戦乱期以上に凄まじいものだった。
私は、我が金の血で以て、双子殿と技巧師殿にかけた呪いを解いた。
あの日の戦場で断ち切った彼らが、いつでも現世に降りられるように。
陛下の為と思って手を穢し積み重ねてきた、己の愚行を償うために。
憎み合っていた僕らは、再び手を取り合った。
皆で災厄に挑み、あの嵐を止めて民を守るために。
砕けたあの子の一部だけでも、連れ帰るために。
けれど、わたくしたちが連れ帰ったあの子の一部は、救いを拒みました。
虚ろな心で、「生まれるべきではなかったのだ」と言い残して。
あの子の首は脆く崩れ去ったのです。
残された我々は、どうにかして『砕ける闇』の暴走を止めようとした。
一等星である我らでも
―あの石の扱いに長けた私や宰相殿でも、高濃度の闇には耐えきれず、この身を砕かれ断たれる間際に、闇の嵐と闇の噴出を抑える魔術を施すのが精一杯だった。
嵐を抑えた後も、闇は各地に堕ちた欠片から溢れ続け、全てを穢した。
輝きを失った民の魂は王国に取り残され、罪深きわたくしたちは現世から断ち切られてしまいました。
使命の子ら
―星を紡ぐ子どもたちがこの王国に降り立ち、火を捧げてくれるまで、わたくしたちはずっと、各々の空間で微睡み続けていたのです。
砕けた陛下の一部は、罰として闇の嵐の中心に囚われ、今も孤独に責苦を受け続けている。
もう一部は
宙の意志に持ち去られ、取り込まれた。
それらは、お前たち星の子らの礎となり、業となったのだ。
中でも、あなた方のような『残り火』の子らは、より多くのものをあの子から引き継いでいるのですよ。
懐かしく、愛おしい輝きを。
さあ、わたくしたちの愛し子、アレフ=レーシュの残り火たちよ。
アレフの思い出が蘇った今、あなた方は王冠を望みますか? それとも
……
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