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クローズアップ:エゴイズム -アブノーマルエンド- 原案版

視点がころころ変わるでござる。ADV想定で描いたので描写不足でござる
バッググラウンドも補完不足でござる。雰囲気で読むでござる!




「ハームちゃん、君はまだ倒れるべきじゃない」


眠ろうとする私を抱き起こす誰かがいる。


「え……?」
「君は特別だ。よかったね俺と出会えて」


多分、おじさん――ドリアさんの声。視界は曖昧なままだからよく見えないけれど。
まるで暗闇に差す天からの声のようにも聞こえる。


「色々考えてたんだ。正直俺は死ねないから死なんて怖くないし、ここへ来る前から感覚は麻痺しきっているからね。
……なんて俺の話をしている場合じゃないだろう。もう少し手短にしなくちゃね。
ほら。最後の希望を持ってきたんだ。これはね、『なんでも願いが叶う万能の箱』。
君が最後に願いたいことがあるなら俺は君の願いを叶えてあげたいと思ってここにいるんだ」


この人は何を言っているのかしら。
そんな都合の良いものが現実に確かにあったならば、もっともっと早くに使われているべきだ。
どうして今更救いの手なんて差し伸べるのだろう?
これも運命の悪戯?なんて理不尽なのだろう。


「でもね、ただで叶えるのはフェアじゃないなって思うんだ。だってこれ俺のものだからね。
だからこれを使いたいなら……―――俺と取引を、契約をしてくれ」
「けい、やく……?」
「君が誰かと結ばれたいならそれでいいよ。世界をやり直したいならそれでもいい。なんだって叶えていい。
ただし、俺は君を対価としてもらいたいんだ」
「対価……って、私はなにをすればいいの?」
「そのままだよ。俺が君を貰う」
「え、貰うって……でもおじさん今結ばれたいならいいって……
「うん。言ったね。しかし、だ。君が誰かと結ばれても――君は最後には必ず俺のものになる」
「は?な、なによそれ……?意味がわからな……うぅっ……
「時間がないよ。ただこの条件さえ飲んでくれれば俺は君に望む幸せを授ける」


彼の言ってることはずっと理解できない。
願いを叶えてくれる代わりにおじさんのものにならなければならないなんて。
はっきり言って嫌、だった。だって、好きでもなんでもないもの。
でもこの誘い断ったら現状維持、即ち死ぬということだ。
ああやっぱり。最低な悪戯だわ。酷いわ。
目の前にいるのは人の姿をした悪魔だったのね。


「一つ聞きたいんだけど」
「ん?なんでも聞いていいよ」
「あなたはどうして私がそんなに好きになってしまったの?」
「そうだなあ。一目惚れかなあ」
「だったら……盲目すぎね」
「ううん、むしろシンプルで良いさ。終わりかけてやっと出会えたんだから、欲しいものに。でもね。世界がこれからも回るし君が生きててくれるならそれでいいけれどそうじゃないからね。だから君が俺を好きにならなくてもいいからずっと近くで生きててほしい。いや俺が生きてたいのかな」
「気持ちの悪い男だわ」
「いくらでも言ってもいいよ。それで。どう?決まりそうかな」


悪魔はずっと余裕で微笑んでいた。
彼の言葉に裏なんてなくて迷惑なその感情が本心だと主張しているのが余計に煩わしい。
それに、彼は優しく私の頭を撫でているもの。
私の天秤を支えてくれていた鎖は錆びつきすぎて、もう壊れかけだ。
まもなく崩壊した。


「つまり私になんでもあげる代わりに、あなたには私をあげるのね」
「そう」
「いいわ。あくまでも手を取ってあげる」
「よかった。有難う」
「でも……できれば最後にワカくんにも会わせてくれるかしら」
「えー。しょうがないなあ」


この決定を下すことは決まったが、私も彼に伝えたかった。
少し細い腕に抱き上げられ私は移動している。


「ドリア……とハームちゃん?」
「やあワカ。ほらハームちゃんお望みの相手だよ」


揺らめいていた感覚が止むと、目の前に彼がいるらしい。
私は重たくなった瞼を、首を精一杯動かして彼を捉える。
覚えているよりも冷静さを欠いた表情。


「ワカくん……これからのことをあなたにも教えるわ。」
「これから、ってそんなのもう……
「作るわ。作れるの。あのね、私。新しく世界を作ろうと思う」
「は……?」


ワカくんは微塵も理解できないと引きつった顔で私を見る。


「彼女に何をしたんだ」
「隠していたけど俺はそれくらいのものを持っている。あ。別に俺が神様だった訳じゃない。できる力は持ってるけど。非常時に備えて残しといたんだ」
「とっくの前から非常事態だっただろう!お前にとっては「ただの」戦だったか?人の死なんてどうでもよかったのか!全部「非常」なんかじゃなかったってそう言ってるようなものだぞ!?お前は簡単に苦しみを終わらせる術を持っていてずっと隠していたなんて!何故なんだ!」
「お前の感情論は今更いいさ。これからを決めるのは彼女。そして彼女は創造すると言っているんだから俺はそれに従うのみさ」
「俺は認めない……ハームちゃん!こんな奴の口車になんて乗っちゃいけない!」
「私は……私の望む世界を作り直す。もう私も、みんなも苦しまなくて済むような世界よ」
「そんなものはない……俺は、ここで生き苦しみに耐えながら死んでいった人達を知っている……!君は冷静さを欠いて理想に飛び乗っているだけだ!」
「いいの。嘘でも罠でも。私は、私は。ただ幸せになりたいわ」
「決まりだね」
「素敵な形でこの世界を終わらせましょう」


「今度は平和な世界で……また、ね……