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クローズアップ:エゴイズム -アブノーマルエンド- 原案版

視点がころころ変わるでござる。ADV想定で描いたので描写不足でござる
バッググラウンドも補完不足でござる。雰囲気で読むでござる!




-5日前にさかのぼり-


「痛いけど我慢するのよ」


涙を殺す少年の腕に、注射器を刺す。


「ハイ終わり!……血が止まるまではこの布を外してはだめよ」


白い切れ端で注射痕を圧迫するようテープを貼り付ける注射後の止血処置をする。


「それから……これ!後で食べてね」


缶から取り出したビスケットを一つ割り、渡そうとするが不満げな表情のまま硬直している。


(ほんとは1枚まるごと渡してあげたいけど、これも立派な食糧だし……)

「ごめんなさいね、晩御飯にまた半分あげるから」


力なく受け取るとただでさえ冷たい空間に小さく足音を響かせながら明滅する電灯の下を歩いて行った。
私は、半分減った缶の中を見つめて過去を想う。あんなにいっぱいあったのにな。
このシェルターも同じ。もうすぐ私たちの番が近づいてきてる――



「ハームちゃーん!戻ったよー!」



突然、場違いな程元気な声が轟いた。


「あ……おじさん達!戻ったのね」


3人の男がシェルターと地上を行き来する為の入口から戻ってきた。


「どう……?なにかあった?」
「いいや。何もなかった」


私の問いに、包帯だらけの眼鏡の男『テツさん』が目も合わせず答える。
当初に比べれば少し痩せたがそれでも屈強な肉体だ。


「今までこっそり蓄えられた食糧や薬なんてものが見つかる方が奇跡だったんだからあまり期待されてもな」
「けれど……奇跡に縋らないと私たちに希望はないの」
…………少し疲れた。俺は休ませてもらう」


冷静というか、氷みたいな冷たさ。出会った時からずっとそう。
なぜかは知らないけれど嫌われている気すらして喋りづらい相手だ。


「テツのやつ、ああは言ってもいつも一番悔しがってるんだ」
「そうなの?」
「うん。多分今のも言い方は悪かったけど本当は成果をあげられなかった自分を責めたいんだろう」
……私、少し無責任に自分の理想なんて話してしまったわ」
「君は君のままでいてくれたらそれでいいんだ。気持ちはちゃんと伝わってる。でもやりきれなさの矛先がみんな時々わからなくなるだけだ」
「ありがとう、ワカくん」


『ワカくん』はいつも無表情で冷たい声色の少年だった。それでも言葉は優しくて仲間思いな人。
私は彼のそんなところに救ってもらえるから、希望を掲げるのやめずにいられる。
共にいると一番安心できる相手だ。


「あなたも少し休んできたら?そうだ、テツさんとこのビスケット半分こして食べてね」
「わかった」
「ちょっとちょっと!ハームちゃん!二人で仲良くしないでよ!俺は!?」


金髪の少年が場違いな元気さのまま割って入ってきた。


「おじさんは心配しなくてもいいもの」
「俺だって同じ捜索班なのに扱い違いすぎだよ!」
「お前うるさい。ただでさえ寝不足の頭に響くし、ほら周りも迷惑してるだろ……
「仕方ないだろ!俺がまぎれもなく一番元気なんだから!」


隈の酷い目で睨みながら頭を抱えるワカくん、近くで薄い布の上に座ったり寝転がり安静にしているみんなも密かに苦しそうに見つめている。


「いいかドリア。お前の元気自慢はこの空間じゃマイナスなんだ。そんなことがわからない程馬鹿ではなかったよな?」
「わからないことはないが俺まで辛気臭い顔する必要があるか?」
……ちっ。空気の読めないやつ……ハームちゃんほっといていいよ」


おじさん……『ドリアさん』はこの中では異質だった。
みんなと違って元気だから?いいえ。『彼だけが病気にかかっていない』からだ。
この病気は感染する。しかし彼は、『何度もかかったことがあるが死んだらなかったことになっている』のだ。
私にもその身体の仕組みはよくわからない。わかることは『不死身』なのだということだけ。
私達が死を待つ中でも彼だけはずっと五体満足でそれはそれは元気な様子で過ごしている。故にこそ一番嫌悪を向けられる対象と化している。


「頭の固い奴ばっかだよな!で~も、ハームちゃんは俺にも優しくしてくれるもんね?」
「あんたは食べなくてもいいわよね。よかったわあんたの分がケチれて」
「味方してくれてもいいじゃん~」


ドリアさんはこれまたなんだか知らないけど私にだけやたらとダル絡みを仕掛けてくる。
最初の内は戸惑っていたけど最近は私もみんなと同じように適当に躱すことにしてる。
でも多分……ドリアさんは少しでも肩の力を抜いてほしいからこうなのかもしれない。ほんと多分だけど。
そうじゃなかったら言う通り空気の読めない人なだけだ。


「私もこれ食べて少しだけ休もうと思うから次の探索に向けて休憩しなさいな」
「俺の癒しは……ハームちゃん……君だよ♡」
「うるさいわねまじで。終末までナンパして面白い訳?」
「ナンパだと思ってるんだ」
「それ以外ないでしょ」
「じゃあもうすぐ吃驚するだろうね!」
「いいからさっさと口チャックしてどっか行きなさい。もう喋るのも疲れるわ………


私は適当に布を広げて布団のように敷いて寝転がる。もう会話してやらないと目を瞑って遮断してやった。
私が眠りに落ちるまでもずっとなんか喋ってたけど疲れの方が勝ってさっさと眠った。


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別室にて。
ここも他と変わらず清潔とは言い難い空間であり、血液などがしみ込んだままの寝台には虚ろな瞳で座る男がいる。
一応少し前まで救護室としてここは使われていたがもう真の役目は果たしておらず寝室と化している。
探索班は少しでも休めるようにここで眠るよう指定されているのだ。

「テツ大丈夫か」
「痛くて眠れない………
「また幻肢痛か?」
「わからない。どれが痛いのかよく」
………お前薬を断ってるんだろう。鎮痛剤くらい飲んだらどうだ」
「俺は要らない、もうどうせ俺は長くもたない」


相変わらず俯き気味で、一切目線を合わせて会話することはない。


「少し気になったんだけど……お前、もう目があんまり見えてないんじゃないか?」
「そんなことない」
「探索中何度も不自然につまずいたりぶつかったり、あり得ない方向へ歩いて行こうとするのもどんどん頻度が増えてる。バレバレだ」
「それは俺がドジなだけだ」
「こんな時までそんなボケたこと言えるのか」
「いい。心配なんか要らない。お前は自分の任務にだけ専念しろ、俺のことはほっといてくれ」


絶望を悟った暗い瞳だった。昔は夕焼けみたいな綺麗な色だったのにな。
どうしてここまで突き放すのかは大体性格上わかる。同じ戦地を共にし散りゆく戦士を背に、戦い続けた仲間だから。
テツは己の死期を悟っていた。一番ダメージが酷いのに彼は無理に体を起こしては俺達と一緒に探索に出かける。
何度も止めたけれど……強情な奴なのだ。


「一緒に生きようって約束したじゃないか」
……ワカ。俺は俺よりも誰かを生かすことの方が大事だと思ってきた。極限状態だと言うならば俺の分を誰かの命の助けにしたい。だから、命など捨てる覚悟で戦ってきたのだ。しかし、結局。結果は共倒れを待つしかない状況だ。ならば俺よりも生きる意志を持ったものを優先してやってくれ。決してあの子に俺のことは言うんじゃないぞ」
「ずるいよお前……。友人との約束より他人の命かよ、美しく死にたいってか?ほんとにお前は愚かだ……
「今目の前にいるのは人形とでも思ってくれ。と言っても……もはやガラクタなのだが。ふふ。」
「くだらないこと言ってないで飯位は食ってくれ、これあの子から」


首を横に振りついにはどれだけ言っても彼は沈黙するばかり。
ずっと彼は俺と目を合わせることはなかった。


(テツ。生きなきゃいけない、って言ったのは誰だったんだよ……)