【可惜夜廻】

『「すみません、よくわかりません。」』
現行未通過×
夜廻パロ/まとめ読み版




小さな光で、ソウゲツは足元を照らす。何かに躓いて転んだりしては危ないし、見失ったカンジの痕跡を探すためでもある。足跡の一つでもないかと道を見て回るが、そういったものは見つからない。

ふと目についたのは、夕方は気が付かなかった掲示板。町内の情報や報告を記載するための物は、きっと町の地図も貼られている。いくら故郷とはいえ、十年経っていては不明瞭な点も多い。確認のために掲示板を照らせば、不可解なことばかり書かれていることを知る。


『茂みや看板の後ろで目を閉じていると見失ってくれる』

『包帯の前では音を鳴らしてはならない』

『電灯の下に長居しては危険』

『電車の中はほとんど安全』

『商店街の中はとても危険。振り返ってはならない』

『絶対に流れ星を見てはならない』


なんとも珍妙な文章たちが、小さなメモ用紙に綴られている。付箋のように貼られたそれらに、説得力は無い。筆跡はどれも整っていることから、子供のイタズラという線も失せる。

かつての故郷もこんな事が書かれていただろうかと思案して、思い出す。この町の大人たちは幼い子供全員に、夜決して外に出てはいけないと言い聞かせていた。なんでも、悪いものが彷徨っているんだそうだ。他にも理由があったようにも思えるが、何にせよ今考えれば現実味のない話ばかりだった気がする。

信憑性の薄い情報に踊らされている暇はない。メモから視線を外し、地図を探そうとする。しかし何となしに動かした視界の端に、あの金色が入り込む。驚いて振り向けば、やはりそこにはカンジの後ろ姿がある。


「カンジ!!」


名を叫ぶが、やはり反応はない。ふらりふらりと不安定に歩きながら、彼は暗闇へ溶けていく。ソウゲツは急いで駆け出し、その後を追いかける。ライトで照らそうとするが、か細い光は遠くまで届かない。

そうこうしている間に、カンジを再び見失ってしまう。舌打ちしたくなる気持ちを抑え、ライトであちこちを照らす。そうして気付いた。いつの間にか、商店街の入口近くまで来ていたらしい。奥に立ち並ぶ明かりの点いていない店舗と、それらに影を落とす屋根。縦にぐんと伸びた穴は、ポッカリと開いた怪物の口にも似ている。

『商店街の中はとても危険』
掲示板に貼られていたメモには、そう書かれていた。何の根拠もない文字を信じるわけではないが、なるほど確かに夜の商店街には不穏な気配がある。しかし、いやなればこそ、カンジがいた場合を考えれば放っておけない。もし彼が危険な場所で孤独に歩いているのであれば、彼を愛する自分が無視できるわけがないのである。
ソウゲツはライトを一層強く握りしめ、商店街の入口を潜った。