【可惜夜廻】

『「すみません、よくわかりません。」』
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夜廻パロ/まとめ読み版




「カンパーイ!!」


カンッ!と心地よい音を鳴らして、グラスが交わされる。ぶつける直前に掛け声を叫んだのはカンジのみだが、他の三人も後から「乾杯」と呟いてグラスを傾ける。ソウゲツはバーテンダーという職人であり、その技術を使い都で成功を収めてきた。だからこそ、今夜自分に注がれたビールが上等なものであることをすぐに理解する。


「いいとこのやつだろ、これ。高かったんじゃないか?」

「あはは。久しぶりに会う友人なんだから、これくらいはさせてくれよ」

「そうそう!! ソージももっと飲めや!!」

「カンジ、もう酔ったの? ああ、料理はこっちだよ」


カラカラと愉快そうに笑いながら、ヒロが自身の鼻下に付いた泡を親指で拭う。アサヒは既に酔いに飲まれつつあるカンジをたしなめながら、ソウゲツに料理を差し出す。バッテン印に切れ目のついたサバの味噌煮は、ソウゲツの食欲をほどよく唆る。勧められるがままそれを口にすれば、味噌の甘辛さと魚の食感が舌を喜ばせる。


「美味い。作ったのはヒロか?」

「まぁ、主導権を握ってたのはオレだな。手伝ってくれた二人にも感謝してくれよ?」

「ふふん、オレも盛り付け頑張ってんで! 褒めて褒めて!」


そう急かしながら、カンジはソウゲツに飛びつく。ソウゲツはそんな彼の頭を撫でながら、雑談を続ける。食事の場ということで、アサヒは既にマスクを外している。彼は空いた皿を退けたりしつつ、サバの塩焼きを箸で摘んで口に運ぶ。カンジも揚げ物を頬張ったり、白米を頬張ったり、かと思えば長々と喋ったりと忙しそうにしている。

そうして食事を進めていたが、ソウゲツは奇妙なことに気が付く。卓上に広がる料理の種類はそう多くない。しかしそれらの多くには、サバが使われているようだ。山だらけのこの付近で、こんなにもサバ料理が振る舞われるのは違和感がある。特別な意図があるのだろうか。


「ヒロ、サバが安かったのか? こうも多く使っているのは珍しいな」

「ああ、うん。とある筋から結構安価で仕入れてもらってな。消費しないと勿体ないだろ?」

「なるほど」


納得したソウゲツは、それ以上深くは追求しない。ヒロが意味のない嘘を吐くことは無いと知っているし、出された料理に文句を言うのも気分が悪い。幼馴染たちと当たり障りのない雑談に戻り、宴を楽しむことに専念した。