なび
2025-05-26 00:10:51
4015文字
Public 海の魔女の物語(仮)
 

海の魔女の物語(仮)7

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元ネタ原案は たたみさま(@musclewata)の素敵最高ツイートです。
本当にありがとうございます……!!!


TSバソ♀によるしょたおねパーバソですが、しょたパートが終了しました。
今回、遠回しにモブバソ要素がありますのでご注意ください。



 
 
 大きくなった。
 素直な感想だった。
 寄宿舎へ入り一年ぶりに会ったときでさえ、背がぐんと伸びていたことに驚いた覚えがある。
「成長痛が」
 と関節の痛みを訴えていたから、良く眠れるハーブのお茶をすすめてやった。その礼なのか、会えぬ休暇のたびに茶葉を土産に用意してくれていた。
 それから四年。学舎へ行ってから五年。すっかり大人に近づいたパーシヴァルは、しかしこちらを慕う様子は依然変わらず、バーソロミューは教え子の成長に満足していた。
 十八年前、彼が生まれたときの直感は、今でも正直わからないでいる。
 それでも十歳の少年が両親との約束を破ってから、必死に〝魔女の教え〟を乞うてくれたことに感謝していた。きっとこれでこの先も、この家にいることができる。
 そう思っていたのに。
「君、何を言っているのかわかっているのかい?」
 中身をこぼす前にと、カップとソーサーをテーブルへ戻す。
「もちろん。両親は、先生が許すなら、と」
 舞踏会へのパートナーにバーソロミューを欲する教え子は、いたって落ち着いていた。バーソロミューだけが慌てふためいている。
「それは諦められていると思わないのか!?」
「いかようにも。隣に先生がいるのなら」
「何を言ってるんだ。舞踏会が何のためにあると思っているんだ。舞踏会の主役たる若者が、パートナーに姉……は烏滸がましいな、おばを連れていくなんて、笑い者も良いところだろう」
 自分の頬が引きつっているのがわかる。必死さがいっそ滑稽で、勘違いであってほしいと願ってしまう。
 す、とパーシヴァルの表情が消えた。瞬間に思う。ああ、また間違えた
「先生を姉と思ったことはないよ」
 あの直感は正しかったのだろう。
 そしてあの時、ド・ゲールの家を出て行くべきだった。
 もしくは遅くとも、八年前のあの日には。



 ◆◇◆



〝魔女〟の最期は悲惨なものである。
 実際の魔女裁判は、意外にも冤罪で終わることがほとんどだった。
 しかしそれは彼女らが魔女でないからだ。
 バーソロミューは本人の望む望まないに関わらず、〝海の魔女〟だった。
 高い操舵技術はもとより、海に一歩踏み入れるだけで水が割れるその様子は、海を操る能力として人々に映り、恐怖を呼んだ。海に拒絶され絶望する中捕らえられ、不老不死となった体は良いように暴かれた。
 思えば、最初の死因は何だっただろうか。
 自身の肉が焼ける臭いを何度嗅いだだろうか。
 それでも海を愛していた。
 呪おうとしたができなかった。
 これまで育ててくれて、愛してくれた海を、こちらから拒絶することはできなかった。
 死ぬたびに絶望し、何度目か数えることも忘れた頃、当時のド・ゲール家当主に拾われた。
 穏やかな人だった。
 愛する人がいる人だった。
「礼と思うならば、海の魔女の技術をわけてくれやしまいか」
 そう笑って言ってくれた人だった。
 そうして、バーソロミューは、わかっていながら間違えた。



「君のそれが、恋だとしよう。君がそう言うのならそう言うことにしておこう。いつまで経っても年老いることのない私とともにいて、狂わない保証は?」
 バーソロミューの声は、彼女の普段の軽やかなそれとは真逆の冷たいものだった。
 高価な張りガラスをふんだんに使ったサロンは、冬の日差しを取り入れて明るく暖かだというのに、バーソロミューはパーシヴァルとの間に氷を横たわらせたようだった。
「私の呪いを解こうだなんて、そんな聞き飽きた言葉を告げたりなんてしないだろう?」
 かわいい子。君だって、近い未来に私を置いて先に逝く。それを知らない私ではないんだよ。
 今までだって、誰も彼もがそうだった。君がそうでないなんて、誰が言える?