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なび
2025-05-05 00:28:18
1905文字
Public
海の魔女の物語(仮)
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海の魔女の物語(仮)3
●
1話
●
2話
今回も、たたみさま(
@musclewata
)の
素敵最高ツイート
を参考にさせていただいております。
引き続きありがとうございます……!!!
TSバソ♀によるしょたおねパーバソです。
そろそろしょたおにパート書きたい。
「
——
ああ、楽しかった!」
丘の上を並足でぐるりと一周させ、ゆっくりと手綱を引いて馬の足を止めたバーソロミューは、清々と眦を下げて馬から降りた。
ポンメル
鞍の前方部分
に無理やり固定していたバスケットを外し、ここまで二人分の重さと荷物をものともせずに連れてきてくれた馬の首を、優しくぽんぽんと叩いて褒める。
「君の邸の
馬
こ
たちは、相変わらず良い子ばかりだ」
「そうでしょうか」
「そうだとも。体格も立派だし、人の言うことも良く聞いてくれる」
ほら、こっちだ。
丘にぽつねんと立つエルダーの木の方へ促され、手綱を手に馬を引き連れて行く。気のせいでなければ、馬は少しだけ抵抗を見せた。どこが良い子なのだろう、これも鍛錬不足ゆえだろうか、とパーシヴァルはわずかに口を引き結ぶ。
エルダーは、淡いクリーム色の小さな花を房状に咲かせ誇っているところだった。バーソロミューはその下へ毛織物の敷布を広げ、手早くバスケットを開く。
その子は自由にさせてあげるが良いよ
——
バーソロミューに言われるがまま手綱を離せば、葦毛馬はぶるん、と首を大きく振ってそこらの草を食み始めた。
「私たちだってさすがにお腹ぺこぺこだ。食べよう!」
バスケットの中身は、料理人と台所女中たちが手早く作ってくれたサンドイッチ、それに葡萄ジュースの入ったボトルに丸のままの林檎がひとつ、と簡素なものだった。それでも、
「ごちそうだね」
と、夏の木漏れ日の下でバーソロミューが目を細めるものだから、パーシヴァルにもそれがとびきりのごちそうに見えてくる。
バスケットを囲む形で座り、ライ麦パン一枚を半分に切って作られたサンドイッチへ手を伸ばす。さっと食前のお祈りをしてかぶりつけば、キュウリとクリームチーズのしょっぱさが胃に染みた。
そういえば、母がサンドイッチを食べる際はもっと小ぶりに切られたものだったが、とバーソロミューの方へ視線をやれば、彼女は淑女と呼ぶには少々憚れる様子で、サーモンとマスタードバターのサンドイッチを頬張っていた。
「何だい」
「いいえ。おいしいですね」
そもそも、男性の恰好で乗馬をしてきた時点で、淑女とはかけ離れている。
それでも、バーソロミューの褐色の肌であったり、形の良い鼻や意志の強そうな眉、ばさりと広がる睫毛であったり、その下で光る海色の瞳であったり、そういったものが美しいことに変わりはない。
不思議だな、とパーシヴァルは漠然と思った。
その不思議が、バーソロミューが魔女だからなのか、それとも彼女自身からくるものなのかは、わからなかったが。
林檎はバーソロミューがナイフで四つに割ってくれ、二片はここまでがんばった葦毛馬へあげた。ナイフの使い方ももっと覚えなければ、と心に留める。
風も吹き、午後の日差しが心地良い。すべて食べ終えると、バーソロミューは敷布の上にごろりと寝転がった。
「君も少し休みなさい」
そう告げて、脱いだジャケットを上掛けに早々に軽い寝息を立て始めてしまう。
パーシヴァルは呆気に取られたが、少し考えて丘の上へもう一度登ってみることにした。
丘の上は大きく広がり、その先は切り立った崖となっている。近づいてみる気はないが、結構な高さがあるだろうことが推測できた。
青い海は穏やかで、太陽を反射してきらりと光る。遠く船が行くのが見えた。船影から考えて、船の実際の大きさを計算する。
計算の仕方もバーソロミューに教わった。どれだけの大きさの船体かで、積める荷物の量が変わるだろう、最大の利益を得るためにも把握しておくべきだ、と。
彼女はなぜ、こうも教授してくれるのだろう。
庇護と引き換えに、と言っていたが、はたしてそれだけだろうか。
二百は生きていないよ、と笑っていたが、本当だろうか。
知りたいことばかりが増える。
振り返れば、エルダーの木陰で眠る人が見える。
敷布へ戻って葡萄ジュースを飲んでから、気づけばパーシヴァルも暑さからウトウトしまっていたらしい。
起き上がると、丘の上でこちらに背を向けるバーソロミューがいた。
「せんせい?」
呟けば、聞こえる距離ではないだろうに、バーソロミューが振り返る。普段の表情豊かな彼女から遠く、べたりと凪いだ海のような表情だった。すぐに、にぱりといつもの彼女に戻ってしまう。
ざかざかと戻ってきた魔女は、
「そろそろ帰ろうか」
とパーシヴァルの前髪を整える。
「先生は、どうして今日ここに?」
されるがままに問えば、笑みを深めた魔女は答えた。
「ここがね、一番海に近いんだ」
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