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sunny_seven224
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HQ【治北】ログ
HQ
治北のSSまとめです
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他愛もない話の中で
「北さんてサンタいつまで信じてました?」
「は?今?」
「うん、今」
北さんが苦笑するのも無理はない。
12月28日。世間はほぼ仕事納めをして年末年始休暇が始まっている。クリスマスなんてとっくに過ぎていて、終業式を終えた小学生たちが盛り上がりながら店の前を通っていたのが、遠い記憶になりつつあった。
飲食店経営者である自分は、仕事納めまでラストスパートだった。今日は昼までの営業で夜から貸切。稲荷崎高校バレーボール部のOBたちと忘年会だ。
「やってずっと忙しかったしそういう話全然出来んかったやないですか」
「まあ確かになぁ」
そう柔らかく笑う北さんは、一緒に厨房に立って仕込みを手伝ってくれている。稲荷崎の面々がやって来るまでまだ時間があった。
「正直全然覚えてないわ。姉ちゃんがどこまでちゃんと黙っててくれてたかどうか
…
」
「あーそっか。きょうだいおるとその人たちによりますね」
「どっちかっていうと、弟にバレんようにせなあかんって必死やったことの方が覚えとるな」
「なるほど」
「学校で友達にバラされたって泣いて帰ってきた時、姉ちゃんがそいつらにものすごい剣幕で怒っとったん、今でも語り草やわ」
懐かしそうに目を細めながら、北さんは白菜をざくざく切ってザルに盛る。俺はあーあのお姉さんならやりかねんなぁと若干身震いして鶏肉を切った。北さんの知り合いが朝シメたばかりだという鶏肉は新鮮で美味そうだった。寒い時期の、大勢での食事会はやっぱり鍋に尽きる。準備する側も楽やし。
「お前はどうなん?」
「話振っといてあれですけど、俺もなんも覚えてないんすよ」
「なんやそら」
「北さんとゆっくり会話出来んのが嬉しくて」
切り終えた鶏肉を冷蔵庫に入れる。鍋に下処理した鶏ガラやネギや調味料を入れ火にかけた。アクを取りながらじっくり煮込んでいるうちにみんなが来るだろう。
「お前はさらっとそういうこと言うよな」
「そうですか?あ、白菜ありがとうございます」
「自覚ないんかい。あとは?エノキほぐそか」
「じゃあお願いします。俺にんじん切ります」
そこからしばらく黙々と作業が続いた。最中に先ほどの会話とともに、お客さんたちのサンタ事情も思い出した。
子どもにサンタの正体をいつ明かすかとか、プレゼントの隠し場所はどうするかとか、欲しいものが中々決まらず苦労しているとか、その他諸々。
ついでにふと空いた時間に寄った家電屋で、険しい顔をしておもちゃ売場を行き来する人たちの記憶も蘇る。
苦労話のはずなのに、みんな幸せそうな顔をしていた。
「
…
治、手ぇ止まっとる」
「
…
あ、すいません」
「珍しいなぁ飯作っとる時に考えごとするとか」
北さんが丁寧にほぐしたエノキを白菜同様ザルに入れ、手を洗う。「ちょお包丁置け」と言うので慌てて作業をやめると、そっと抱きついてきた。
「え、ちょ、きたさ、」
「すまんな、神聖な場所で」
「なんで、」
治、ともう一度俺を呼ぶ。
「なあ治。余計なこと、考えんでええよ」
たったそれですべてが許されるような、救われるような一言だった。
前掛けで少し乱暴に手を拭い、思い切り北さんを抱きしめた。
「
…
ほんま、神様みたいな人や」
「普通の人間やで」
「好きです、心から。大好きです」
「俺はこの先ずっと、お前のこと離す気なんかないからな」
覚悟しとけと楽しそうにする顔を、俺は一生忘れない。
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