昭和しぐさ

明治乳業の飴ちゃん、CHELSEA(1971~)が販売終了ですと?とイオン二か所行ってみましたが駄目でした売り切れてました(´・ω・`)
悲しみのままに竜隼にして供養
東映DVDBOXにあった、竜馬の家は養護施設やってます、という設定で
(食べかけの飴ちゃんを自分の口に放り込むかというと、嚥下ミスが怖いから変な物を口にさせない方で目を光らせてそうですが、実家手伝い竜馬。)
寝てない寝てないと言い張る弁慶が今夕何度目か、また眠りの淵に漕ぎだしてしまった。文系数学の解き方を解説している隼人の言葉にうんうんと頷いていたのがまたぞろあやしくなり、ストーブのもったりとした暖気の中、鉛筆がぽろりと指から落ちて
「『人間居眠りすると親指から寝だす』って、お前の親父さんの言だっけ?」
「剣道の座禅の時にな、本当かは今もわからないよ」
授業中本格的に寝る奴の体勢になってしまった弁慶に、どうやら今夜はこの辺でお開きか、と隼人は小さくも優秀な頭の後ろで手を組み、椅子の上猫のように伸びをしたし、竜馬はおい弁慶起きようぜと声をかける。
「わあってる、わかってらィ
…」
そうもごもご言いつつ隼人の反対側に架けていた弁慶は立ち上がり、ノートと問題集と計算用の藁半紙をかき集める。ふわあう、と声無き大欠伸をした拍子にその口から白い物が転がり落ちた。竜馬がはっしといいタイミングで手のひらで受け止めたので、落としたのも、さっきまで口内に何かあったことからして当の本人は頭にない様子で、そして目を擦り擦り、お疲れさん、と言いつつ出て行ってしまう。
「サクマドロップの白いの、ハッカ味舐めてたんだな。寝るまいとはがんばってたんだ、あいつ」
「しょうがねえなあ」
「緊急出動に待機もしてるんだから、さ。一人で自主練が向いてなさそうなクラブなのに」
そんな自分はどうなんだなことを言う竜馬に隼人はこっそりため息をつく。
大体なんであんな味が半透明のドロップスの中に混ざっているんだろう、童話の中のペーソスのように、アンデルセンの失恋の逆恨みやトルストイの教訓哲学搭載でずっしりな仕様でも真似たみたいに、と当年とって十七歳の隼人は思う、そんな悲しみをむしろひそかに好む方であったけれども。
その傍ら、とっさに受け止めた手の中の白い塊をうーん、と眺めた後、竜馬はそれをぽいと自分の口に放り込んだ
「えっ」
常に冷静な隼人が声を挙げたから竜馬は驚いて、ほんの僅か上にある彼の目線に目を合わせる。何があってもすぐさま対応できるように身構えたのだろう、舌と気道に引っ掛けないよう、飴玉が頬にたくわえられた、凛々しい顔がやんちゃに変わった。
「
―――リョウ、お前さん、」
ちょいとそれはお行儀悪かねえか。丈高くもろうたけたと敢えて言うのが合いそうな、ひいやりとするほどにも優雅に整った所作が常の隼人はどうやら、知るかぎりでなるたけやわらかな表現を探したようだった。目の前の竜馬も弁慶のことも貶めないよう慮りつつも、お行儀よく。普段の素っ気なさの奥に見える時のある極上の毛並みに竜馬は飴を抱えた頬が笑いで緩みそうになりつつ、自分の目の前で白く長い指が何と説明すればと泳ぐさまを見る。そしていまだべたべたしている自分の手のひらを、行儀悪くべろりと舐めてみせた。
ああ、家の仕事を手伝う時の動きがでちまった。
捨てたらゴミ箱を漁ってしまう子もいたし、それが嚥下困難な子だったりしたら特にシャレにならなかったから。不衛生だろうが、ハナやヨダレをを垂らしてる子を拭う用のハンカチタオルを何人にも使いまわしもしてたしな。本当は良くないだろうし、将来ほかのいいやり方が出て来ればいいと思ってるよ。
「子」と言いつつ、それは子供の患者相手とも限らない世話だったのではなかろうかと隼人は思う
「お前がおやつで人と半分こだの一口やり取りだのがやたら平気な理由もそっちかよ、はあ根深い」
この男の、善意に満ちた姿勢でやたらと距離近いのは、そういうものが普段の仕草と意識に根差すからもあるのだろう、いやそれだけに違いないじゃないかと、ばりばりと薄荷玉を嚙み砕く音を聞きながら隼人は、
「いや
……いいやもう。
…あとで口直ししなよ」
ラスト一個やるから、と隼人が薄くて光沢のある黒い箱を振って、きらきらした銀紙にあかるい緑の小花が散る包み紙の直方体を取り出す。チェルシーのヨーグルトスカッチ。
「ああ一昨日からときどき舐めてたのはこれか、ダンケ」
手の中の飴を一嗅ぎした後、ずいと仲間に近寄ってみて彼はすんすん音を立て、残り香を探す仕草をするから、相手は「おい」と小声で戸惑う
「隼人から旨そうな匂いがするなとずっと思ってたんだよ」
ヨーグルトキャラメルとどっちだろうと思ってたんだ、ほら、あの白地に青の水玉のかわいいの。そういいつつもすぐ体を離し、いただくよ!と軽快に言い、先に立って歩きだす彼に、隼人は慌て、従うかたちになる
後日、竜馬が元気ちゃんにフーセンガムの膨らませ方を教えようとして、口内のマルカワのガム一粒分だけではうまくいかないと、「隼人お前が噛んでる分もちょっとくれ」などと言い出すのはまた別の話。
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