鬼火と唄

本編



📝14話(最終話)


「ファフちゃん、今日も買出しかい?」
うん

シャフがボクの身体から離れてどれくらい経ったかな。最近は慣れなかった依頼事もあなたのおかげで大分こなせる様になりました。

相変わらず今でも時々猫を探す依頼を貰うの。そういえば、どうして猫を探すのか聞いたらエコーは「訓練になるから」って言ってたよ。あなたが聞いたらきっと怒ってしまうかも。

「頑張るねえ。ほい!今日はできたてなんだ、持っていっておくれよ」
ありがとう……

ぷちりょーしゅかが有名だからだと思うけれど、街に出るといろんな人が話し掛けてくれるの。

美味しいパンを貰ったり、情報提供してくれたり。ハリーお父さんは「知らない人に話し掛けられても着いて行くな」とか「遅くなるな」とか言うの。心配性なのかな。
あ、お父さんはね、最近ククとドリーでよく出掛けてるの。きっとティミの所オルガに会いに行ってるんだと思う。
アイリスも体調戻ってメンバー復帰したってティミが言ってたよ。みんな無事で本当に良かった。

「おやファフちゃん!どうしたんだいその花は?」
兄に持って行く分
「お兄さん?ハリーさん達かな。そうかそうか、きっと喜ぶぞ」
うん」

あの時の事件以降ますますぷちりょーしゅかは有名になった。それは何年経っても忘れる事の無い記憶で。大きな事件。

カムはしばらく罪に問われて幽閉された。政府のやり口が暴露された分幽閉はまだ軽い罰らしいけど、イゾはまた禁書に封印されてカムはずっと一人であそこにいる。……それは、とても悲しい事だと思う。

ボク、お父さんに相談したの。カムもイゾも助けたいって。ボクを救ってくれた恩人の一人だから。兄のように大切に想っているから。

そうしたらね、ハリーさんが敵対していたティミ達と一時的に組むことになって、今はボクも一緒にイゾの安全な救出方法を探してるの。
今度はボクが助ける番。きっといつか想いが届くと信じています。


ねえ、シャフ。
あの時、シャフは躊躇いもなくボクに力を貸してくれたよね。ティミ達も、お父さん達も、他に関わって来た人達も、みんな必死になって止めようと戦った。
きっとね、カムもイゾも裏切るのはつらかったと思うの。
そして同じくらい裏切られたみんなもつらかったと思うの。

でもね。ボクはその時知った。
みんななにかを『愛している』からここまで出来るのだと。自分にとって大切な人達だからこそ様々な想いを共感して、その心を知って、誰かを『愛する』事が出来るのだと。
自分自身を変えるほどの、大きな力になる事を。

カムはその力で大切な人を傷付けてしまったのだけれど。いつの日かまた愛する心が癒しを与える日がくる事を、ボクは願いたい。

ねえ、シャフ。
ボクはシャフの事、愛しています。
此処にいる人達みんな、愛しています。

そう思える様になったのはシャフのおかげなの。あなたのおかげでボクは変わる事が出来たの。

シャフは、どう想っていますか。
あいしていますか。





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「シャフー?何ぼーっとしてんの」
……別に」
「あ、それファフからの手紙か!何て?」
「さあな」
「教えてくれたってええやんー」

とある船の上で交わされる二人の会話。一人は盗賊から海賊になりたてのユンくん。もう一人は希望姿のシャフ。

なあシャフ。まだファフちゃん達に会う気にはなれへん?」
……探し出すまで帰るつもりはない」
「まあそれもそうか」

ファフの体からシャフの魂が消滅しかけたあの時、ユンくんが希望姿のシャフの肉体を運んでこなかったらあのまま奇跡の効力とともにいなくなっていただろう。
人手を借りなんとか魂を肉体へ移行し復活したシャフはユンくんから事情を聞き、本来のシャフを探し出す旅に出ていた。その際ユンくんが力を貸してくれている。

……無理についてこなくても良いんだぞ。これは俺の問題だから」
「いーや、俺がついてへんとすぐ無茶するからな。船から降ろさせるつもりはあらへんで」
……。まあ船は正直助かってる」
「せやろ!このユン様に任しときって船は!?」
「はん。ちょーしに乗るなよ」

ガンッとショックを受けるユンくんを横目で見ながら外の風に当たる。その表情は最初に出会った頃よりも穏やかだ。

……なー、シャフ」
「今度は何だ」
「お前、変わったな」

「きっとファフちゃん達のおかげやな。そこに俺も含まれてると正直嬉しい」

「閉じ籠もってたシャフにはもっとええもん見したるわ。この綺麗な海や空だけやない。街も人との関わりも全部」
「お前は俺のお守りか?」
「はは!そうかもな!」
「おい」
……本当のお前にも見せてやりたいわ。せやから協力する。お前が外の世界を嫌いになれへんくらいにな」
……。───────、」
「ん?今何て?」
「嫌いにならねえよ」




俺はこの景色をあいしているからな